1時間ほど経った時、杏梨の悲鳴が聞こえた。
急いで寝室に行くと、ベッドの上で身をよじらせていた。
「いやっ!やめてっ!」
杏梨の両腕が助けを求めるように上がった。
その腕を掴む。
「杏梨、杏梨! 夢だ 起きなさい」
その声が届いたのか目がパチッと開いた。
「・・・・・・ゆきちゃん」
「うなされていた 大丈夫かい?水を飲む?今持ってくる」
水を取りに離れようとするとシャツの裾が引っ張られた。
「お水いらないから・・・・・・そばにいて・・・・・・」
「好きなだけそばにいるよ」
雪哉はベッドに横になると腕を伸ばし震える華奢な身体を抱きしめた。
「・・・・・・なにか・・・おもしろい話をしてくれる・・・・・・?」
目を閉じて眠ろうとするのだが、あの男の顔を思い出してしまう。
自分で招いた事で雪哉に迷惑をかけているのを十分分かっていたが気を紛らわして欲しかった。
「おもしろい話?難しいな あぁ あった」
「うん・・・・・・」
「あるところに1人の少年がいました ある日、隣にとても可愛い女の子が引っ越してきました 年が離れている女の子を少年は妹のように大切に・・・可愛がり・・・・・・」
雪哉の話を聞いていた杏梨がハッと顔を上げた。
「ゆきちゃん・・・・・・?」
「しーっ 黙って聞いていて」
髪を撫でながら優しく微笑むと、杏梨は困惑の表情をしたまま黙った。
「女の子も少年を兄のように慕ってくれました その時は10才も離れているから恋愛の対象にはならなかった 彼は何かを探すように告白されては女の子と付き合いました 長く続いた恋もあったけれど数日で終わった恋もあった」
杏梨はますます困惑した表情になる。
雪哉は杏梨の髪を撫でながら話を続けた。
「少年が妹のような存在の女の子を愛していると気づいたのは20才を過ぎたあたりから・・・・・・しかし女の子はまだ10才、彼は自分はロリコンでおかしいのか、同い年や年上の女性と付き合ってものめりこめない・・・・・・彼女たちを愛せない自分に欠陥があるのかずっと悩んだ」
「ゆきちゃん・・・・・・」
雪哉の言葉に驚きを隠せない。
「だから彼は悩みを忘れる為に女性と付き合ったんだ 心の片隅にいつもいる女の子を忘れる為に・・・・・・大きくなるにつれて隣の女の子は更に可愛く、誰からも愛される素敵な子になっていったんだ 女の子に会うのが苦しくて、家を出て1人暮らしをした彼だけど、しばらくすると慕ってくれる笑顔を見たくて仕方なかったから頻繁に実家に帰ってきた」
その頃を思い出して雪哉は苦笑した。
続く
まだ雪哉の告白は続きます
モモ