いやだ、汚い、汚い
目をぎゅっと閉じ、呼吸が苦しくなるまで潜っていた。
苦しんでいる杏梨を見て雪哉は胸が痛かった。
「杏梨・・・・・・?」
気の済むまでやらせてあげたいと微動だにせず見ていたが、あまりにも潜っている時間が長いので腕を掴み引き上げた。
「杏梨っ!」
「ゴホッ、ゴホッ・・・・・・っ・・・は・・・・」
雪哉は泡だらけの顔をタオルでぬぐう。
杏梨は泣きながら苦しい呼吸を繰り返していた。
「無茶しないでくれ・・・・・・」
服が濡れるのもかまわずに抱きしめた。
* * * * * *
杏梨の気の済むように身体を洗わせお湯が温くなるまで雪哉は黙って見守っていた。
それからシャワーの下に立たせ泡を流し、大きなバスタオルに身体を包むと抱き上げ自分の寝室に運んだ。
ベッドの端に座らせパジャマを着せてやる。
杏梨は何も言わずに着せられるままになっていた。
雪哉の表情が歪んだ。
必要以上に洗った胸は赤くなっていたのだ。
痛々しかった。
またあの男に対して怒りを感じた。
「・・・・・・ゆきちゃん・・・・・・怒ってる?」
おそるおそる聞く杏梨の瞳が潤んでいた。
雪哉は杏梨の頭を抱え込むようにして抱きしめた。
「怒っていないよ 心配なだけだ」
「ごめんなさい・・・・・・」
* * * * * *
ダウンライトが寝室をふんわり包み込むように点いていた。
広いベッドの端で縮こまるようにして眠った杏梨を見ていると携帯電話が鳴った。
「志岐島、ちょっと待って場所を変える」
小声で志岐島の電話に出てから寝室から離れた。
「いいよ」
『あー・・・・・・杏梨ちゃんはどうだ?』
「やっと眠ったよ」
『そうか・・・・・明日刑事がそっちへ行くよ』
「あぁ 彼女はどうしている?」
『彼女って、黒田さんか?まだ事情聴取中だよ 杏梨ちゃんは何か話したか?』
「いいや 可哀想で見ていられないよ」
『無理もない』
志岐島も明日来ると言って電話は切れた。
続く