先月放送された、NHKBSプレミアム 「家族になろうよ-犬と猫と私たちの未来」。

我が家はBS映らないので「見られないよ~(泣)」と思っていたら、加入しているU-NEXTで見ることができたので、少し遅くなりましたが、内容をご紹介したいと思います。

 

昨年5月の放送で大きな反響があり、今回第一部~第三部に分けて、長時間に渡り保護犬・猫たちの魅力や海外事情などについて生放送されました。

 

特に海外の取り組みについてはとても興味深く、日本も参考にできたら…と思うものがいろいろありました。

 

 

第一部は、スタジオに招いた保護犬たちの紹介や、全国各地の保護団体や愛護センターと中継をつないで、新しい家族を探している犬猫たちの紹介をしたり、犬のしつけ教室の先生のお話や、ペットと入居できることで知られる特別養護老人ホーム「さくらの里山科」などが取り上げられました。

 

第二部、第三部は、海外の動物保護事情について。

 

まずはイギリスですイギリス

 

王冠1英国女王が称号を与えた動物愛護団体「RSPCAロイヤル動物虐待防止協会」

 

 

 

RSPCAは、創立195年の世界最大規模の非営利団体。その寄付額は、年間およそ170億円。

 

◆関係施設はイギリス国内で150を超え、その一つ、バーミンガムの「アニマルセンター」では、保護犬猫たちは環境の整った施設で、新しい飼い主が見つかるまでいつまでも暮らすことができる。

 

 

 

◆RSPCAでは、年齢や能力、性別で飼い主を選ぶのではなく、その動物にとってどんな家と飼い主であれば幸せかということを重視して譲渡している。

 

◆引き取りを希望する人の中には90歳代と高齢の人もいるが、動物を飼っている人に何か起こったとき、家族や周りに引き取り手がいない場合、新しい家族を見つける支援をする「ホーム・フォー・ライフ」というプログラムがあり、スタッフが定期的に連絡をとり、問題がないか確認。高齢であっても万が一の時を心配せず、動物と一緒に暮らせる。登録は無料。

 

◆「アニマルセンター」には動物病院が併設されており、生活保護を受けている人や障害者、年金暮らしの人は割引で治療を受けられる。割引率は、一般の病院の75%オフ。動物の権利を守るだけでなく、誰もが動物と暮らせる権利も守る。

 

◆退職後にセンターの犬猫のお世話をするボランティアを始める人も多く、動物たちとふれあうことが新たな生きがいになっている。

 

 

 

パトカー動物110番

 

◆RSPCAには、インスペクターと呼ばれる動物救助の検査官がいる。幼いころからインスペクターに憧れていたというボリスさんは、30倍の倍率の試験に合格して検査官に。インスペクターは人気の職業で、社会的に認められている。

 

◆犬が閉じ込められ放置されている、という通報を受け現場へ。飼い主あてに手紙を残し、人の出入りをチェックするためドアにテープを貼り、今後毎日通って観察することに。

 

 

 

通い始めて4日が経過した家に向かい、ドアの郵便受けから水と食料、カメラを差し込み、犬の存在を確認。ドアに警告書を貼り、動物病院へ。犬を救出するには裁判所命令が必要なため、RSPCAと無関係の獣医師から、「犬が危険な状態にある」という証明書を発行してもらう。水も食料もない状況から、獣医師は救出に同意。裁判所命令を待つ。

 

 

 

その後救出許可が下り、インスペクターと警察が現場へ向かい、興奮する飼い主に説明して無事犬を保護。後日改めて連絡をし、犬を引き渡すか否かを決めてほしいと告げる。(ワンちゃんは、その後新しい飼い主の元へ)

 

 

 

 

 

別のケースでは、飼い主が家に戻ってきたものの失業中でこれ以上飼えないと飼育放棄。インスペクターが動物病院へ搬送したものの、治療困難な病気を患っていたため獣医師が安楽死の判断。

 

インスペクターは、「20年続けているがいまだにショッキングなことがある。あと何年続けられるのか。身体的、精神的に限界を感じる日もある。でも逃げることの方が最悪。続けていれば動物を救うことに最善を尽くせる」。

 

◆RSPCAのコールセンターは24時間対応で、スコットランドを除く国内に220人のインスペクターがいる。

 

※管理人注:スコットランドにも「SSPCA」(スコットランド動物虐待防止協会)があり、動物問題専門の調査官が動物虐待への対応や、悪質ペット業者への潜入捜査などを行っています。過去記事をご参照ください。

 

巨大パピーミル、密売…英国の子犬売買の闇を暴くドキュメンタリー「The Dog Factory」

 

 

★RSPCA関連過去記事

 

心と心の触れ合いを求めてー動物たちの福祉施設、イギリスのRSPCAに迫る!

 

イギリスとスイスの動物事情 第2回 イギリスの動物福祉

 

 

 

次は台湾です台湾

 

◆かつて台湾では、犬を畜生などと呼ぶ人もいたが、近年ではかわいがるものという意味合いの言葉が使われるようになり、現在は犬猫を「ケコドモ」(毛の生えた子ども)と呼び、多くの人が犬猫を「自分の子ども」だと思っている。「ケコドモ」という言葉を広めたコピーライターのジェオニー・リュウさんは、「台湾では、保護施設では書類一枚で、ペットショップではお金を払えばすぐに犬猫が手に入る。家族を迎えるつもりで、覚悟を持って飼ってほしい。この言葉が広まれば、犬や猫を捨てるのを社会が許さなくなるだろう」。

 

「ケコドモ」に込められたメッセージは徐々に広がり、犬や猫に対する意識を変えていった。

 

◆子どもの頃から犬と過ごすことで良い飼い主になる-という発想から生まれた「学校犬」制度が公立学校で導入されている。保護施設の犬たちがやってきて、生徒たちの授業やクラブ活動に参加。動物保護部のメンバーが犬の世話をする。

 

 

 

この制度について、生徒たちに良い影響があることがわかってきた。

 

「嫌なことがあっても犬と遊べば忘れてしまう」、「学校にも犬がいると犬の気持ちがわかるようになった」と、生徒たち。

 

保護部の顧問は、「友だち作りが苦手な子が積極的に犬と遊んでいるようだ。犬を通して友だちができたりする。犬と遊ぶ中で子どもたちは、責任感と自信を身につけていると感じる」。

 

現在では、台湾全土の287校に犬がいる。

 

◆2017年、犬猫の殺処分を禁止する法律が施行された。そのきっかけを作ったのは、飼い主のいない動物保護施設を描いた映画「十二夜」。引き取り手が現れず殺処分される、その期限が十二日目の夜で、死を待つかのような犬たちの姿を淡々と映し出す。撮影当時、年間およそ11万匹の犬が殺処分されていた現実を明らかにした。

 

 

 

 

 

映画が公開されると、23万人を動員する大ヒットとなった。犬たちの悲惨な現状を知った人々が、殺処分ゼロを求めて声を上げ始めた。

 

 

 

◆当時の台湾では、動物保護法により保護施設では、飼い主のいない動物は殺処分すると決められていた。法改正の中心となった2人は、その法律を変えなくてはと動き始めた。

 

「行政に圧力をかけ、毎月データを公表させるようにした。地方ごとのデータが比較されると、選挙のプレッシャーにもなる。”最も多くの犬を殺したのはどの県や市か”が有権者の関心事になれば、政治家は「残酷な指導者」のレッテルを貼られたくないので、努力せざるを得ない」。

 

2人は、各地の保護施設の殺処分の数を徹底的に洗い出し、記者会見やインターネットで発表した。運動は大きなうねりとなり、2015年、動物保護法修正案が可決。2年後に殺処分をやめることが決まった。

 

 

 

 

 

◆そんな中、ある保護施設で主任獣医師の簡さんが、殺処分用の薬剤を自らに注射し命を絶つという悲劇が起こった。

 

 

 

施設の関係者は、「当時はまだ、環境も準備も整っておらず、そのような中で殺処分をやめたため、「超過密」状態に陥ってしまった」。

 

すし詰め状態の犬舎では、病気にかかったり喧嘩で怪我をする犬が急増。「せめて最後はゆったりと過ごさせてあげたい」という簡さんの願いは叶えられず、動物たちの過密状態に心を痛めていた。収容数は減らず、飼育環境は悪化の一途だった。

 

簡さんの遺書には、「私の死によって、捨てられた動物にも命があるということを知ってほしい。問題の本質に向き合ってほしい」と書かれていた。

 

その後、簡さんが勤めていた施設は、犬たちが暮らしやすいよう改築された。

 

◆2017年2月、「殺処分ゼロ法」が施行されたが、殺処分をゼロにしただけでは、施設に犬が溢れてしまう。台中市の施設では、獣医師たちが譲渡率を上げる取り組みを行ってきた。

 

新しい家族を探すための拠点づくりとして、「預かりステーション」と名付け、人が訪れやすい場所にした。

 

 

 

市内の動物病院に電話をかけ、「預かりステーション」になってくれないかと頼んだが、病気がうつるのでは、人慣れしていないのでは、という偏見から断られてばかりだった。

 

そのような中で、「預かりステーション」を引き受けてくれた病院では、これまで75匹の犬に新しい飼い主を見つけてくれた。院長は、「預かることにはお互い意味がある。保護施設がスタッフとスペースの負担を減らせるだけでなく、人々にとっては近所で犬を引き取ることができ、病院とのつながりもできて安心」。

 

現在、台中市のステーションは88ヶ所。動物病院だけでなく、犬と触れ合えるカフェも。このカフェでは、盲導犬の訓練士だったオーナーが、しつけをしてから譲渡している。

 

 

 

台湾は、殺処分から譲渡へ、大きく舵を切った。10年前、わずか13%だった譲渡率は、2017年には75%へ上昇。

 

しかし、問題がなくなったわけではない。今も施設には、次々と犬が運び込まれる。背景の一つには、13万匹という野良犬の存在がある。このままではいずれ、施設は限界を迎える。

 

収容、譲渡、救援だけを繰り返してもきりがない。犬の数をコントロールするため、台湾大学のサークルから生まれた動物保護団体では、不妊去勢をし、狂犬病ワクチンを打ち、リリースする活動を行っている。

 

 

 

 

 

映画「十二夜」は、こちらで見ることができます。

 

 

 

台湾では、違法繁殖業者への罰則強化やマイクロチップの装着義務化、犬猫肉の禁止など、ペットの権利保護強化への動きが活発になっていて、3年前に就任した蔡英文総統は猫好きなことでも知られ、動物保護政策に力を入れています。

 

 

★台湾関連過去記事

 

台湾「犬・猫殺処分ゼロ」半年、一見順調 課題山積、将来の破綻懸念

 

ノーキル政策施行から半年 台湾のシェルター内部を取材

 

犬の安楽死に耐えかねて自殺、動物保護施設管理者が迎えた悲しい結末(台湾)

 

犬と猫、食べたら罰金 動物保護法改正で罰則強化へ/台湾

 

 

 

次はブラジルですブラジル

 

ブラジル・リオ市内では捨て犬・野良犬が増え、ある動物保護施設には現在4000匹が収容されている。路上生活で交通事故にあう犬が多く、またマフィアの抗争で撃たれて片足を失う犬も。不況で寄付が減り、運営は厳しいが、弱った子は受け入れ治療する。施設に併設された動物病院に来る人たちの中には、金銭的に余裕のない人も少なくないが、診察を断ることはない。

 

リオ市内では、犬と共に路上生活をする人をよく見かける。ホームレスの人たちと犬たちとの間には、強く不思議な絆がある。それを生かした保護施設「ホープ」が、マリカの町にあり、現在48匹の犬が暮らしている。

 

元ホームレスのキャロラインさんは、犬たちと助け合いながら路上生活をしてきたが、犬たちを愛する姿が「ホープ」代表の米国人ジャーナリスト、グレン・グリーンウォルド氏の目にとまり、現在施設で働いている。

 

犬好きのグレンさんは13年前にブラジルに移住、リオ市内で保護活動を始めたとき、ホームレスの人たちと犬との間には特別な関係があると気付いた。

 

「ホームレスの人たちと犬の間にあるエネルギーを活用して、多くの人々に影響を与えるような、一般的な施設ではできないことをしたかった」。

 

キャロラインさんと出会い、保護施設を作ることを提案、廃屋の一角で犬の保護を始めた。

キャロラインさんは、他のボランティアにいろいろなことを教わりながら、前向きに仕事に励む。

 

グレンさんは今、ホームレスの人たちと犬との絆を大切にしたこの仕組みを広めていきたいと思っている。「一匹ずつ救っても、すべての犬を救うことはできない。ジャーナリストとしての国際的な知名度を使い、多くの犬を保護して同時に多くの人が路上生活から抜け出す手伝いをし、このようなモデルがあることを伝えたい」。

 

 

 

 

 

 

 

とても内容の濃い番組で、こうした番組をどんどん(地上波でも)放送してほしいと思います。

 

24時間対応の動物110番やインスペクター、日本にも欲しいですね。

イギリスの保護団体への寄付額はとても高い!そして、イギリスでは7~8割の動物病院が、保護団体と連携して動物の保護にも協力するそうです。

 

台湾の預かりステーションも良いアイデアだと思いました。

 

イギリスでも台湾でも、動物病院が大きく貢献していることがわかりました。日本でも、不妊去勢専門の病院が少しずつできたりしていますが、病院にしかできない重要な役割があると思うので、不幸な動物を救うために力を貸してくれる病院が増えてくれたらと思います。

 

日本には日本特有の現状や課題があると思いますが、海外の事例を参考にして、不幸な動物たちをなくしていくために前進していけたらいいですね。