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酒鬼薔薇聖斗、宅間守、宮崎勤の共通は<動物虐待>~殺人や強姦などの重犯罪の予兆!

2016.09.22

 

 動物愛護週間(9月20〜26日)だ。動物愛護の対極にあるのが動物虐待。愛護動物を虐待したり捨て(遺棄)たりすることは犯罪であり、違反すると「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)」の第44条によって、以下のような懲役や罰金に処される。

 

●愛護動物をみだりに殺したり傷つけた者→2年以下の懲役または200万円以下の罰金
●愛護動物に対し、みだりに餌や水を与えずに衰弱させるなど虐待を行った者→100万円以下の罰金
●愛護動物を遺棄した者→100万円以下の罰金

 ちなみに「愛護動物」とは「1:牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる」「2:その他、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの」のことである。

FBIが動物虐待を犯罪データベースで活用

 今年1月、アメリカ連邦捜査局(FBI)は、動物虐待の取締りを強化し、軽犯罪から重犯罪にレベルを引き上げるとともに、犯罪データベースで扱うようになった。

 

 同じくテネシー州では、動物虐待で刑事事件の有罪判決を受けた者は、ウェブサイトで顔写真入りの個人情報を公開。ニュージャージー州、ニューヨーク州、ペンシルバニア州などでも、同様の法案の策定が始まっている。

 

 こうした動きの狙いは、もちろん動物虐待を防ぐこともあるが、人への暴行事件や殺人事件予防したり、犯人逮捕の情報に役立てる意味が大きい。というのも、動物虐待と人間への暴力犯罪との相関関係は、今や見過ごせないものになっているからだ。

 

 FBIの犯罪データを管理する犯罪統計チームのネルソン・フェリー氏は「動物虐待はもっと大きな犯罪の予兆という研究報告もあり、このデータはいいツールになるだろう」と述べる。

 動物虐待とその他の犯罪との関連性を近年、調査し続けている全国保安官協会も、「我々が動物虐待者を見つけられたら、人を傷つける人間を見つけたも同然だ」とジョン・トンプソン副理事長をもっていわしめる。

 

 世界最大の動物愛護団体PETAの報告によれば、FBIの連続殺人犯プロファイリングの著名な開発者、ロバート・K・レスラー氏曰く、「殺人者の始まりは、ほぼ動物の殺害や拷問に端を発している」そうだ。

 

 同氏の調査では、<攻撃性のない犯罪者よりも攻撃的な犯罪者の方が、動物虐待の過去歴が高い確率である>という。他方、豪ニューサウスウェールズ州の警察は、調査の結果、<性的殺人犯罪者の動物虐待の過去歴は100%である>ことも明らかにしている。

 

凶悪犯罪者「酒鬼薔薇聖斗」、宅間守、宮崎勤の共通点は<動物虐待>

 日本でも、神戸連続児童殺傷事件の「酒鬼薔薇聖斗」、池田小児童殺傷事件の宅間守、東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件の宮崎勤、これらの凶悪犯罪者は、過去に動物虐待をしていたという共通点があった。

 

 また、先月16日には、子猫を自宅で生きたまま焼き殺し、その様子をFacebookに投稿した神戸市の女性(31歳)が逮捕。アップロードした動画の中で、彼女は「どこまで殺せる? え〜と、人間まで」ともらしていたという。

 

 犯罪プロファイリングが進んでいるアメリカの種々の研究によれば、軽犯罪者よりも重犯罪者のほうが、動物虐待歴が高いことがわかっている。動物虐待は人間への暴力行為、ひいては凶悪犯罪の予兆とみなされるのだ。レスラー氏も、動物虐待は連続殺人犯やレイプ犯の<赤信号>だと明言している。

 

 法律家のための情報サイト「HG.org」でも、いくつかの統計データを発表。動物虐待者の約7割が後に犯罪者になっていることや、動物虐待者はそうでない人に比べて暴力事件で検挙される率が5倍、薬物犯罪での検挙率は3倍という数字が出ている。

動物虐待の<9つの動機>

 ロンドンを拠点に世界中で活動展開する、動物福祉のNGO団体「ワールド・アニマル・プロテクション(WAP=World Animal Protection)」の調査報告によると、動物虐待の動機は以下の9つに分類できるという。

 

①動物の支配:過剰な懲罰を加える
②動物への報復:些細なことや的外れな理由を虐待の理由とする
③異種の生き物への差別意識:極端な嫌悪感を大義名分とする
④怒りやストレスのはけ口:ストレスの発散や怒りの表現として行う
⑤攻撃性や凶暴性の誇示:攻撃性や凶暴性を高める練習台にするケースも
⑥他者の反応を楽しむ:他人が驚いたり嫌悪するのを愉快に思う
⑦復讐の方法:復讐したい人のペットなどを使って嫌がらせをする
⑧身代わり:怒りや復讐の対象者の代わりに動物で代替する
⑨サディズム:単に動物虐待の欲求に従い、快感を得る

 

 いずれも暴力を抑制できず、むしろ暴力性、攻撃性の増大に繋がる理由ばかりだ。対象が人間に向かえば、重大な犯罪に直結する心理状態にあるといえる。

 

動物虐待はDVや児童虐待にも通ずる

   一般に、幼少期は多くの子どもが、無意識に動物虐待を経験するものだ。昆虫の羽根をむしる、飼育中の生き物の餌やりを怠る、飼い犬のリードを引っぱり回す……。

 

 多くの人は、そうした経験から共感性と罪悪感を学び、年を重ねるごとにしなくなる。動物虐待を繰り返し続けるならば、将来、暴力の対象が拡大する恐れがあるといっていいだろう。

 

 世間を揺るがす凶悪犯罪だけではない。DV(ドメスティック・バイオレンス)や児童虐待の犯罪ケースとも関係が深い。大手動物愛護団体の全米人道協会(The Humane Society of the United States)は、夫のDVでシェルターに避難した女性の71〜83%が<夫が動物を虐待や殺害している>と告白、<児童虐待のある家庭の88%でペット虐待も行われている>という研究結果を発表。

 

 同協会の副会長で心理学者のランダル・ロックウッド氏は、動物虐待と暴力行為の因果関係に着目。過日、毎日新聞のインタビューで「動物虐待をする人は、サイコパスの芽が出ている。彼らには共感性がない」と述べたこともある。

 

 法律情報サイト「HG.org」でも、<DV被害者の8〜9割が自分たちが暴力をふるわれるより先にペットがまず被害者になっている>、<虐待を受けた子どもの3分の1が動物虐待をするようになる>という統計を発表。

 

 また、ニュージャージー州の調査報告でも、<児童虐待をする親はペットも虐待する傾向が高い><動物虐待やDVを見て育った子どもは動物虐待をする率が高い>ことがわかっている。

 

 以前より、動物虐待とDVの関連性に着目していたメリーランド州のボルティモア警察は、DVマニュアルに「ペットへの虐待もチェックすること」とし、DVの被害家族がペットの身を案じて逃げ遅れることのないよう動物の保護シェルターと連携してペット共々に避難できるよう配慮した。その結果、DV絡みの殺人事件は急減したという。

 

 日本では欧米諸国に比べ、動物虐待と犯罪との関連性について認識が浅いようだ。メディア報道も「動物いじめ」「動物がかわいそう」だけでなく、問題性の根深さをもっと深刻にとらえるべきだろう。

 

 私たちにできるのは、動物虐待をする人をしっかり注視すること。たとえ、虐待行為そのものを止められなくても、ほかの兆候に気を配ることで、重大な犯罪を未然に防げるだろう。また、不審な点があれば、躊躇せずに、警察、役所、動物保護団体など、思いつくかぎり通報すること。

 

 そうやって、虐待行為のエスカレートを抑止できれば、<暴力の負の連鎖>に歯止めをかけられるはずだ。
(文=編集部)

 

 

~転載以上~

 

 

★参考記事

 

動物虐待に対するFBIの新たな姿勢

 

米テネシー州 動物虐待犯の個人情報を期限付きで公開するデータベースを作成