Fool's Journey 愚者の旅 Day69 AIアート | ∴MOLIVAN∵のブログ

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Success Fortune 筆頭占術士
フォーチュンアカデミー 専任講師

 昨今の巷をにぎわすAIチャットの一般公開より数年前からAIが前衛的な絵画を描き続けているサイトが稼働している。
そこにあるのは、抽象画や現代アートの様なムードを漲らせた刺激的で力強いグラフィック群である。少なくとも一見は、血の通わない無感情な機械が描いたとは到底思えない。悪い冗談かと思うほど絵画作品として成立しているように見える。映画ターミネーターを初めて見た時に感じた恐怖と同種の嫌悪感を覚える。だが所詮は造り物なのだが、どうやらこのサイトはSF映画でもドッキリ番組でも無ければ、ジョークのオチも無いようだ。正真正銘コンピューターが自動的に1枚1枚を描き上げているらしい。事実、このシステムのプログラムは公開されており、技術的な詳細も開発者によって説明されている。よって、納得せざるを得ない。
 しかし、気味が悪い。笑えるトリックのジョークであって欲しかった。出来の良いオチャメなロボットかと思いきや実は着ぐるみで中から女芸人が出てきたり、良く仕込まれた象が大きな体の向こう側に居る人間の指示で長い鼻先に持った筆で器用に絵を描いて見せる方が安心して楽しめる。だがこれは本物なのだ。それも、国家機密や先端企業の仕業でもなく、ほぼ個人の手によって成立しているようだ。いくら御本人がウェブ系の開発や機械学習システムの専門家とはいえ、凄い時代になったものだ。個人的には、自動運転によって走る車より刺激的だ。

 サイトに掲載されて行く作品(?)を見て行くと、いくつかのパターンや傾向が浮かび上がってくるような気がする。システムを構築したValentin Vieriu氏によれば、「WikiArtから1000枚の絵画を自分(手動)で選んでAIに学習(食わせた)させてアルゴリズムを訓練させた」そうであるから、パターンや傾向があるのは当然の事である。その点では、人間が持つ創造力や想像力は発揮されていない。それも、当たり前である。人間では無いのだから。少し安堵する。

 タロットカードのリーディングは、イコノグラフィ=図像学の上に成り立っている。その手法に手慣れたタロティストの目線でAIが描いた絵画を見渡すと、どの画像からも全く何も見えて来ない。不気味な程に無味無臭であり何一つのメッセージも読み取れない。恐ろしい静寂が無機質で無意味に存在している。一瞬の安堵は、底の見えない混沌とした無に飲み込まれて消え、不気味さは恐怖に浸食されて行く。

 いや、待て。早まるな。それで良いのだ。もし、AIが描く絵画に「意味」が込められていたら、その方が更に更に怖いではないか。あと一歩で真っ赤な溶鉱炉の中に落ちるところを間一髪で踏みとどまった。代わりに落ちたターミネーターが機械の顔で告げる「I will be back」。ぜひ、急がないで頂きたい。ゆっくりでいい。と小生は思う。

*https://art42.net