小説「壁」第十七話 | 森本オレオの落書き帳

森本オレオの落書き帳

小説などを置いています。

やがてひとつの疑問が頭に浮かんだ。

クローゼットになぜスコップがあったんだろう。

ここは現実の世界だ。

僕は夢の中でしかスコップに触れていない。

ここは夢の中なんだろうか。

いや、そんなはずはない。

しかしここは現実ではないと証明できるものも、人もいない。

僕の体は自然と動いていた。

気がつくと僕はさっきまでいた壁の前に立っていた。

壁にはさっき僕がつけたスコップの跡があった。

そして僕は動けなくなった。

僕は全身を嫌な予感という名のロープでぐるぐる巻きにされた気分だった。

もしかすると原因は簡単なものだったのかもしれない。

事の始まりはこの壁だ。

夢に神社や街が出てきたが、たぶんそんなものは関係ないのだ。

匂いのする壁。

女からも同じ匂いがする。

女は僕にスコップをどうしても持ってこさせようとした。

僕は穴を掘っていた。

女は必ず壁の中に消えていった。

そして、さっきの骨の手。

匂い。壁。女。
スコップ。掘る。骨。

僕は確信した。
女はここにいる。

僕はスコップを壁に突き刺し、壁を掘った。

きっと女は出てくる。

そして僕は必ずゆきえを取り返す。

僕は必死で掘り続けた。

そしてやっと見つけた。

僕の目の前には骨だけになったあの女――かどうかはまだ分からないが――が現れた。


その後すぐに僕は引っ越した。

骨の身元はやはりあの女だった。

大家さんによると、あの女は僕の前に住んでいた夫婦の、旦那さんの浮気相手だったらしく、それを知った奥さんが逆上して浮気相手を殺し、壁に埋めたということだった。

大家さんは公表すると住人が減るので黙っていたらしい。

僕はゆきえに手紙を書いた。

内容は引っ越したということと、解決したということだ。

返事はすぐに返ってきた。

手紙によると、どうやら彼女のところにもあの女が来ていたらしく、恐怖から手紙の返事を書くことも、電話をかけることもできなかったらしい。

僕はすぐ彼女に電話をかけ、今夜会う約束をした。

彼女の声は明るく、本当に嬉しそうに返事をした。

僕はあの苺の香りがしそうな爽やかな笑顔を思い浮かべた。


-fin-