小説「壁」第一話 | 森本オレオの落書き帳

森本オレオの落書き帳

小説などを置いています。

文字数の問題により、15回ほどに分けて掲載します。
それではどうぞ。
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そこを通るといつも香水の匂いがした。

ゆきえが家に来るたび匂いがするので、浮気してるんじゃないかと誤解されたほどだ。

そしてそのことから察するに、どうやら彼女のものでもない。

分からなかった。
なぜ壁から匂いが。

匂いはこの家に来たときからあったと思う。

初めは気にならなかった。

芳香剤代わりになっていい、とも思っていた。

だから放っておいた。


最近匂いが強くなってきた。

だが部屋を占領するほどの強さはない。

そこを通るたびに、匂いが強くなったな、と思うだけだ。

あまりにも気になるので匂いを調べてみた。

知り合いに美容部員をやっている女性がいて、お願いして家に来てもらった。

どうやら香水は女物らしい。

彼女は美容部員らしく色々教えてくれたが、そういう話に疎い僕は全部忘れてしまった。

それから彼女を送っていった。

帰り道で今の家について色々話した。

引っ越してきたときから匂いがしたこと。

最近匂いが強くなっていること。

彼女は人がいいので本当に心配してくれたようだった。

彼女が「お参りしたほうがいいわ」と言うので、途中で神社に寄った。

駅に着いたところで彼女と別れた。

人ごみに消えゆく背筋の伸びた後ろ姿を見ながら、彼女の身に何も起こりませんようにと思った。