文字数の問題により、15回ほどに分けて掲載します。
それではどうぞ。
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そこを通るといつも香水の匂いがした。
ゆきえが家に来るたび匂いがするので、浮気してるんじゃないかと誤解されたほどだ。
そしてそのことから察するに、どうやら彼女のものでもない。
分からなかった。
なぜ壁から匂いが。
匂いはこの家に来たときからあったと思う。
初めは気にならなかった。
芳香剤代わりになっていい、とも思っていた。
だから放っておいた。
最近匂いが強くなってきた。
だが部屋を占領するほどの強さはない。
そこを通るたびに、匂いが強くなったな、と思うだけだ。
あまりにも気になるので匂いを調べてみた。
知り合いに美容部員をやっている女性がいて、お願いして家に来てもらった。
どうやら香水は女物らしい。
彼女は美容部員らしく色々教えてくれたが、そういう話に疎い僕は全部忘れてしまった。
それから彼女を送っていった。
帰り道で今の家について色々話した。
引っ越してきたときから匂いがしたこと。
最近匂いが強くなっていること。
彼女は人がいいので本当に心配してくれたようだった。
彼女が「お参りしたほうがいいわ」と言うので、途中で神社に寄った。
駅に着いたところで彼女と別れた。
人ごみに消えゆく背筋の伸びた後ろ姿を見ながら、彼女の身に何も起こりませんようにと思った。