リゲティ
ポエム・サンフォニック~100台のメトロノームのための~
J.S.バッハ/ストコフスキー編
甘き死よ来たれBWV478
R.シュトラウス
ブルレスケニ短調~ピアノと管弦楽のための~
ショスタコーヴィチ
交響曲第15番イ長調作品141
《ソリスト・アンコール》
ブラームス
ピアノのための6つの小品よりインテルメッツォ作品118-2
指揮:ジョナサン・ノット
ピアノ:エマニュエル・アックス
コンサートマスター:クレプ・ニキティン
ミューザ入場時に渡されたプログラムと共に「開場時から行っておりますリゲティ ポエム・サンフォニックの演奏のため開演アナウンス云々(略)…お客様は14:00までにご着席くださいますようお願い申し上げます。…(略)…指揮者、ソリスト、オーケストラは、メトロノームが動いている中、入場し、そのまま最後のメトロノームが止まるまで待機いたします。入場の際の拍手はご遠慮ください。メトロノームの音が止まると、すぐにバッハ/ストコフスキーの甘き死よ来たれを演奏し、続けて間をおかずにR.シュトラウスのブルレスケを演奏いたします。曲間の拍手はご遠慮ください。」の注意書きが入ってました。
今回ノットさんが考えたプログラムのテーマは「生と死」、それを今日来場した聴衆に感じてもらうために配布された注意書きからもノットさんのこのプログラムに掛ける意気込みが感じられます。
さて、1曲目のリゲティは、注意書きにも書かれているとおり、開場時から100台のメトロノームがミューザ内に響き渡っています。
始まりの頃は、入場者の喧噪の中、漠然とカチカチ音が鳴っているなぁぐらいにしか思わなかったのですが、会場の照明が落ち、ノットさん(ノットさんも注意書きを読んでいない方の不用意な拍手を避けたのか、オケのメンバーに紛れて入場)を始めオケのメンバーが静々と入場し、会場内に静けさが出始めたあたりから、メトロノームの音が執拗に響き、それぞれの役目を終え1台1台とメトロノームが止まり、徐々に音が減衰して行く感じは、何とも形容し難く、まるで100人同時に生まれた人がそれぞれの天寿を全うしたかのような雰囲気が漂う感じは見事ノットさんの演出にハマった感が!!そして、1曲目からこんな緊張感に溢れたコンサートも始めてかも(もちろんそれもノットさんの意図していたものだと思う)。そして最後の1台がまるで人生を終えたかのように音が静まった瞬間、バッハの甘き死よ来たれが荘厳に鳴り、メトロノーム(これは人の一生の喩だと感じた)への葬送の曲(アックスさんはこの曲の途中で入場、まるで葬儀に参列するように見えた)として鳴り響き、その後間髪を置かずに鳴るブルレスケ(ここで照明が明るくなる演出も見事)は、死から生へ、でも人生は道化芝居って感じで明るいようでどこかに狂気じみたものを感じさせ(喩えるなら「世にも奇妙な物語」の世界観的なもの)、ティンパニ(わざわざ舞台下手のコントラバス後方に設置したのは、この音を強調させるため??)とピアノの掛け合いがこの曲だけを単体で聴くのとこうした流れで聴くのではまったく違ったものに聴こるから不思議。
ストコフスキーが編曲した濃厚な味付けのバッハとR.シュトラウスの軽妙なブルレスケを続けて演奏する組み合わせは、まるでマーラーの交響曲で感じる「生と死」(深遠な緩徐楽章のあとおどけたスケルツォがきたりする感じ)を、マーラーを得意とするノットさんが考えていたと感じたのは勘繰りすぎかな(^_^;)
曲のことばかり書いてしまいましたが、ソロを担当したアックスさんは、やはり大家だけのことはあり、完璧なテクニックと音楽性は流石!!ノットさんの意図も理解し、素晴しい演奏を披露!!
今年はいろいろなピアニストの演奏を聴いてきたけど、やはり別格ですね。
お見事!!ブラボーо(ж>▽<)y ☆
アンコールのブラームスのインテルメッツォもノットさんのプログラムの流れを壊すことなく、人生の哀愁すら感じる素晴しい演奏でした。
前半からノットさんの素晴しいプログラム構成に感嘆しきりでしたが(もちろん感動も)、後半のショスタコーヴィチの交響曲第15番は、正直晦渋な作品と言う印象でしたが、今回のようなプログラム構成で聴きくと聴きどころ沢山の素晴しい作品だと痛感。
おどけた感じの第1楽章は、前半のブルレスケと上手く繋がり、深く壮絶な第2楽章は、まるで人生の慟哭の叫びに聴こえ、短い不思議な感じの第3楽章を挟み、人生の終わり感じさせるフィナーレ、ロッシーニ、ワーグナー、自作等の引用は、人生の終焉に過去を回想するような印象を与え、まるで人の一生を交響曲で表現したかのようで、最後打楽器群が徐々に音が静まり終わるのは、心臓音が止まるかのよう(全曲目を通し、打楽器が活躍する選曲をし、人の息吹を感じさせる演出も効果的)…静かに曲が終わりノットさんの指揮棒がまだ宙を舞っている瞬間、聴こえるはずのないメトロノームの音が頭の中で鳴り響き、鳥肌が!!(音楽が輪廻転生していた(゚_゚i))
ノットさんの策略に見事ハマりましたо(ж>▽<)y ☆
またバッハに始まり、ショスタコーヴィチの交響曲15番のフィナーレもBACHの音型が出てくるところもDNAが継承されるみたいで、お見事!!
正直、最初この演目を見た時、あんまり食指が動かなかったのですが、今日のコンサートの様に有機的に繋がっていったのを聴くと絶妙のプログラム構成の上手さにノットさんの知的センスが光る好演でした。
そして、それに応えきった東響も、最近中堅どころの海外オケを聴いてましたが、それとまったく遜色もないどころか、それ以上に聴こえ、日本のオケの実力は高くなったなぁと実感。
本当に素晴しいコンサート届けてくれたノットさんと東響、アックスさんに感謝です(*゜▽゜ノノ゛♪
2015.11.23(MON)
14:00(リゲティは開場の13:30より演奏)
ミューザ川崎シンフォニーホール