前回、略語の話のなかで「どういうニュアンスで(その言葉を)使っているのか、その辺の相互理解が欠かせない」と書いた
昨日、帰りの電車のなかで、読みかけだった米原万里著『米原万里の「愛の法則」』(集英社新書)を読んでいると
(同書は次の投稿でも紹介した)
ちなみに、米原さんはロシア語会議通訳(interpreter)としても活躍された方であるが
「同じ言葉でも思い浮かべるものは人それぞれ」
そこが、通訳の難しいところだという
たとえば、AさんがBさんと結婚したいと思い
「毎朝君のつくったみそ汁(miso soup)を飲みたい」と言ったとすると
日本では、大抵の場合、これをプロポーズだと理解する
しかし、国が違ったら「私を家政婦(housekeeper; maid)に雇いたがっているのかな」
と思うかもしれない
こういう例も書いてある
自分の目の前に突然神様が現れて
願いをかなえてくれると言ったら
米原さんは「美人(beautiful woman; beauty)にしてください」と言うという
しかし、神様が思い浮かべる美人が浮世絵風の美人だったら困る
モナリザ風でもちょっと困る
ピカソ風だったらもっと困る
神様がピカソと同じ美意識(a sense of beauty; an aesthetic sense)ではない保証(guarantee)はないのだ
こんな話も書いてあった
「五年くらい前に、ニューヨークのハーレムでこんな事件が起きました。
黒人の浮浪者(vagrant; vagabond)の前に、やはりいきなり神様が現れて、
三つの願いをかなえてやると言われたんです。
彼は迷うことなく、次のように叫んだそうです。
『白くなりたい』
『女たちの話題の的になりたい』
『いつも女の股ぐらにいたい』。
すると、たちまち男の姿は消え去り、
路上にはタンポンが一個転がっていたということです。」
もちろん、これは作り話だが、米原さん曰く
神様と交信するときには、通訳を使ったほうがいい
こんな話も
日本で「三高」といえば、高身長、高学歴、高収入を意味する
言わずと知れた、女性にもてる男性の条件だ
(もう死語だろうか?)
ロシアではどう言うかというと
「頭に銀」
「ポケットに金」
「股ぐらに鋼鉄」
だそうだ
ひとつ目の「銀」は、銀髪で禿げないという意味
あとのふたつはご想像の通りである
米原さんが、この話をある教科書に書こうとしたら
編集者から、3つ目は品位が落ちるから省いてほしいと頼まれたという
米原さんの本は、どれも大抵まじめな話ばかりなのだが
ちょいちょいこういうエロい話しをぶち込んでくるから
読んでいて飽きない