その時、オレはまさにスタートバーを切ろうとしていた。
熱い・・・
まるで周りの空気が全身に絡みつくようだ。
オレの体を熱くするのは誰だっ。
若くてキレーな、おねーさんの熱い視線だろうか?
イヤ、そんなはずはない。
昔は若かった(当たり前)、キレーな(と言うことにしておこう)おばさんたちはたくさん来ているが、若いオネーサンは皆無と言っても良いだろう。
視線でないとするとなんだ。
この喉がひりつくような感じは。
思念か?
オレの二人前にスタートを切っsase。
中盤で木っ端になって散ったらしい。
奴の残留思念かっ!?
いや、違うっ!!
もっと強力だ。
頭の中で打楽器のような音が鳴り響く。
南米の現地人がかつて儀式などで使っていたような、木と動物の皮で作った打楽器の音だ。
不気味な調べが低く頭の中に鳴り響く。
からだの自由が奪われていくのがわかる。
血液が逆流するかのようだ。
喉が渇き、呼吸が乱れてくる。
頭の中に呪文のようなものが鳴り響く・・・
エコエコアザラク
エコエコザメラク
ちれっ、ちれっ、ちれっ!
エコエコアザラク
エコエコザメラク・・・・・・
散れ、散れ、散れっ!!
・・・・・・・(怨)
心をとぎすまし、思念の方向を探る・・・
どうやらゴール付近から邪念が送られてきているようだ。
それも一人や二人ではない。10人以上はいる。
クラブの仲間が揃ってゴールから、オレに邪念を送りつけているのだ。
今回はクラブの中でスタート順は一番遅い。
こうなることはわかっていた。
(´ー`)┌フッ
悪と戦うのは運命のようなものだ。
おのれ~、ブラックゴーストめぇ~。
ゴールからは、
マッチョ魔神:黒犬猟師
たっちゃんにまけた:141-36
酔っぱらい:つぼ八
などが邪念を送ってきているのを感じる。
負けてなるものか・・・・
邪念にうち勝つべく、心を「無」にする。
頭の奥に直接ひびいていたドラムの音がやむ。
耳元でささやく「ちれっ!散れっ!!」という声もだんだん遠ざかる。
さあ、今だ!!
勢いよくスタートバーを切った。
一歩・・・・
二歩・・・・
スケーティングをして初速をあげる・・・
・・・・・・筈だったのだが、足がもつれてしまい転倒寸前。
なんとか転倒は免れ、かろうじて第1旗門から第2旗門に向かう。
ふと気づくと、頭の中には呪詛の声とドラムの音が鳴り響いている。
駄目だ・・・・
手足がしびれて動かない。
ラインは大幅に落とされ、旗門を通過するのが精一杯だ。
くっそー!!
負けるものか・・・
歯を食いしばるが、既にからだの管制機能は呪文にコントロールされつつあり、頭の中は真っ白である。
・・・・・そのあとのことは良く覚えていない。
気がついたら、ゴールエリアの電光表示板の前でうなだれているオレがいた。
かあさん、もういいだろ。
ボクはもう、精一杯やったさ・・・・
ジェット・・・・
(この会話がわかる人はかなりなマニアです。)
今回もお腹にため込んだ「第3ブースター」は着火しなかった。
これに火がつきさえすれば、141-36選手なんか軽くひとひねりするくらいのタイムをたたき出せるはずなのだが・・・・
オレはブースターに着火するのは「テクニック」だとばかり思っていた。
しかし、違うんだ。
オレの第3ブースターに着火するのは俺自身の心なんだ。
誰よりも熱いハートで、火をつけるんだ。
邪念に負けて、心が折れているようでは駄目なんだ。
やっと気づいたよ、おやっさん。
おれは・・・・・おれは・・・・・
メタボライダーだ。
(このネタは前にも使ったなぁ・・・・わらい)
ブースターに着火するための着火剤を手に入れないとならない。
この際、それが「空中元素固定装置」でも、「加速装置」でも「光子力エネルギー」でも良い。
なんなら「GN粒子」や「ウルトラ愛?」でも構わない。
それを持つことにより、己に自信がもて、強い心でブースターに着火できるようになるはずだ。
よぉ~し、やるぞぉ~
いくぞっ!!
ハリケーンっ!!(ひひ~ん)
そうか、わかったよ。ジョー、キミはどこに落ちたい?