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今回の目的の路線は、
「銚子電気鉄道」
一般的には銚子電鉄、一部の人からは銚電とも呼ばれている。
ここでは銚子電鉄と呼ぶことにする。
銚子電鉄は大正2年、前身となる鉄道会社が銚子~犬吠間を開業。
利用不振から大正6年には一度廃止となったが、大正11年、「銚子鉄道」(現在の銚子電気鉄道)が路線を復活させ、翌12年には、路線を外川まで延長させた。
歴史のある路線ではあるが、常に廃線の危機と背中合わせでここまで歩んできている。
多方面の分野からの援助を受けつつ、何とか経営を続けられてきたのだが、東日本大震災の影響による観光客激減の為、ついに2013年2月1日、銚子電鉄は経営の自主再建を断念することを発表した。
今後の銚子電鉄の行く末が注目されている。
そんな路線でも、ここまで廃線の危機を救ってきた決定的なアイテムが一つ存在する。
それは後程紹介することにする。
銚子駅を観察するために、一度改札を出ていた私は、銚子電鉄の一日乗車券を購入しようとする。
しかし自動券売機や窓口では販売されていないとの事。
駅員に申告し有人改札から入場したのち跨線橋を渡り、島式ホームになっている2・3番線へ回る。
するとホームの東側に、「銚子電鉄」の文字が掲げられた、小さな洋風の建物が見える。
これが銚子電鉄ホームの入り口にあたる。
駅舎と呼んでよいものかどうか判断に迷う建物には、数年前まで風車がつけられていたらしい。
老朽化の為か、今はその風車は撤去されている。
この建物で一日乗車券が買えるのかと思ったらそうでもなかった。
建物の中はただの待合室のように扱われていた。
建物を抜けると、駅から東に延びる線路が、雑草で埋もれている様子が見て取れる。
そんな中、2番線ホームが切欠きされていて、そこに青くラッピングされた、1両の車両が出発を待っていた。
よく見るとその車両には、ゲーム「桃太郎電鉄」のキャラクターがラッピングされていた(現在このラッピングは変更されている)。
車内に入ると、ロングシートにまで桃鉄のキャラクターが描かれていた。
シートに座り、車掌からようやく一日乗車券を購入。
「弧廻手形(こまわりてがた)」と呼ばれる切符で、1枚620円。
観光施設などの割引特典も付いている。
この切符を手にして、私はある計画をここで実行することにした。
意識するようになったのは、初めての旅で、ムーンライト信州81号で一旦白馬まで行き、それまで来た道を、岡谷までそのまま180度引き返した時。
白馬から岡谷まで、営業キロは片道84.7㎞、運賃は往復で3,240円。
何の用事もなく普通の乗車券で往復しただけなら不経済極まりない行為だが、乗り降り自由な青春18きっぷだからこそ気兼ねなくできる行為である。
さらに18きっぷの1日分の料金2,300円を考えると、これだけで切符の元がとれてしまっている。
この日から私は考えていた。
どうすれば、フリー切符で一番元の取れる乗り方ができるのか…
ある路線の、始点から終点まで一気に乗車するのと、始点から一駅のみ乗車した場合。
料金が高くつくのは、言うまでもなく後者である。
鉄道に限らず、乗車距離が長くなると、その分運賃も割安になってくる。
弧廻手形の620円という料金は、銚子~外川間の往復の運賃。
ただ単に銚子~外川を往復しただけでは、損はしないが得もしない。
銚子電鉄の初乗り運賃は150円。
銚子電鉄線は、起終点駅を含むと10個の駅が存在する。
もし一駅一駅乗降車を繰り返してゆくと…
150円×8(回下車)+180円(海鹿島~君ヶ浜の駅間キロのみ初乗り運賃を超過する)=1,380円。
さらに帰りの運賃をプラスすると、1,380円+310円=1,690円。
これだ!
赤字の銚子電鉄には非常に申し訳ないが、銚子電鉄線の全駅に降り潰す。
全長6.4㎞という距離からしても、1日で全駅に降りるのも不可能ではないだろう。
この路線には面白い駅もあるらしいから、これは一石二鳥である。
後程、雀の涙程度だが、銚子電鉄への援助も考えているので、許して欲しい。
しかし、本当に順番に一駅一駅乗下車していったのでは、非常に時間が掛かってしまう。
そこでさらに考えなくてはならない。
銚子電鉄は単線路線。
まず下り列車に乗り、ある駅に下車したとしよう。
その駅にやってくる次の列車は、高い確率で上りの列車の筈である。
下り列車に続けて、またその駅に下り列車が来ることなど、かなり特殊なダイヤでも組まない限り皆無だろう。
これである。
簡単に言えば、下り列車で3駅進んだ後、上り列車で1駅戻る。
降りた駅で、今来た方向とは違う方向に進む列車に乗る。
これを繰り返せば、1方向の列車だけに乗って全駅下車する場合より、確実に時間は短縮される。
10時45分。
列車は定刻通り外川に向けて出発した。
ここに、銚子電気鉄道阿房列車の旅が始まった。