-何にも用事が無いけれど、台風から逃れる為に、列車で東へ行こうと思う-
9月に入ったばかりの天気予報は不吉であった。
台風12号は当初、関東や東北の太平洋側を進み、足早に日本付近を通過する見込みであった。
しかし台風の北側で太平洋高気圧の張り出しが強まり、進路を拒まれる形で進路を西に変えた。
のちに大型の台風へと進化し、四国地方と中国地方を真っ二つに裁断するような勢いで北上した。
この太平洋高気圧の気まぐれが、日本列島に大打撃を与えた。
日本の各地で浸水被害や土砂災害が発生した。
特に紀伊半島南部に与えた被害は甚大で、和歌山・奈良・三重の三県だけで死者・行方不明者は80人を超えた。
この台風の影響で、紀伊半島の海岸線を走る紀勢本線は一部区間が寸断され、復旧するまで3か月の期間を要した。
この台風は関東地方にも爪痕を残した。
私の住む本庄市内でも、豪雨による土砂崩れが発生したのを始め、市内の至る道路で冠水が発生した。
台風の進行方向西側にあたる地域の被害が大きくなる、と一般的に言われているようだが、この台風は例外であった。
子供の頃は、台風が来ると言われると根拠も無くワクワクしたものだったが、歳のせいか、はたまた関東大震災のせいか、最近は心配する気持ちのほうが上回ってしまう。
それにしてもこの年は、受難の一年となった。世間的にも、個人的にも。
2011年9月3日(土)
台風が四国に上陸して本格的にひと暴れする直前に、私は青春18きっぷを片手に家を出た。
前日までの本庄市内の豪雨は峠を越えたようだが、全く油断はできない。
とにかく台風から遠ざかろう。私はひたすら東へ向かうことにした。
ぜひ乗りたい路線もあることから、少々危険を冒してでも行きたい。
空の便は言うまでもなく欠航が続出していたが、幸い関東一帯の鉄道に運休・遅れは出ていなさそうだ
(ただし9月2日発のサンライズ出雲・瀬戸は上下とも運休となっていた)。
高崎線の上り始発列車に乗り込み、上野から京浜東北線→秋葉原から中央・総武線→千葉から総武本線と乗り継ぐ。
列車は気持ち良いくらいに定刻通り動き、乗り換えもスムーズであった。
不安定な空模様が照らし出す総武本線からの車窓は、右を向いても左を向いても一面の田園風景が広がり、非常に長閑なものである。
停車駅は小さな駅が多く、中には秘境駅のような雰囲気を醸し出している駅もあった。
よく千葉と埼玉はお互いライバル視されるという話を聞く。
千葉県民は千葉より埼玉の方が田舎だと言い、
埼玉県民は埼玉より千葉の方が田舎だと言う。
しかし和歌山出身の私からして見れば、どっちもどっちであり、どちらが偉いとか劣ってるとか格付けする行為自体、非常に馬鹿馬鹿しいことだと思う。
埼玉を馬鹿にする千葉県民に、この総武本線の車窓を見せてあげたい。
逆に千葉を馬鹿にする埼玉県民には、秩父鉄道の秩父~三峰口間の車窓を見せてあげたい。
ライバルと思える相手がいるのはまだマシだ。
和歌山など、「近畿のオマケ」などと揶揄され、最初からライバルと見てくれる相手もいないのだから…
本庄から4時間余りかけて、定刻通り総武本線の終点、銚子に到着した。
ここまで来れば、台風の影響も少ないだろう。
ここから、今回の目的の路線に乗車する。
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