アレクサンドル・クニャーゼフ&ニコライ・ルガンスキー 紀尾井ホール | クラシックコンサート鑑賞日記

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コンサートの余韻を楽しむブログ

2019年4月23日(火)紀尾井ホール

ショスタコーヴィチ:チェロ・ソナタ 二短調 作品40
フランク:チェロ・ソナタ イ長調 (原曲:ヴァイオリン・ソナタ)
ラフマニノフ:チェロ・ソナタ ト短調 作品19
【アンコール】
ブラームス:ティークの「マロゲーヌ」によるロマンスop.33-12
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第3番より第3楽章
バッハ:トッカータ、アダージョとフーガ ハ長調BWV564よりアダージョ



ぐはっ……!
凄かった!
めちゃくちゃよかった。
アレクサンドル・クニャーゼフ、かなり好きな音だ。

クニャーゼフはよく来日していると思うが、おそらく初めて聴いたと思う。

こちらも先日の都響同様、ルガンスキー狙い、なおかつ自分の好きな曲ばかりということで取ったチケットだったが、クニャーゼフが鬼才過ぎて釘付けだった。

音が、なんというか重く濃く分厚い。
こんな低音は初めて聴いた。

さらに、なんだか締め付けられるような、苦しいような願い祈るような。
これがぐうの音も出ないほど美しい。

なぜか、映画「吉原炎上」で以前廓で2番目に人気だった花魁が結核で客が取れなくなり、血反吐を履きながら発狂しているシーンで名取裕子が「あんた、どんだけ辛い目にあってきたのよ」というシーンが浮かんだ。
そんな音だ。

ショスタコは実演で聴くのは恐らく5回目だがクニャーゼフの演奏は、別格だった。
技術も素晴らしい。

フランクもクニャーゼフとルガンスキーの全く甘くない味付けが新鮮だった。


ラフマニノフは、二人の意志の強い音が煽るように響き渡り、息を飲む演奏だった。

第4楽章まであるソナタを三つやり、お腹いっぱいだったが、なんとこのあとアンコールを3曲。
アンコールも大変素晴らしかった。

怒涛のブラボーが飛び交い、終演は9時半。

……とここまで書いてネットでクニャーゼフについて調べると、やはり色々あった人のようだ。

若くして名声を欲しいがままにしていたものの、両手が使えなくなる難病におかされる。その後、5年かけて病は完治し、チャイコフスキーコンクールで2位を収める。
それから数年後、演奏旅行中に交通事故に遭い、愛する妻(ピアニスト)を失うと同時にチェロも失い、自分も重症。再起不能に。云々……。

……なるほど。。。。壮絶だ。。。
だからあんな音が出るのか……。

吉原炎上はまんざらでもなく、本当にそういう状況にあったことがあるということだった。

 


私は、以前習っていた楽器の先生に「あなたは苦労したことがない音」と言われたことがある。要するにアホみたいな音なんだろう。
苦労した人の音は心臓をえぐられるような音が出る。音だけで泣かすほど威力がある。

今日はサスペンダー爺が休憩挟んで2列目から最前列へ移動。まぁいつもの光景だが、誰も注意しないのは、あらかじめ係りの人に断っていて公認だからなのか? それにしても、毎度毎度、最前列の正面の席が運良く空いているというのも強運だ。