発売日:2022/8/26
単行本:304ページ
ISBN-13:978-4041117217
建物で起こる怪異を解くため、営繕屋は死者に思いを巡らせる。
怖ろしくも美しい。哀しくも愛おしい――。
これぞ怪談文芸の最高峰!
建物にまつわる怪現象を解決するため、営繕屋・尾端は
死者に想いを巡らせ、家屋に宿る気持ちを鮮やかに掬いあげる。
恐怖と郷愁を精緻に描いた至極のエンターテインメント。
全6編を収録。
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シリーズ第3弾
このシリーズは何故だかハードカバーで買ってしまう。
最初の発行が、小野作品に飢えている時だったからかなぁ?
何がステキって、営繕屋の尾端さんでしょう。
怪現象→除霊!という方法ではなく、昔からある古い建物や
物や道具に染み込んで、表に出てきてしまう「怪異」と
うまく折り合いをつけて営繕する。
「待ち伏せの岩」
渓谷での水難事故で、従弟を失くした青年は、崖上に建つ
洋館の窓に見える女の話を聞き、店に乗り込むのが・・・
一方、洋館に住む多実は、窓の外に妖しい人影を見て・・・
怪異とバカにせず、ちゃんと話を聞いた上で
納得の説明をする。
怪異じゃなくても、大切な事ですよね。
ケンカ腰だと、いつまでも解決すらできない。
「火焔」
イビリに耐え、長年介護してきた順子には、姑の死後も
罵詈雑言が聞こえ、姑の携帯番号から着信が続き
家の中は杖で叩いた傷が・・・
全て自分が受け止めればいいという考え方も
迷惑をかけたくないという思いも、度を超すと
死者も自分も追い詰める。助けを求めることも必要。
ヒペリカム(金糸梅) ビヨウヤナギ(未央柳、美容柳)
植えようとしていたのは、ヒペリカム
似た感じだから、よく間違えるのよねぇ~(^◇^;)
黄色で可愛い花だから、きっと庭も花やぐね
「歪む家」
弥生は、幸せな家族を人形で再現するが、ドールハウスを
作る過程で「歪み」が生じ、やがて異変が起こる。
そんなドールハウスを焚いてもらいに寺に行くのだが・・・
本格的に小物を作っていた弥生だったけれど
まさかの原因が!
「誰が袖」
戸建てを新築し、妊娠中の妻と母親とで暮らしていたが
以前の屋敷にいた幽霊が、持ち込んだ薬箪笥の前にいた。
一家に代々伝わる隠し事とは?
やはり線香の煙というのは、当たり前に信じていた
人間には効果があるんですねぇ
でも、暴れるとは知らなかったぁ~
「骸の浜」
河口付近の家では、沖で水難に遭った死体が、靄と共に
庭にやってくる。その場所を伝えることを生業にしていた
真琴の家は忌み嫌われていて、建て直しすら出来ず・・・
尾端さんが時々仕事を手伝う隈田さんも、真っ直ぐでいい。
安心して住める家があると思えば、考えも変わる。
「茨姫」
死んだ姉を偏愛していた母親が他界し、響子にとって
辛い思い出だらけの実家が残ったが、蔓バラで覆われた
庭の小屋で、知らなかった姉のことが見えて来て・・・
建物や小物だけでなく、植物も人の意志を受取るなんて
やはり尾端さんと関わる人たちは、不思議で優しい。
「怪異」という「オモイ」に対してまで心を尽くして、
対応策を考えるというやり方が、優しくてステキです。
だから、怖いのに、読み終わった後に強張った体ごと
浄化されたような、それこそ修繕された心地になります。
別の意味で、このシリーズも好きです♪