好きだったかどうかと言われると
大好きだったんだろう。
恋を知らないうちに、好きじゃない事を
証明しなければいけなかったから(-。-;)
それでも、きれいな思いではたくさんある。
・・・・・・・
中学校と道路の境界には大きな川が流れている。
中学校の周りはフェンスで囲まれているけれど
フェンスの一部が壊れていて、何故かそこには
コンクリートの橋が架かっている。
そこから中学校の敷地に侵入できる。
いつか通うはずの中学校。
橋を渡ると旧校舎の脇に出る。
ちょうど音楽室があるところだ。
時々、ピアノに合わせた合唱が聞こえる事もある。
保育園児のアタシとやっちゃんにとって
そこに侵入することは大冒険である。
音楽室の脇を通り抜けて、フェンスに沿って進むと
グラウンドに出る。
周りにはたくさんの木が植えられている。
その一部が桜並木になっている。
田舎の桜の開花は遅い。
ちょうどGWぐらいに満開になる。
道路側から見ていた桜吹雪を見て
あの花びらの下に行ったらキレイだろうねって
ほんの思いつきで言ってみただけだったのに・・・
誰かに見られるんじゃないかとドキドキする。
怒られたらどうしようって、ビクビクする。
周りの木に隠れながらグラウンドの桜の木を目指す
低く腰を落として、時々しゃがんで周りの様子を窺がう。
突然立ち止まる背中にぶつかる
「ちゃんと前みてろよ」
「急にとまらないでよ」
見つかったらどうしようって気持ちと
ワクワクする気持ちが混ざり合って
思わず笑ってしまう。
シーっと人差し指で口を塞ぐ
満開の桜は風に煽られて花びらが雪のように舞っている
二人で顔を見合わせる
「やったぁ~♪」
土手を手を繋いで駆け下りる
ビューっと風が吹いてグラウンドの土が舞い上がる
慌てて目を閉じて風下に体を向ける
風が止むと同時に顔を上げると
桜の花びらが空から舞い落ちてくる
髪にも顔にも洋服にも
いっぱいいっぱい花びらが落ちる
また風がビューっと吹いて
花びらを強引に連れて行こうとする
二人で桜色の花びらを追いかける。
小さくて可憐な花びらを潰さないように
集めて手の平に乗せる。
やっちゃんはふざけて花びらをフーっと吹いた。
せっかく集めた花びらが手の平から散る。
手の平の汗に何枚かの花びらがくっついていた。
アタシはそれをポケットにしまった。
家に帰った時には、すっかり忘れてたけど
桜の季節がくると、二人で見た桜吹雪を思い出す。
写真は、当時の中学校です。
今は建て替えられて、昔の面影すらない
川はアスファルトの下に
壊れたフェンスは頑丈になって
見上げていた桜の木は
そんなに大きくなかった・・・