半席/青山文平 | mokkoの現実逃避ブログ

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発売日:2018/9/28
文 庫:320ページ
ISBN-13:978-4101200934

御家人から旗本に出世すべく仕事に励む若き徒目付の片岡直人。
だが上役から振られたのは、不可解な事件にひそむ

「真の動機」を探り当てる御用だった。
職務に精勤してきた老侍が、なぜ刃傷沙汰を起こしたのか。
歴とした家筋の侍が堪えきれなかった思いとは。
人生を支えていた名前とは。意外な真相が浮上するとき、
人知れずもがきながら生きる男たちの姿が照らし出される。
珠玉の武家小説。
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初めましての作家さん。
主人公の片岡直人は、徒目付(かちめつけ)という、

職員の監察係をしている。
家格は「半席」といって、父と同じく一代御目見

(いちだいおめみえ)。
このまま二つ以上の御役目につかず代替りすれば、

御家人にもどされる。
父子二代がかりでも二度の御役目につけば、旗本、

永々(えいえい)御目見に出世できる。
いずれは生まれてくるのであろう自分の子の為に、

仕事に励んでいたが上司である内藤雅之に、外から

持ち込まれる頼まれ御用を言いつかり
これがまた、犯罪を犯して計が決まっている犯罪者から
「なぜ」そのような事をしたのか?という理由を

調べる事になる。

「半席」
 筏の上でタナゴ釣りをしていた作左衛門が、

 足を滑らせて水死した。
 一緒にいたはずの信二郎は、既に筏を折りていたので
 事故とされたが・・・

「真桑瓜」
 白傘会という八十から九十九歳の集まりが二カ月に一度あり
 料理を楽しんでいたのだが、突如、刃傷沙汰が勃発して・・・

「六代目中村圧蔵」
 一季奉公の雇い直しを繰り返し、二十年以上も繰り返し
 体を壊して侍奉公をやめた男が、元主を殺して

 鋸挽の刑(死罪の中で一番惨い)に・・・

「蓼を喰う」
 縁の下の力持ち的な仕事をコツコツとこなして旗本にまで
 なった男が、仲間内に手を掛けた・・・

「見抜く者」
 直人と雅之が通う念流(防と制を活かす殺要らず)の道場
 「錬制館」の筆頭と言われる源一郎が襲われた。

「役替え」
 七、八人の中間(ちゅうげん)が、仲間の一人を

 いたぶっていた。
 倒れた男に声をかけた直人に顔を隠した男は・・・


昔は、事件があって、犯人が捕まり、裁きを言い渡したら
犯人は、お仕置きを待つだけ。
本作は、事件の奥に潜む「なぜ?」を探り出すおはなし。
これはまた、人情モノに加えて直人の成長物語でもありました。

頼まれ仕事をもらう時の行きつけの店で出される料理は
釣り好きの店主が旬に合わせて一番旨い一品をこしらえる
これがまた、美味しそうでお腹が空きます。
魚料理苦手なんだけどなぁ~(^◇^;)

脇役で登場した系図売りの沢田源内がいい味を出してます。

齢を喰うほどに、堪忍する歯止めが消えてゆく
若えうちは軽く我慢できたことでも、簡単に弾ける。

 最近、電車での口論とかを見ていると、こういうのが
 多いなぁ~・・・
 いい齢してって思ってたけど、なるほどね。

武家と死との関わり
自らを裁いて、自らに死を与えることのできる唯一の身分が武家
死罪とは、自ら死ぬことのできぬ者たちへの温情

最後の「役替え」では、家の彼岸より、一人の人間として
事にあたり、その結末がまた、泣ける。
本当にいい話を読みました