あのころ知りあいのだれもがなにかしらのウソをついて
暮らしていた―
長く潜伏したあとでひょっこり姿をあらわした、
よく似た姉妹による巧妙なウソ。
郵便受けに届いた1枚の葉書が呼び起こした、弟との
30年前の秘密。
猫めいた老婦人、白い紙の舟。消えゆく記憶の彼方から、
おぼろげに浮かび上がる6つの物語。
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長野作品については、初期作品を読みまくりました。
長野ワールドと言葉の使い方が大好きだったんですが
どういう訳か、BL系に方向転換している。
ただ、まれに好きな作品が混じっているので侮れない。
目安になるのは、読み友さんのレビューだったりします。
そして今回、目に留まった長野作品が本作
stardancerさんのレビューを読んで購入しました。
6作の短編集です。
「ポンペイのとなり」
弟の友人の名が書かれたハガキを見て、30年前を
回想する、姉弟の奇妙なルールと現在の皮肉・・・
なるほど・・・
ポンペイの遺跡展とか観に行ったなぁ・・・
「フランダースの帽子」表題作
高値を付けた素人作品が売れてしまい、購入者は不明。
巡り巡ってその絵に再会するのだが、その購入者は?
「シャンゼリゼで」
読書会で披露された詩。その著者の手掛かりを求めて
参加した人達と著者から残されたメッセージ・・・
「カイロ待ち」
中古住宅を購入し、リフォーム中にあったトラブル
都を建設するさい、東の空に火星が昇ったというのが
エジプトの首都:カイロの由来(* ̄ρ ̄)”ほほぅ…
「ノヴァスコシアの雲」
雲の事務所という屋号を見つけて
中に入ってみると・・・
祖父母が自宅に猫の事務所という屋号をつけている
宮沢賢治の童話「猫の事務所」にちなんでいる。
「伊皿子の犬とパンと種」
ダイビング中の事故で流され記憶を失った青年は
大変な資産家で、見えてきたのは不可解な生活で・・・
夢と現実の狭間で揺れているような
妖しくも不思議な独特の世界観が大好きで
気付かないうちに異界の扉を開けていたりする。
その誘い手は、ネコさんだったりするから
ネコさんのイメージは、どうしても不思議になる(^◇^;)
本作は、今まで読んだ中でも、大人系の不思議で
共通するのが「ウソ」だったりする。
期待していたワクワクは少なくて
読み終わってから、なるほど・・・少し辛口ね。と
理解する。胸がうずく感じが、長野作品らしい。
長野作品は、誰しもが見ていたであろう風景を
描写するのが上手いと思う。
似た風景はたくさんあるんだろうけど、忘れていたはずの
風景をピンポイントで引っ張り出される。
どこか懐かしい気持ちにさせられるのは、
そういうことなんだと思う。
ただ、個人的には、最後だけではなくて
途中経過にも、夢を見させてほしかったかな。