発売日;2021/4/30
文 庫;408ページ
ISBN-13;978-4074482269
戌西州を襲った大蝗害。
過去の蝗害を知る者は少なく、人々は混乱する。
西都や国境近くでも、食糧の強奪や暴動が
頻繁に起きていた。
猫猫は何もできない自分を歯がゆく思いつつも、
できる限りのことをやっていた。
それは中央からの客人である壬氏も同様で、
身の安全のためという名目の軟禁生活を
強いられながらも、蝗害を予見していたことで、
中央からの支援物資を早く受け取ることができた。
だが、その手柄は壬氏ではなく
西都の領主代行・玉鶯のものとして扱われてしまう。
手柄の横取りに猫猫は腹を立てるが、当の壬氏は
どこ吹く風で、皇弟という立場を最大限に利用して
戌西州への支援要請を行う。
また、物資が不足する中、猫猫にさまざまな問題が
火の粉となって降りかかる。
謎の腹痛に苦しむ玉鶯の孫娘。
変人軍師・羅漢が連れてきた棋聖と呼ばれる老人。
同僚の医官・天祐の奇行。
そして、消息不明だったあの人が帰ってくる?
一方、西都では皇弟に対する不満が高まっていく。
蝗害による飢えや病に苦しむ民衆は、
とうとう皇族である壬氏へ怒りの矛先を向けることに。
守り支えていたはずの民衆に恨まれてしまった
壬氏の決断は?
不審な動きを続ける領主代行・玉鶯の狙いとは?
そして、猫猫は無事、危機を脱することができるのか?
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シリーズ第十一弾。
予測していた通りに蝗害に襲われた西都
予見していたことで、中央からの支援物資を
いち早く受け取ることができた。
けれどその功績は領主代行の玉鶯のものとなる。
手柄の横取りに猫猫たちは、思うところもあるが
当の壬氏がスルーをかましている。
一方で、猫猫たちは、自分たちに出来ることをする。
腹痛に苦しむ玉鶯の孫娘に、天祐と猫猫が組んで
外科的手術をすることとなり・・・
余裕がなくなると人の心が荒れる。
荒れた心は群れて弱者を襲い、更には解放先を求めて
標的を探し、その矛先は壬氏一行に定められる。
「赤信号 みんなで渡れば怖くない!」の心理。
騒ぎに便乗して、隣国の砂欧に戦争をしかけると
のたまった玉鶯。
しかし、壬氏や変人軍師たちにスルーされて
煮え湯を飲まされる形となる。
人の顔を認識できない変人軍師が玉鶯と対峙して
語った印象が的を射ている。
だが、壬氏たちの住まいに押し寄せる民衆に
玉鶯が間に入って民衆をなだめる。
嬉々とした姿に、変人軍師の印象が頭をよぎる。
祭事を行う事で民衆を煽りながらも納得させた玉鶯。
祭事の初日。壬氏たちの裏で、玉鶯を筆頭に兄弟姉妹が
一部屋に集うのだが・・・
玉葉后の新しい侍女として後宮に入った三姉妹
その正体がやっとわかる。
そして、陸遜の正体もわかる。
異国との交流が盛んな西都にありながら、
異国人を嫌う玉鶯。
その理由と捻じれた心根が浮き彫りにされる。
暴漢の目には正義があった。
大事なものを守るためなら何をしてもいいという、
正義でもあった。捻じれた大義名分。
聖戦と称して行われる無差別殺戮と同じだと感じました。
高里椎名さんの薬屋探偵のシーンを思い出しました。
悪気がないって、一番卑怯で残酷ないい訳だよ。
喧嘩を売っておいて、買うなって言ってるのと同じだ。
人は自分に火の粉が降りかかるまで、
対岸の火事程度にしか思わない。
貧しいものほど目先のことしか見えていなくて
視野が狭い故に、欲に目がくらんでしまう。
これが人間だもの・・・と開き直る気はないけれど
何か虚しい・・・
ここで一区切りと思っていたのですが
どうやら西都編はまだまだ続くようです。
こういう小説は勢いで読まないとダメですよねぇ
一区切りついて(´。`;)ホッとしたので
続きはもういいと思ってみたり(^◇^;)