発売日 : 2018/9/20
文 庫 : 376ページ
オリンピックを数年後に控えた、暑い夏。
古い団地の一室で、多数の遺体が発見された。
腐乱した遺体の中に自分の愛人を見つけた刑事は、
彼女と自分の繋がりを隠すため、遺留品を持ち出す。
2つめの犯行現場で目撃された犯人は、肌の異様に白い若い男。
「スノーマン」と呼ばれる彼は、謎めいた美しさから
話題を集めていくが―。
この上なく残虐で、しかし哀しいサスペンスホラー。
文庫書き下ろし。
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初めましての作家さん。
↓クリックレビュー
ドラゴンボーイの憂鬱さんのレビューを読んで購入しました。
帯の「真実を知った時、全ての意味が裏返る」
と言うコピーに納得しました。
人々を恐怖と熱狂に陥れる白く美しい連続殺人鬼。
哀しげな瞳をした彼をめぐる物語
ほらっ・・・
「白く美しい」とか「悲し気な瞳をした」とか
それだけでもう、切ない物語を「頭」が作ろうとしてる。
読み終わったからこそ言える事ですけどね。(^◇^;)
殺人との対比とか、本当に上手いと思いました。
何より、真実を知るまでの心のざわつきが半端ない。
殺された人物、殺人者を追う刑事、子供を殺された母親、
歌舞伎町のホステスと、色々な視点で描かれる。
そもそも目次が人の名前なんですよね。
入居者2人という古い団地の一室から始まった異常。
事件報道での「あるある」と言っても過言ではない
レベルを疑うメディアの対応
自分だけの正義を振りかざし、上から見下して
人の悪意や弱者に対する眼差しがリアル過ぎます。
SNSで被害者の母親の過去を掘り出して晒す
被害者側なのに、想像を交えてとことん貶める。
これも実際に似たような事が起こってますよね。
悪ノリの域を大幅に越えて増殖する心ない人たち。
前に宅配会社の作業員の行動をマンションから撮影。
赤の他人のスマホの映像が大騒ぎされた事があった。
撮影者は、そこまで考えてはいなかったでしょうけど
それって、人ひとりの職を間違いなく奪ってるよね?
その人の人生を奪ってるよね?
上級国民の身内の犯罪は、他の犯罪者の犯行に
すり替えられる。
改めて、本当にあった、もしくはありそうな
人の悪意に対する描写がリアルです。
スノーマン以外の人たちの悪意がリアルです。
そして、後半からスノーマンだけでなく
他の登場人物達にも驚きの動きがあります。
予想外の事に、一瞬、呆然とします(^◇^;)
なにより、連続殺人事件騒動の真相を
言い表している問答というか例えが分かり易い。
ゴキブリがいたら・・・殺す。
ムカデがいたら・・・踏み潰す
では、蝶がいたら・・・窓を開けて逃がす。
そういうことか!その例えに納得してしまった。
第一印象が大切だって、よくわかった。
っていうか、全ての元凶はお前だろう!
殺す理由をサクっと答えた殺人者の話を
初めて読んだ気がします。
読後の脱力感は、大作映画を観た後のようでした。
心の擦り減り具合が良くも悪くもデカかったです。
…(o_ _)o
余談ですが、スノーマンの色の白さから
真っ先に連想したのは秋田県でした。
実際は、雪形や地名から岩手県側だったわけですが、
秋田といえば秋田美人で有名なところだけれど、
主に米代川周辺に多いと地元出身の人に聞きました。
一般の色白と、秋田美人の色の白さは別物です。
実際に比べてみて納得しました。
前に書いた記事↓