発売日 : 2020/11/13
文 庫 : 336ページ
葬儀に訪いし白装束の女は、にたりと笑って掻き消えたそうだ。
春菜が勤めるアーキテクツに異変。
連日見つかる絡まった黒髪や不気味な人影の怪は、
連続不審死事件に発展する。
色男だが高慢なエリート・手島を守るため、
仙龍は奇怪な“匣”を用意する。
一方、刻々と迫る仙龍の死を止めたい春菜は
隠温羅流の深淵に迫る。
手がかり潜む出雲で、異形の瘴気を背負った女と出会うが―。
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よろず建物因縁帳シリーズ 第7弾
今回のお話は二通りの流れがあります。
1つは、隠温羅流の流れを追う話。
もう1つは、常務として春菜の会社に入った最低男と、
そいつに纏わる怪奇現象。
棟梁から隠温羅流の事を記した大切な手帳を預かった春菜。
同じ頃、春菜の会社では、長い黒髪が落ちていたり
絡まっているという気味の悪い現象が起きていた。
春菜は、前作での残虐絵についての企画案を持って、
小林教授を訪ねるのだが、棟梁から手帳を預かった事を
既に知っていて、神話について教えを乞うことになる。
その帰り道、偶然コーイチを見かけて、鐘鋳建設に
お邪魔することになるのだが・・・(〃▽〃)ポッ
さて、夢中になってネット検索をしている春菜の元に、
鬼が来たことで、棟梁のところに報告に行ったのだが、
夢中で書き取った鬼の言葉は、意味を持っていた。
それを調べる為に出雲に向かう春菜とコーイチ。
そして、もう1つの厄介事である常務を巡る怪奇現象。
関連会社の真面目な女性を食い物にした挙句に貢がせて捨てた。
会社で続く怪現象は、捨てた女の仕業だと
察しているからこそ、逃げ隠れする常務。
しかし、奥様が変死したことで、会社で葬式を出すことになり、
途中で、春菜経由で経過報告を聞いた棟梁達が、
これはマズイと判断。
最低男とはいえ、鐘鋳建設が手を貸すことになり、
それを知って無視する事はサニワとしての魂が汚れる。
調べる事はコーイチがまとめてくれたので、出雲から急遽
Uターンして春菜も加勢することになった。
和尚曰く、
ただ女を抱くのと、女の誠を食い物にするのとは意味が違う。
鐘鋳建設の倉庫では、命がけの儀式の準備が整う。
儀式は丑三つ時。
しかし、怖い目に遭いながらも、また女の尻を追いかけ
その女までが死んでしまう。
怪異は、鐘鋳建設の倉庫にやってきて荒れ狂い・・・
いやはや・・・
今回は、パグ男を上回る下衆野郎が出て来て
隠温羅流の流れを辿る話が頓挫することになるけれど
これは次へのステップになるんだろうなぁ~
春菜の成長も、覚悟を決めたことで更に躍進。
だんだんと頼もしくなっております。
そして仙龍とも、やっとですかぁ~
思いっきりストレートなところに
萌えまくりましたけどね。(〃▽〃)ポッ
そして、いつもながら蘊蓄や小ネタも楽しい!
隠温羅流の祖先は信州の人ではなく、他から流れてきた。
産鉄民族は宮大工と関係していた?
鐘鋳建設の鐘鋳の文字と隠温羅流の隠温の文字が
共にたたらを連想させる事と、隠温という鬼がいて、
これも、たたらと関係がある。
この掘り下げる過程が楽しい!
表と裏、和魂と荒魂、陰と陽、両方揃って一つ。
尊ばれる場所は清浄なだけでなく、近くに必ず禁足地や
忌み地があって、真面目でも近寄ってはいけない。
生きている人間は、エネルギーの塊だ。
死者はそれに適わないので、わずかな隙を突いてくる。
恐れてはならないし、気付いていると悟られてもいけない。
これは、随分と前から自分も気を付けていた事なんだけど
怖がると、気付いてると知られて余計に集まるから
気付かないフリを続けろって・・・
このシリーズは、色んな事を教えてくれます。
建築に関する蘊蓄だけでなく、怪現象や禁忌のことまで。
次がますます楽しみになりました。