死神憑きの浮世堂/中村ふみ | mokkoの現実逃避ブログ

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ページ:285ページ
発売日:2018/6/6

人形修理工房“浮世堂”を営む城戸利市は、ある日
“死神”が顔見知りの少女を襲う現場に遭遇する。
それはかつて、利市の幼い弟が殺されたときと
よく似た光景だった。
利市が知る“死神”は、怪しげな人形を道具にして
他者の命を奪う者だ。
そして“死神”に殺されると、なぜか周囲の記憶から
その存在を抹消されてしまう。だが、利市は忘れなかった。
母親さえも我が子を忘れてゆく中、兄の利市だけが憶えていた。
以来十五年、弟の理不尽な死の真相をずっと探っていたのだ。
利市は“死神”を追う。
しかし、そこへ新たな殺人事件が発生して…。
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二度目ましての作家さん。
前回、夜見師が面白かったので

 

別の作品を読もうと探していたら、カバーイラストに惚れた!
が、表紙絵のイメージとはちょっと違っていて
これはシリーズのプロローグ的な内容なのだと理解した。

新宿の裏通りにある四階建ての古いビル。
一階は大家の登良婆さんが営む椎名質店。
孫の翔太は高校生。
ユンという逆サバを読んで仕事をしている女の子に
恋心を抱いているらしい。

そのビルの三階で、ゲロ安の家賃で人形修理工房
「浮世堂」を営んでいるのがメインキャラの城戸利市。
人形という名のものは、何であれ修理する。
店名は、現実を忘れないための戒め。
こめかみの傷跡は、毎日思い出すため。

利一は小学生の時、幼い弟:夕樹を目の前で殺された。
死神のような老人によって、一方的に奪われた。
病死扱いにされただけでも耐えがたいのに、どういうわけか
周辺から夕樹がいたという事実が消えていく。
両親でさえ弟の存在を忘れていく中、利一は忘れなかった。
忘れ得ぬ者として弟の理不尽な死の真相と死神を
15年追い続けていた。

ある日、ユンが危ないと翔太からの電話をもらった利一が
近くの神社裏の工事現場に駆け付けると、夕樹の時と
似たような状況でユンが倒れていた。
逃げ出した少女の手には夕樹の時と同じく人形が握られ、
少女を庇うようにスーツ姿の男がいた。
空手か拳法を使う男によって、またしても利一は
死神を取り逃がしてしまう。
何もできない自分への怒りと、死神への激しい怒り。
そして翔太は、ユンの事を忘れていく・・・

一方、利一の友人で生臭坊主の愚浄は、仕事以外にも
坊主と思えないほどのハイスペックを持ち合わせ
利一を支える。何者ですかぇ~?!


話は、利一側の目線と、死神側の目線で語られる。
死神となったものの生前の話と、甦ってからの話が
交互に語られ、少しずつ背景が見えてくる。

愛する者を生き返らせたいというエゴから生まれた呪術?
自らの意思を無視して甦らせられた死者。
死んだ後も人形として慰み者にされていた死者。
泡沫(うたかた)人形とは?
骸屋(むくろや)、戻り人とは?
犠牲者の周りのものが、犠牲者を忘れる意味とは?

利一は、過去の記憶と人形修理をしながら続けた
情報収集と愚浄の協力によって、死神に近づいていく。
あまりにも皮肉な巡り合わせと、利一の決断。

この理不尽に命を奪う行為が、許せない。
一方的に有無を言わせず、ただ奪う。
その利一の怒りが伝染したかのように、読んでいて
震えが走るんですよねぇ
それが苦しいのなんのって・・・
結末から、続きがあると思ったら、やっぱりでした。
骸屋(むくろや)と呼ばれる仕事が、複数あると
言っていたので、たぶん事件が続くんだろうなぁ~
愚浄にも、坊主以外にも何か秘密がありそうだし・・・

この世界観、嫌いじゃないです。
あの怒りは辛かったけど、話としては面白いです。
続編を読んでみよう。