羊と鋼の森/宮下 奈都 | mokkoの現実逃避ブログ

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現実から目を背けて堂々と楽しむ自己満足ブログ

 

ページ:274P
発売日:2018/2/9

第13回本屋大賞、第4回ブランチブックアワード大賞2015、
第13回キノベス!2016 第1位……伝説の三冠を達成!

ゆるされている。世界と調和している。
それがどんなに素晴らしいことか。
言葉で伝えきれないなら、音で表せるようになればいい。

高校生の時、偶然ピアノ調律師の板鳥と出会って以来、
調律の世界に魅せられた外村。
ピアノを愛する姉妹や先輩、恩師との交流を通じて、
成長していく青年の姿を、温かく静謐な筆致で綴った感動作。
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初めましての作家さん。
やはり文学賞は意味不だけど、本屋大賞はいい!
早くも今年一番が決定か?

高校2年のある日、体育館に置かれているグランドピアノを
調律する板鳥と出会い、調律に魅せられ調律師を目指す外村。
本州の専門学校で2年間、調律の技術を学び、北海道に戻った
外村は、板鳥のいる楽器店に就職が決まる。
入社して5カ月が過ぎた頃、先輩である柳に同行して
双子の姉妹のところなどに調律に行く。
入社2年目には、憧れの板鳥に同行させてもらい
一流ピアニストのコンサートの調律も見学できた。
そして戸惑って迷ってばかりいた外村は、やがて・・・


タイトルの羊って何だろうと思っていたんだけど
確かにいました!
そうか!そこにいたのかぁ~と思ったら、嬉しくなりました。

感覚的な物事を伝えるのは難しい。
例える為の感覚が備わっているのに、どう表現したらいいのか
どう伝えたらいいのか、どう問えばいいのかわからない。
依頼もまた、抽象的で、どう受け止めていいのか
繊細過ぎて考え過ぎて戸惑ってしまう。
けれど双子の姉妹との出会いが、外村を成長させる。
なんて優しいお話し。

山で暮らして森に育ててもらった外村。
体で感じて備わった自然の感覚を、ピアノの調律に重ねる。
その比喩に使われる森の様子が手に取るようにわかる。
もしかしたら、山や森の中で過ごした事のある人なら
とても共感できると思います。

夜から朝への移り変わり、山が目覚める瞬間、季節の変わり目、
風の動きや音やにおいとか、肌ざわりとか温度とか
海と山で同じ音がするとか、雪が降る日は暖かいとか、
何度も頷きながら読みました。
久しぶりに森の中で呼吸をしている感じを味わえて
気持ちよかったです。


終わり方も更なる成長を予感させながら、見守る先輩たちの
暖かさを感じることが出来る優しい作品でした。