ページ数:394P
発売日:2001年08月
両足両手を切断してなお舞台に立ち続けた名立女形・
澤村田之助復帰に沸く明治3年。
凄惨な連続殺人が歌舞伎界を震撼させる。
どうやら河鍋狂斎の描いた幽霊画に、殺人事件の鍵が
隠されているらしい。
戯作者見習いのお峯はその謎解きに奔走するが?
滅び行く江戸情緒と田之助の姿をお峯の目を通して活写した、
第六回鮎川哲也賞受賞作。
表題作の原型となった未発表作品「狂斎幽霊画考」も収録。
---------------------------
デビュー作
明治に入り、江戸の町は東京になったものの、
ここ猿若町ではまだ「江戸」が色濃く残っている。
そんな猿若町には、脱疽によって両足両手を次々に失ってもなお
舞台に立ち続けた名立女形・澤村田之助の復帰に沸いていた。
そんな中、田之助の主治医が惨殺される。
しかも、その手口が数ヶ月前の若手歌舞伎役者の殺し方と
よく似ていたという。
同一犯による連続殺人なのか?
同じ頃、届けられた川鍋狂斎の描いた幽霊画に隠された
いくつもの謎を解き明かそうと、憑りつかれたように
夢中になっている音羽屋。
原因を作った狂斎はというと、泥酔して描いた狂画に新政府の
お役人が激怒して、お縄になっている。
更に、小屋への火付けがあったり、殺人が発生したり
嫌な噂が流れたりと、猿若町に不穏な空気が流れる。
まさか田之助が殺人犯なのか?
狂斎の描いた幽霊画に原因が隠されていると思った
蝋燭問屋のお嬢様で戯作者見習いのお峯は、周りから
心配されながらも、独自の推理で動き出す。
江戸と明治が微妙に混じりあった時代の雰囲気が
なんかすごくいいです。
活気と、もの悲しさとが同居してる感じがたまらない。
澤村田之助が実在の人物だったなんて知らなかったぁ。
そして、今後シリーズものとして世に出される作品の形や
エッセンスみたいなものが垣間見える。
少しドキドキしながら、微妙な時代背景と相まって、
歌舞伎の世界は知らないけれども楽しめました。
デビュー作でこれだけ描けるんだもの、やはりスゴイです。
ちなみに、狂斎幽霊画考というデビュー作の原型となった
作品が収録されてますが、間違ってもこちらを
先に読まないように!