活版印刷三日月堂/ほしお さなえ | mokkoの現実逃避ブログ

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現実から目を背けて堂々と楽しむ自己満足ブログ


ページ数:311P
発売日:2016年06月

川越の街の片隅に佇む印刷所・三日月堂。
店主が亡くなり、長らく空き家になっていた三日月堂だが、
店主の孫娘・弓子が川越に帰ってきたことで営業を再開する。
三日月堂が営むのは昔ながらの活版印刷。
活字を拾い、依頼に応じて一枚一枚手作業で言葉を印刷する。
そんな三日月堂には色んな悩みを抱えたお客が訪れ、
活字と言葉の温かみによって心が解きほぐされていくのだが、
弓子もどうやら事情を抱えているようで――。
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初めましての作家さん。

「世界は森」
運送店に勤めるハルさん。
同じ建物に同居するジョギング仲間達とジョギングの帰りに
三日月堂という古い印刷屋さんの電気がついているのを発見。
店主が亡くなり、しばらく空き家になっていたが、
孫の弓子さんが住むことになったと言う。
ハルさんの勤める運送屋で仕事をすることになったのだが、
ある日、ハルさんの息子が北海道の大学に進むことになり、
三日月堂で作ってもらったオリジナルのレターセットを
お祝いに送ることを思いつく。
息子の名前に込められた思い

雑誌や本に並んでいる文字は、確かに意味を持って並んでいるが
ここでは文字が「活字」という「もの」として並んでいる。
なんか・・・こういうのいいなぁ~

「八月のコースター」
伯父から珈琲店「桐一葉」を受け継いだ岡野。
常連がいるとはいうものの、まだまだ店も味も伯父にはかなわない。
なにか自分独自の色がほしいと思っていた時、紙マッチの代わりに
ハルさんの紹介で、ショップカードを作ろうと、三日月堂を訪れる。

印刷業界では、インクじゃなくて、インキ、っていうんですね。
時々、ステキな紙マッチやショップカード、コースターを
見つけると持ち帰ってたなぁ~

「星たちの栞」
昔、一度入ったことのある「桐一葉」を訪れた鈴懸学園の
文芸部の生徒が俳句の印刷されたコースターに目をとめる。
学園祭で、三日月堂の協力の元、活版印刷のワークショップを
催すこと企画した。
ジョバンニが印刷屋で働いていたことから、背景を銀河鉄道の夜の
世界にし、銀河鉄道の夜の話の中から好きな一文を栞にする。

銀河鉄道の夜の物語に特別な思いを寄せている生徒と先生。
それぞれの思いを銀河鉄道の夜の一文で活字を組む。
出来上がった一文は、心に響く・・・
銀河鉄道の夜の話を思い出しました。
こんな学園祭なら是非とも行ってみたいです。

「ひとつだけの活字」
雪乃の曾祖父は活字屋を営んでいて、戦時中に店は焼けたが
曾祖母が守り抜いたという幾つかの活字を大事にしていた。
その活字屋が銀座にあった老舗だったと知り、現在も
弓子が利用している活字店を訪れる。
結婚式の招待状に、祖母が大切にしていた活字を
使いたいと思った雪乃だったが・・・
祖母の思い出と、結婚式の招待状ができあがるまでの
優しいお話しです。

本文用の活字の大きさは5号という日本独自の単位で、
フォントサイズの10.5ポイントに相当し、WORDの本文の標準は
10.5ポイント。ちなみにフリガナをルビと呼ぶのは、7号(約5.5ポイント)の
呼び方がルビーで、HTMLのタグrubyがそれにあたる。
確かにそうだわぁ~
昔は有楽町に都庁があったって知らなかったぁ~


どうやら読むタイミングを間違えてしまったらしい。
これは心がささくれている時に、読むべきでした。
いい話には違いないんだけど、下鴨アンティークの
優しくて不思議な話の後だと、どうしても物足りない
読むタイミングって、思ったより大事だと痛感しました。