下鴨アンティーク アリスの宝箱/白川紺子 | mokkoの現実逃避ブログ

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ページ数:294P
発売日:2018年05月

初夏を迎えた京都、下鴨。
糺の森で、若いころ求婚の返事が聞けないまま婚約者を亡くした、 
と語る老人に出会った幸。彼が探していたものとは……?
「鶯の落し文」

「香水瓶を返してほしい」という着物姿の女性が訪ねてきた日から、
身辺に彼女の幻影を見るようになった春野。彼女の正体は――。
「青時雨の客人」

ほか、全六編収録。
時代を超えて受け継がれる、古い物たち。
そこに宿る想いを見届ける、シリーズ最終巻! ! 
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シリーズ最終巻で番外編

「鶯の落し文」
野々宮家の近くにある糺の森は、幸のお気に入りになった。
枯葉に混じって海苔巻きのように巻かれた青葉が落ちていた。
「鶯の落し文」だと教えてくれた老人は・・・
友達の家に遊びに行った幸が、見かけた女性の幽霊。
本当の事を口にしては、気味悪がられていたのに・・・

幸がメインのお話になっているけど、野々宮の家にふさわしく?
視える上に勘がいい幸。
良鷹が受けた如月堂からの依頼も一緒に解決できて、
それに対して、深く突っ込まない良鷹がいい。
込められた想いに対しての優しさがとっても温かい

「青時雨の客人」
香水瓶を返してほしいと着物姿の女性が訪ねてきた日から、
身辺に彼女の幻影を見るようになった春野。
祖父の集めた物の中に香水瓶は見つからなかったのだが
やつれた春野を心配した菅谷が香水瓶探しを手伝ってくれ
持ち主を割り出し訪ねていく。

骨董に込められた想いの切なさを紐解く短いお話だけど
それと同時に描かれているのは、謎だった春野の事。
普段は豪快な菅谷が、春野をよく見ていることがわかる。
そして春野もまた、良い友人を持ってるなぁ~
春野のイメージがこれでまた変わりました。
今更ですが(^◇^;)

「額の花」
額紫陽花の彫金のブローチ。最初の持ち主から売りに出され
いわく付きのブローチと言われるようになり、
やがて鹿乃の祖母の手に。いわくとは・・・

ブローチ側からみたお話しになってます。
ブローチは、元の持ち主への想いが大きくて、
他人を自分の持ち主とは認めなかったけれど、野々宮の
家に貰われてきて、ブローチも幸せになりましたって話。
物に宿る思いに対する愛情がステキでした♪

「白帝の匂い袋」
鹿乃の持っている匂い袋は、祖母の芙二子の祖母が
夫から送られたものだそうで、白帝と名付けられた匂い袋は
代々受け継がれ、野々宮の女を守っている。
芙二子の祖母が匂い袋をもらうことになった経緯のお話し。

これで短い文庫1冊分になるくらいの中篇になってます。
やはり陰陽系の家には、色んな妖しいお話があるものです。

「一陽来復」
野々宮家に向かう途中、慧が助けようとした小さな動物は?

これはなんとも微笑ましいお話でした。
良鷹の複雑な心境が手に取るようにわかる。
っていうか可愛い。(○ ̄m ̄)

「山吹の面影」
鹿乃と良鷹の両親は、如月堂の紹介で八幡家に向かう途中で
事故に遭い亡くなってしまった。
誰が悪いわけでもないのに、そこから前に進めずにいた良鷹だが
如月堂の当主が直接訪ねて来て、八幡家の事を依頼してきた。
八幡家の娘である玲奈の話では、白無垢の花嫁の幽霊が現れ、
山吹の花を残して消えると言う。
八幡家には玲奈の祖父が持っていたという筥迫(はこせこ)があり、
それに取り憑いている、と玲奈は考えているというのだが・・・

八幡家に真帆を伴って行こうとすると、幸が一緒に行くと
主張し、白露が心配してると言う。
小学生に心配される大人って・・・(○ ̄m ̄)
父が何に興味を惹かれて八幡家に行ったのかが気になり、
調べ始めた良鷹。
婚礼と葬儀の儀式の類似点。添い嫁。狐憑き・・・
今回も幸ちゃんのお手柄でした。


前作のあとがきの後に登場した兄妹の友達が

いい子でよかったぁ。
幸が野々宮家とメインキャラ達ともうまくいっていて
心底安心しましたよ(母親か?(○ ̄m ̄))

宝箱というだけあって、番外編らしく色んなお話が楽しめました。
そしてさりげない蘊蓄もいいですねぇ~

青時雨(あおしぐれ)
雨上がりに葉から落ちてくる雫をさす言葉。

紫陽花は魔除けになる
半紙に包んだ紫陽花を逆さに吊るしてあるのは魔除けのまじない

婚礼と葬儀のしきたりは似たところがある。
花嫁に茶碗山盛りのご飯を食べさせて、家を出る時に
その茶碗を割る。葬式の出棺のときに行われることでもある。
これ、某サスペンスドラマでやってたぁ~!
あれも舞台は京都だったわ。なるほど。

婚姻というものには危険がともなうと思われていた。
この世からあの世へ渡るに似た越境越えの儀式。
境界を越えるには、幾重にも呪術が必要になる。
それが婚礼と葬儀のしきたり・・・
知らなかったぁ~!

とうとう終わってしまった。
なんて楽しいシリーズだったのでしょう♪
こういう不思議は大好きです(p^_^q)