バチカン奇跡調査官 原罪無き使徒達/藤木稟 | mokkoの現実逃避ブログ

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現実から目を背けて堂々と楽しむ自己満足ブログ

ページ数:398P
発売日:2015年03月

 

熊本・天草において、真夏日に大雪が観測され、天空に忽然と
巨大な十字架が浮かび上がった。
時期を同じくして近隣の海で遭難した海洋冒険家は、こう語ったという―
「美しい黒髪の天使に救われた」。
平賀とロベルトは奇跡調査を開始するが、隠れキリシタンの信仰が
色濃く残る天草の地には、さらに謎めいた怪異と暗号が伝えられていた。
「さんしゃる二、こんたろす五」の文が示す天草四郎伝説の真実とは!?
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バチカン奇跡調査官シリーズ第9弾

 

今回の舞台は日本です!
平賀がいるからかぁ~と単純に思ったものの、そう簡単ではない。
二つの奇跡についての申請は、フランシスコ会とイエズス会から
届いており、現法王はイエズス会であることから、厳正な審査を行うため、
別の会派の調査が妥当であり平賀が日系だということが決め手になった。
バチカンといえども一枚岩ではない。
闇の歴史とスキャンダルが重くのしかかっている。

 

さて、海洋冒険家が目撃・体験した奇跡と、神島での奇跡調査の為
イエズス会の教会を訪れるも、やはりと言うべきか冷たい対応。
日本語の話せないロベルトには、通訳として教会の神父がつきそうが
その神父はとても優しくて、ロベルトの興味を持ったものを
親切に解説してくれる。
一方で、平賀は、神島で夏だというのに雪が降ったという
痕跡を探すために島に渡り、得意?の登山(○ ̄m ̄)

 

奇跡が起こった神島は名前とは別に不吉な場所と言われている。
最初の神であった真昼様。島には毒蛇がいるだけでなく
妖怪:油すましや不知火の目撃談も多数あった。

 

そして天草といえば、隠れキリシタンに天草四郎。
けれど彼は謎の多い人物でもあった。
歴史は常に勝者の手によってのみ記される
だから、本当のところがわからない。

 

いつものことながら蘊蓄がたくさんありました。
日本の神様は仏様と違ってよく祟る。
大和民族によるヒルコの島流し。祀られた蛇体の龍神。
先住民が信仰した古き神々の社は僻地や離島に置いて
自分たちを祟らないように封印して祀ったという。
十五社という神社の多さと、油すましについては
柳田國男までぴっぱり出してきてる(^◇^;)
独眼竜政宗やお岩さんの失明の原因は知らなかったぁ~

 

これを読まなければ触れることのなかった歴史。
日本人で初めてローマ法王に謁見した天正遺欧少年使節が
バチカンから破格の歓迎を受けた本当の理由とは・・・
島原の乱の裏で蠢いていたものは・・・

 

金や不都合な証拠を潰す為に振るわれる暴力
個人の正義を振りかざして神の道を説くなんて
いや・・・神の道だけでなく、何事にも
そこに個人の正義やら思惑が混じったら、
その時点で道から外れるんだってわからんかなぁ~

 

弾圧されながらも、巧妙に隠され受け継がれた信仰は
少しずつ形を変えながらもヒッソリと守り続けられている

神事に奇跡・・・
本当に現実と幻想の境目がわからなくなる

 

今回も後半に入って、バタバタっと色んな事が動き出して
ロベルトが危ない!!って事になるんだけど
まぁ~そこはお約束ですからね(^◇^;)
どのシリーズも好きだけど、本作が一番好きかもしれない。

正直、海外の日本への対応にはむかついた。
うまく手玉に取られちゃってたんだものね・・・
でも、知らない歴史に触れた事と最後の粋な計らいに感動しました。
っていうか、思わず調べちゃったんだけど
最後の部分は実話だったのね。

 

2年前の記事で、今年もローマのサン・ピエトロ大聖堂で、
隠れキリシタン口伝の祈り歌「オラショ」が披露。

こちら

天草の﨑津集落を世界遺産へ・・・

こちら

 

ここに登場した隠れキリシタンの末裔達
これが本当の信仰だって思いました。