水の時計/初野 晴 | mokkoの現実逃避ブログ

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水の時計 (角川文庫)/初野 晴
¥679 Amazon.co.jp
ページ数:385p
発売日:2005年08月

医学的に脳死と診断されながら、月明かりの夜に限り、
特殊な装置を使って言葉を話すことのできる少女・葉月。
生きることも死ぬこともできない、
残酷すぎる運命に囚われた彼女が望んだのは、
自らの臓器を、移植を必要としている人々に分け与えることだった―。
透明感あふれる筆致で生と死の狭間を描いた、
ファンタジックな寓話ミステリ。
第二十二回横溝正史ミステリ大賞受賞作。
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テーマ読み「水」で読む予定だったけれど
時間的に無理と判断して積んでました。

二度目ましての作家さん。
ハルチカシリーズの「空想オルガン」しか読んだことがないけれど
とても読みやすくて、シリーズの途中をいきなり読んでも
全然平気だったので、本作も重い内容と知りながらも
期待して読みました。

臓器移植の話だと思って読み始めたので
入り口の状況を理解するまで戸惑いました。
いきなり暴走族の話だったから、それが何に繋がるのか
意味不明だったのですが、読み進めて納得しました。

葉月は事故で脳死と判定された時、臓器を提供するという
意思を伝えられなかった。
遺族の意思により、ありあまる資産を使って延命措置がとられ
脳は徐々に腐敗を続ける中、心臓だけが虚しく動き続けていたが
そこで奇跡が起きる。
月明かりの中でだけ、特殊な機械を通して
言葉を発せられるようになった。

一方、暴走行為を繰り返しながらも、警察の網に引っ掛からない術。
リーダー的存在の一人の事故死。
グループの分裂から抗争。
昴を執拗に追いかける堀池警部。

「幸福の王子」が、自身の体(宝石等)を鳥に運ばせたように
葉月は自らの臓器の提供者選択と運搬役として高村昴を選んだ。
多額の報酬と引き換えに、犯罪と知りながら請け負う昴。

葉月が昴を選んだ理由とは?

臓器提供をしたい人がいて、提供を待ってる人がいて
個人の意思のみで、与えたい人に与える。
けれど受け取ってほしい人が受け取るとも限らず・・・

単に臓器移植という話だけではなく、死の定義みたいなものと
どこで一線を引くかという事も、すごく考えさせられました。

ただ、葉月が昴を選んだ理由がちょっと弱いなぁ・・・
いくつか不鮮明な部分もあって、もう少し
突っ込んでほしかったと思ってみたり・・・
全体的にはよかったのに、ちょっと消化不良の部分が残りました。