
発行年月:2004年05月
サ イ ズ:324P 15cm
ゲーム制作会社で働く汐路は、同僚がビルから転落死する瞬間を目撃する。
衝撃を受ける彼女に、故郷・早瀬で暮らす姉から電話が入る。
故郷の中学で女学生が同級生を猟銃で射殺するという事件が起きたのだ。
汐路は同僚と女学生が同一のキャラクターグッズを
身に着けていたことに気づき、故郷に戻って事件の調査を始めるのだが…。
現代社会の「歪み」を描き切った衝撃のミステリ!
第二十一回横溝正史ミステリ大賞受賞作。
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初めましての作家さんです。
Mirokuさんのレビューを読んで
即購入したものの、積んでた作品。
どうも購入すると安心してしまって、積んでしまう悪い癖。
それでも一度は読み始めたんだけど、すぐに別のシリーズに
浮気してしまったのですが、何ですぐに読まなかったぁ~!と
自分を責めました( ̄▽ ̄;)ゞ
主人公は、ゲーム制作会社で働く島汐路。
退社を間近に控え、有給消化に入ろうとしている時期に
同僚が無理心中事件を起こす。
たまたま姉から聞いた故郷・早瀬で起きた無理心中事件から
死亡事故や事件が多い事に驚き、何気なくネット検索していた汐路は
会社の同僚の無理心中事件との共通点に気付き、調べ始める。
調べるうちに浮かび上がってくる様々な「歪み」
辿って行った先にあったものとは・・・?
著者がゲーム制作会社に勤めていたというだけあって
ゲーム業界の過酷な労働やゲーム開発の裏話など、
薀蓄とまではいかないが、小ネタが読んでいて楽しい。
けれど、小ネタだけに終わらせない。
ネットストーキングや盗聴など、実際に起こっている事件も
うまく組み込んで、解決策までも紹介しているから、
いいお手本にもなるだろう。
冷静にトラブルを処理し、的確に調査を進めていく汐路。
何がいいって、都合のいい結果だけを安易に受け入れず
様々な事象を収集、分析、解析して、そこから
答えを導き出しているということ。
小野主上の「残穢」を連想しましたよ。
けれど、古い因習の残る田舎町での理不尽な暴力に
過信から無謀な行動をとった汐路に対し、
その危険性を身を持って正す会社の先輩と、その友人。
やり方はどうであれ、一番分かり易い方法かもしれません。
正に、ぐうの音も出ませんでした。
散りばめられた謎と伏線。高まる緊張感。
期待を裏切らずに回収される伏線。
いやぁ~もう大満足でしょう!
ネット社会での危険は、本当にリアルでした。
mokkoもネットストーカー被害にあってるし
悪意のある書き込みをされたこともある。
もちろん、ビビリだから、最新の注意をはらっていました。
けれど自分が気を付けていても、第三者によって情報が漏れるという
危険は常にあるわけで、ストーカーってくらいだから
本当に執拗でしたよ。
そして妄想がエスカレートした結果ではあったけど
それに関しては、ネッ友さんの協力で危険は回避できました。
でも、マジで怖かったです。
会ったこともないメール相手に本気で恋した人もいた。
音信不通になっちゃったので、今どうしているのか・・・
盗聴の被害にあった同僚もいたし、古い因習の残る田舎町での
理不尽な暴力ってのも実際に聞きました。
暴力って、相手にけがをさせることだけじゃないのよ
その部落に生まれただけで、穢多非人というレッテルを貼られ
就職先まで追いかけて影響を与えるという恐ろしい因習。
田舎の事だから、表面には出てこないけれど
この現代で、いまだにこういう因習が残っているって事を
思い出しましたよ。
そういう意味においても、本作はハウツー本としても
いいかもしれないですね。
そういえば、続編が出てましたぁ~
これは気になる!
呪い唄 長い腕II (角川文庫)/川崎 草志
