
発行年月:2011年09月
サ イ ズ:424P 15cm
人や物の「記憶」を読み取れる不思議な力をもった姉・鈴音と、
お転婆で姉想いの妹・ワッコ。
固い絆で結ばれた2人の前に現れた謎の女は、鈴音と同じ力を悪用して
他人の過去を暴き立てていた。
女の名は御堂吹雪―その冷たい怒りと霜しみに満ちたまなざしが
鈴音に向けられるとき、何かが起こる…。
昭和30年代を舞台に、人の優しさと生きる哀しみを
ノスタルジックに描く“昭和事件簿”「わくらば」シリーズ第2弾。
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前作「わくらば日記」から数年経った頃のお話です。
東京オリンピックが開催される数年前の設定。
「澱みに光るもの」
中学校の校門前で神楽さんが待っていた。
姉さまを呼び出して欲しいと頼まれ、連れて行ったら
茜ちゃんの事件で協力してくれた強面の刑事が来ていて
アリバイを聞かれた。
どうやら姉さまと同じ力を持った女性が悪さをしてるらしい。
薔薇姫の名刺を「見た」姉さまだったが・・・
「黄昏の少年」
近所のお米屋さんに住み込みで働いている幸男君。
戦争によって一人ぼっちになった彼は幼少の頃は
施設で育ったらしい。
そこで兄貴のように慕っていた人の行方を探したいと
交番の秦野さんのところに相談に行き、手がかりの
万年筆を姉さまが見るのだが・・・
「冬は冬の花」
薔薇姫の事件で、姉さまに特殊な力があることを
茜ちゃんが知ってしまった。
生きるために人に言えない仕事をしていた茜ちゃんとは
その頃から少しずつ溝が出来ていた。
そして家での仕事の手伝いを急に辞めると言い出して・・・
「夕凪に祈った日」
茜ちゃんの騒動で新聞社の人と知り合いになったのだが
その人の知り合いの男性が自殺をしようとしてる人を
救ったのだが、意識を取り戻したら記憶を失っていた。
外に出るときは曇っていても日傘を手放さない女性。
そしてまたも現れた薔薇姫。
女性が失った記憶とは・・・
「昔、ずっと昔」
ワッコちゃんの宝箱にしまわれている大切な思い出の話。
昭和37年。ワッコちゃんが高校2年生の時の事。
刑事の神楽さんにプライベートな件で見て欲しい物があると
言われて出向いた先には、大学で考古学を教えているという
神楽さんのお兄さんがいた。
今回の依頼はどうやらお兄さん絡みのようで・・・
本作も前作より少し後の話になっているだけで
不思議な能力を持つ病弱で美しい姉と、妹のワッコちゃんの
ノスタルジックな昭和事件簿
生まれていないのに、何故だか懐かしく思えてしまう。
昭和30年代を舞台に、若くして亡くなった姉との思い出。
どこか物悲しい雰囲気を含みながら、本作では
薔薇姫という敵が出てきます。
姉さまと同じ力を持っていて、明らかに姉さまよりも
力を使いこなす事に長けていて、それを悪用している。
しかも、薔薇姫は姉さまのことを知っている?
薔薇姫の正体は明かされてはいないから、もしかしたら
これはもう少しシリーズとして続くんじゃないのかな?
年齢的にもお姉さまが亡くなるのは、まだ10年以上先。
これは期待したいところです。
前作もそうだったけど、読み始めた時に想像している
事の成り行きとは、全く違う結末がいつも待っていて
そこに優しさや温もりを感じる終わらせ方をしているから
安心して読むことができます。
心がささくれ立った時に、読むことをお勧めします。
癒されましたぁ~(*´◇`*)