真理は人間の道徳及び道徳を伴う知識の淵源《えんげん》でありますから、道徳及び信仰の対象であります。
しこうしてその真理を実現せしものは聖人・準聖人 及びその他の道徳家であって、その人格の力が一般人間の道徳及び信仰を支配するのであります。
かくてそのいわゆる人格は、単に知識をもって認識するところ の真理の範囲を超越して、知のほかに情・意を具備するものであります。
故に人間の道徳及び信仰を実現さする動力は、真理のみにては不十分であって、必ず人 格の力を要するのであります。
しこうしてその聖人もしくは準聖人の事跡には、いずれも一貫せる人格の象徴があって、吾人《ごじん》の精神的及び物質的生活 に対して一定の標準を示しておるのであります。
故に最高道徳は、真理を尊ぶと同時に、その生きたる精神的伝統の人格を尊び、理解と感激と、正当なる判断と によって、その慈悲心を涵養《かんよう》し、且つこれを発揮するのであります。
広池千九郎WEBSITE格言の間より