醒睡笑
巻之六
一
物こと心かけある人。
山寺に行一夜二夜。
とまる事あり。
少人の内みめさま世にすくれしを。
古今とよふ。
客聞是はめつらしや。
此名のこゝろをあんするに。
いにしへいまも若衆道には。
あるまひといふ儀にや。
色色心をつけなんしけるか。
師の坊かむかひ。
古今とは如何なる子細ありて。
つけたまへるととふたれは。
しはらく其いはれをかくす。
籬の内の梅か香は。
つゝむに色もいやまさり。
なをおくふかく思ひなし。
頻に意趣をたつねし時。
院主の御坊さゝやきて。
いはれけるこそうたてけれ。
あの子か親は。
けしからぬ大きんにてありつるか。
あれは引かへ。
きんかいかにもちいさゝに。
こきんとつけて候と。
師匠の知恵ちやつよりあさや