いやはや、梅雨の無い北海道のくせに、ジメジメムシムシ続きな今日この頃…「こ~ゆ~日は沢に涼みに行こう」というワケで、相方ん家に遠征がてら、今シーズンの沢始めに行ってきた「頑なに登山道を歩かない登山家」のもじょでございます。
拙者の沢登りへの扉を開いてくれたのは相方だが、十勝へ引っ越してからは一緒に行く沢友達も居らず、遡行は拙者との「白水川」以来となるようだ。
この日の為に新しい沢靴も新調した相方だが、殆ど山菜とキノコしかやってないので、シーズン始めという事もあり、体力的に不安があるという事でユルユルな沢を選んだ。
ま、拙者も先週の「手稲山天幕泊山行」如きで、筋肉痛になったりしてるので、似たり寄ったりナノだ。
当初は日高山系の沢を目指していたが、谷が深い日高は未だ谷筋は雪渓に埋まっているという事ナノで、大雪山系のゆるそうな沢を地形図から探して貰った。
トムラウシ温泉へ向かう…道道718号忠別清水線を東大雪ダムを少し過ぎたあたり「曙橋」から、左手の林道「シートカチ支線林道」へ入る。
林道は良く踏まれているが、5km程入ったトコロで右手の枝沢合流点で幅5mぐらいで崩壊している。
道路下に埋設した導管ごと決壊していて、夜間や早朝や霧で視界の悪い日は気づかない可能性もある。
相方の情報に因れば、この先に北電の取水ダムや、開発局の雨量計測所があるようで、近いうちに補修されるだろう。
仕方なく、崩壊地点手前に車をデポして、徒歩で林道を歩き入渓地点の「礼咲別橋」まで行く事にする。
相方が地形図でテキトーに探し出した沢ナノで、ネットを探しても遡行記録の類いは見つからなかった。
ただ、地形図を見る限りでは、上流部の二股から先は谷筋が狭まり、傾斜もあるので、小滝やゴルジュがあるかも知れない。
一応、「ポン十勝川右股」には滝表記もあり、何かしらの見所はある筈だ。
3本ある支流のどれもが、林道に突き当たるので、下りは林道が使える筈ナノで安心だ。
林道を暫く進むと左手に北電の取水ダムが現れた。
こんな山奥に、よくもこんな施設を作ったもんだ。
おかげで、アプローチ林道が使えるのだが、人間の開発は際限が無いし、節操も無い。
林道自体は、嘗ての伐採用作業道で、深山の割に巨木は少ない。あらかたの蝦夷松は根こそぎ伐採されたようだ。
取水ダムを過ぎると、川に掛かるワイヤーにゴンドラが取り付けられていた。
どうやら、対岸に作った雨量計測所へ渡る為のようだ。
しつこいぐらいに「立入禁止」の看板が貼ってあるが、ここまで言われると…無性に乗りたくなってしまう。
しかし、目の前の川は雪溶け増水で…大迫半端ないっ。
いや、この場合…「大迫」は要らないか?
ぐっと我慢して、入渓地点に向かう。
すると、その先で林道が20m程突然消えていた。
ちょうど川の湾曲部で、遠心力が掛かった流れに削り取られたのだ。
河床まで20mぐらいの高さがあり、ゾワゾワする。
刹那、昨年の大雪山縦走の下山の「ユニ石狩林道」を思い出す。
一応、恐らくは…釣り人が作っただろう巻き道が作られていて、トラロープも張ってあった。
1時間少し歩いて、入渓地点の「礼咲別橋」に到着。
橋の上から流れを観察する。
支流だが、結構な量の雪代が入っていて、ざっと見た感じ…4割増しで増量キャンペーン中らしい。
とりあえず、入渓地点にピンクテープの類いは見つからず、安心する。
橋のたもとから、いざ入渓。
先ずは、水流の中に入って水温を確かめてみる。
ネオプレーンのソックスと脛当てを着けているが、なかなかに痺れる冷たさだ。
流石、十勝山系に源を発する渓だ。
雪代増水しているから、流石の拙者もなるべく水流を避けて遡行する。
川べりの藪を掻き分け、時折…渡渉し、のんびり進む。
暫く進むと、右岸に居る相方が手をバタバタさせて、何か訴えている。
雪代増水の沢音が騒がしく、身振り手振りで情報を伝達しあう。
つまり、ジェスチャー・ゲームだな。
相方は、しきりに「前にならえ」のように、両手を揃えて振っている。
恐らく…「ダチョウ倶楽部」の「ヤー」の物真似をしているのだろう(違うっ)。
ハイハイ、分かってるって。「此処に林道跡があるョ」って言ってんでしょ?
入渓地点の橋から右岸に沿って、林道っぽい幅員があるのは知っている。
ただ、藪漕ぎすると暑いから、ワザと流れに沿って歩いてるんだよ。
とりあえず、林道跡の様子を見たかったから、右岸に渡渉して相方の側に行ってみる。
林道跡には、微かな踏み跡が残っていた。
鹿道だろうか?
そう言えば、先程…右岸の斜面上部から鹿の鳴き声(警戒音)も聞こえたし、渓の中洲から小鹿が飛び出すのに出くわしたばかりだ。
「ポン十勝川」の見所があるだろう核心部は、地形図を見る限り…上流の二股あたりから始まりそうナノで、時間と労力を節約する為に、林道跡を辿ってみよう。
1時間程歩いたトコロで、休憩する。
今のところ、渓の中には人間の痕跡は見当たらなかった。
遡行記録も見当たらなかったし、もしかしたら…何の見所も無い「ブタ沢」(※沢ヤの言う…つまらない沢の事)かも知れない。
いや、実は隠れた名渓という可能性もある。
遡行記録も無いから、ナビゲーションは地形図頼りだ。滝やゴルジュがあったら、ルーファイ(※ルート・ファインディング)技術が試される。
ただ、そろそろ…小滝か滑(ナメ※一枚岩の上に水流のある場所)か、イベントが欲しくなってきているのは確かだ。
休憩後、最初の二股に辿り着き、水量の多い右股に進む。
なかなか素敵なテン場と、キノコを発見してジェスチャーで相方に伝えたが、奴はスルッと通過してしまった。
両手でキノコの形を伝えた積もりだが、故西城秀樹を偲んで「YMCAポーズ」と見間違えたのかも知れない(似てないっ)。
遡行していると、不意に硫黄臭を感じる事が何度かあった。
もしかしたら…隠された野湯が何処かにあるかも知れない。
下界では30℃の予報が出ていたが、渓の中は14℃程しか無い。
ずっと、川上から下降流の風が吹いていて、川霧が川面を流れ、火照ったカラダを冷やしてくれる。
すると、唐突に…滑が現れた。
スラブ(一枚岩)の上をサラサラ…と言いたいが、結構な大迫半端ない(しつこい)水量があり気を抜くと、足元を掬われる勢いがある。
水流が浸食した岩溝に流れ込む水量も、殺意を感じる凄みがあり、いつもなら…「ちょっと、泳いでみるかな」と思うような場所も、尻込みしてしまう。
滑の上を川霧が流れ、幻想的な景観に暫し息を呑む。
滑は途切れる事無く、上流に続いている。
200m以上も滑地帯は続き、我が沢登り人生の最長記録を更新した。
谷が狭まり、両側の斜面が傾斜を増し始めると、その上部から幾筋もの滝が渓に注ぎ込んで、まるで桃源郷のような雰囲気を醸し出した。
遡行を中断し暫し眺める。
十勝岳周辺部に積もった雪が溶け、地面に吸い込まれ伏流した後に、浸食崖の上部に染み出しているのだ。
そろそろ次の二股が現れる筈だと思っていたら、右手から枝沢が合流する地点に到着した。
地形図に因れば、右手の沢には滝表記があり、谷も狭まり…いよいよ核心部だと思われた。
左股の水量は多いが、右股よりは傾斜もユルく谷も狭く無い。
果たして、右股の滝はどれぐらいの規模なのだろう。
直登が可能な滑滝なら良いが、直瀑なら高巻きが必要かも知れない。
地形図を読むと、右手の尾根の上には下山に使う積もりの林道も通っていて、いざという時は滝を迂回して直接林道に逃げる事も可能だ。
よし、せっかくだから、ここは右股の滝を見に行ってみよう。
直登も高巻きも不可能なら、此処まで戻ってきて、左股に進めばいい。
右股の支流に入ると、流れは半分以下になり、渓は倒木が多く遡行ペースは半減した。
傾斜が増し、ギャップも増えて行く。
しかし、なかなか…滝が現れない。
もう、そろそろ現れても良い頃なのだが…
なんだか…おかしい。
もしかしたら、ナビゲーションを間違ったかも知れない。
さっきの二股は、上流部のもう一つの二股で、滝のある枝沢への二股を見逃したのかも知れない。
訝しんでいると、だんだん傾斜がユルくなり、水流が痩せて、遂に涸れ沢になってしまった。
「どう見ても、滝が現れる雰囲気じゃ無いよね?入る枝沢を間違ったかも知れない」
相方に問うも、奴は一つ目の二股すら気付かなかったと言う(オイオイ)。
見上げた尾根筋は直ぐ近くにあり、涸れ沢に伏流していた細い流れは戻って来たが、渓の傾斜は殆ど無くなった。
そして、前方に…遡行最終地点に決めていた林道をくぐる導管が見えた。
導管の上には、林道が走っている筈だ。
本来なら、林道合流点には「岩見橋」という橋がある筈だった。
これで、遡行した枝沢が間違っていた事が判明した。
やはり、二つ目の二股を見逃したノダ。
しかし、幾ら記憶を辿っても、それらしい枝沢を見た覚えが無かった。
渓の両側から流れ落ちる滝か、滑に見とれて見落としたと思われた。
うーん、拙者も…まだまだだなぁ。
渓だけじゃ無く、尾根筋の延び方なんかも、ちゃんと観察しなきゃダメだなぁ。
導管を向こう側に潜り抜けて、林道に乗った。
夏空に向かって、白っぽい林道が続いていた。
次は、もう少し水量が減って、気温が上がった時に来たいものだ。
魚影は濃いし、本流では鱒(レインボー)の尺モノも釣れそうだ。
勿論、今回見逃した右股の滝も見てみたい。
下山後、帰り道に秘湯「オソウシ温泉」に寄って行く。
林道を7km進んで、山奥の一軒家(宿)「鹿の湯」に到着。
うーん、21世紀の日本に未だこんな昭和な温泉宿が残っているなんて、信じられないぐらいレトロ感が大迫半端ない(だから、しつこいっ)。
玄関先にデカい秋田犬が寝そべっていて、犬嫌いなら温泉を諦めるかも知れないが、生憎…拙者はワンコが大好きだ。
しかも、和犬には目が無い。
但し、和犬(主に狩猟犬)は愛想が無いのが玉に瑕だ。
ま、その分…飼い主には忠実なのだが。
流石の秘湯だけあって、温泉客は我々の他に居らず、男湯と女湯で声を掛け合って露天にある混浴に向かうが、水温が20℃そこそこの源泉だったので、浸かる根性は無く、38℃ぐらいの男女別の露天に浸かった。
泉質は高アルカリ性の硫黄泉で、トロトロの湯で素晴らしかった。
雰囲気といい泉質といい、拙者の中の、「温泉ベスト3」にランクインするぐらいの素敵な温泉だった。
おわり。
【写真1】何段にもなった滑が延々と続く
【写真2】川面を川霧が漂う
【写真3】滑地帯を往く








