初インタビュー | 基礎研究者のブログ

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医学・生物学系の研究者のブログです。2012年9月からアメリカのニューヨークで仕事をしています。近況報告がてら、仕事、育児について書いています。

ヨーロッパは採用プロセスが早いらしく、11月にインタビューに呼ばれました(米国では1−3月がメインだそうです)。米国では珍しいシンポジウム形式で、僕の他に6人のキャンディデートが同時に呼ばれていました。全部で3日間。2日間の午前中がシンポジウム、ファカルティとの面接が続き、最後に学生やポスドクの輪に入って議論して、チョークトークという流れでした。朝から晩まで続きます。時差ぼけのある中でのハードスケジュールは身に堪えました。ただ、やはりインタビューは双方にとってメリットが大きいですね。研究環境の良いところ、悪いところ。仲良くなれそうな人、どうしてもアカンそうな人、学生の質など。いろいろ分かりました。

 

 

<シンポジウム形式のインタビュー>

最初は他のキャンディデートに会うのがちょっと嫌だったのですが、気持ちを切り替えて、あえて積極的にコミュニケーションをとるように心がけることにしました。理由は2つです。一つは、セレクション過程は相対評価でなくて絶対評価だから。ただ自分のベストを尽くし、それが研究機関にとってのベネティットとマッチすれば選ばれるというだけの話なのです。最悪、誰も選ばれない可能性だってあるんですから。もう一つは、ここに呼ばれるということは、彼らはいずれどこかで独立し、コラボレーターになる可能性のある人たちだから。そうでなくても、同じコミュニティで何らかの運営に共に携わることになる可能性もあるのです(学会運営とか)。そんな人たちと争ってもメリットはありません。面白いことに、彼らが優秀であればあるほど、良い関係を築きやすかったと思います。変にディフェンシブにならないというか(表面上の振る舞いであるかもしれませんけど、思いっきりオフェンシブな人とはそもそも付き合えないですよね)。結果として、キャンディデート同士でいろんな情報交換をしたり、朝ごはん中の会話で緊張をほぐしたり、シンポジウム形式のインタビューの利点を最大限活かすことができたと思います。不思議なもので、帰る頃にはお互いに寂しく思うくらいでした。彼らと学会などで会うのが楽しみです。

 

<面接>

時間がなくて、ファカルティの仕事を全てチェックすることができませんでした。これは大失敗だと思います。幸いなことに、今回のケースで言えば大きな問題にはなりませんでした。でも、他のケースではクリティカルになった可能性もあります。次回までにはそこをきちんとチェックしてから臨もうと思います。

 

<セミナー>

これはまぁ、今更説明要りませんよね。ただ、緊張しましたよ。そして、山ほど練習しました。疲れます。最後に2-3枚の将来の方向性を示すスライドを入れるのが良いと言われています。でも、それは先方に確認しておいた方が良いと思います。僕は今回は、「入れるな」と直前に指定されました。

 

<チョークトーク>

とても厳しかったです。それまで親切でニコニコしていたファカルティやサーチコミッティメンバーの表情が、一気にプロの顔に変わる瞬間です。そのギャップにびっくりして、とても緊張してしまいました。最初の1分間にティーチング、後の5分間を研究計画、後の2分間を雇用計画とプロジェクトへの割り当て方針、共同研究による促進計画などについて話し、あとは質疑応答という流れで話しました。あとは自由討論。キーポイントは、ティーチングを先に話す事だそうです。途中で質問で遮られた場合に、ティーチングの事を話し忘れるからだとか。僕が個人的に気を付けたのは、文章を書かない事。キーワードと絵しか使いませんでした。テンポが悪くなるからです。感想としては、なんとか切り抜けたという感じです。質問を捉え間違えたりして、自分としては最悪でした。ただ、後から聞くと、それほど印象は悪くなかったそうです。なりより、僕の研究計画を気に入ってくれた様子。英語は後ほど個人的に「要大改善だね」と伝え聞きましたけどね。ははは。。

 

<学生、ポスドクとのインタビュー>

総勢10名に囲まれて会話します。最初は上から目線な態度にちょっとムッとしました。欧米の学生たちはトップ大学にいるというエリート意識が高いですからね。ただ、対等な目線で正直に話していると、相手も態度を軟化させて和やかな会になってくれました(相手も少し緊張してたのかもしれませんね)。ここで失敗したキャンディデートは炎上したみたいです(サンドバック的な)。相手はしっかり準備してきていて、結構難しい質問を投げかけてきます。研究計画からラボマネジメントに至ります。僕の感じたポイントは以下の通りです:

1)研究計画は詳細に立ち入らない。

大事なのは、教育内容、研究の大きな方向性と、プロジェクトの数、それらのリスク度合いです。学生、ポスドクがハッピーになれるラボを作れるかどうか、面白い教育を提供してくれるかどうかを知りたいようです。後、細かい研究の議論をしても意味ありません。そこは彼らが評価すべきものではないはずです(そもそも、限られた時間内では議論も難しいかと)。

2)難しい質問は、オープンディスカッションに持って行く

本人たちも難しいと思う問題に対する僕の考え方を問うものが多かったと思います。具体的には、良い学生・ポスドクの選び方、人間関係のトラブルへの対応等です(良い学生の定義ってなんですかね)。答えのないような質問です。そこは無理に格好つけても仕方ないので、ある程度自分の考え方を示した上で、明確な答えはないという共通理解を再認識する方向へ持って行く以外に思い浮かびませんでした。それができたら、ラボ選びだって大成功間違いなし。でも、それが不可能なのはみんな知ってるはずですよね。もちろん、自分の中である程度の枠組みを示さないといけないとは思いますけど。

 

全体的に、とても雰囲気の良いインタビューでした。それは珍しいと聞いています。ヨーロッパだからですかね。なんと同じ分子を研究している人がサーチコミッティにいて、観光用に空けていた翌日も呼び出されてしまいました(無念、、)。これは良いサインかもしれないけど、関係ないかもしれません。悪くはないんだと思います。また、これは将来のコラボレーションになる可能性もあって(実際、そういう打診に近いものをチラッチラッと示されました)、これのために僕が呼ばれたんじゃないかと勘ぐったくらいです。でもこれも含めて、ジョブ探しって複数の要素が絡んで決まるものだと実感しました。セミナーだけの印象では、一番を決めるのは無理やなと感じました。よく言われている通り、研究所とのマッチングが本当に大切なのでしょうね。

 

友達の話を聞く限り、なんとなくアメリカのインタビューはもっとストレートで厳しいという印象を持っています。怖いですね。。