旧門司駅遺構取り壊し | 上条武術研究所

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プロレス・サンボ・合気道を経験。
月刊秘伝読者。
○現在の活動
・自宅ジムを開放(不定期)
・武術系、介護系の同人誌制作

武術探訪で地元の史跡などを巡っている私にとって、注目していた議案。

結果は賛成可決。端的に言えば、遺構取り壊し決定。
正確には、複合公共施設の整備費用を盛り込んだ補正予算案の可決。

皆様はどう思いますか?
経緯を説明すると、元々複合公共施設の建設が進められていました。
政令指定都市の中では最高の高齢化率である北九州市。早急なコンパクトシティ化が求められています。
行政の手続きができる場所などは公共交通機関に隣接した場所にまとまっているほうが利便性は高くなります。
ここの反論として、複合公共施設よりは校区単位くらいにある市民センターなどに出張所のような機能を持たせたほうが高齢となった住民には便利がよいみたいな意見もありますが、そんなシステムを構築する手間もそうですし、維持するだけの人がいないのが現状。
ですので、複合公共施設の建設というのは、仮にゼネコンとの癒着的なものがあったとしても、私は間違いではないと思っています。黒崎駅のヤツとか羨ましいなと思います。

しかしながら…

今回はその建設工事中に、明治時代の旧門司駅の遺構が発見されたためにどうしようか?という話になっているんです。
こんなドラマになるような稀有な話、北九州市民として面白くも感じていました。

で、結果としては取り壊し決定…。

私の感想ですが…
これはメディアの報道の仕方なのか、議会の周知の仕方なのか、議会の性質上の問題なのか分かりませんが、取り壊すか反対(保存)かの二択で報道されているところが良くないのではないかと思いました。

報道では取り壊しと言ってますが、せっかくの遺構を完全に取り壊すわけないです。移築です。
また、保存と言っても、古今東西どんな史跡でも完全保存なんてものは、よっぽどの国宝レベルの逸品でないとやらないでしょう。

程度の差はあれど、遺構の一部をその場所か、もしくは何処かに移転させて保存する形に落ち着くのではないかと思います。

となると、旧門司駅遺構ってどのくらいの価値があるのでしょうか?という話になります。
これは人それぞれ感じ方が違うと思います。国指定レベルなんていう報道もされていますが、私は観光資源としては、あまりキャッチーではない素材ではないかなと思います。
分かる人には旧門司駅遺構の歴史的価値を分かるのでしょうが、これが爆発的な観光の目玉になるわけではないです。
歴史的価値があるとして、遺構を残すとするならば、市民にその価値を分かりやすく伝える施設なりなんなりという取り組みも同時に必要です。
多くの人にとっては、どっちでもいいと感じているのではないでしょうか。
旧門司駅遺構をモチーフにした【じーもくんの先祖】みたいなゆるキャラでも作ります?

閑話休題。

『複合施設建設は継続するも、その場所に一部は保存。さらに一部を移転させ、門司港駅の敷地内か鉄道記念館にて保存。』くらいが妥当なのではないかと思います。

あと、複合施設を他の場所に建設すればよいという意見もあります。
しかし、一度すでに進めていた計画を途中で止めたり、場所を変えるなどの大きな方向転換をしたりすれば、様々な人間が被害を被ることになるはずで、そのフォローも大変です。
『遺構取り壊し』と言ってしまうと言葉が強烈ですが、このまま建設を進めるほうが方々で波風が立たない穏便な判断でしょう。
組織や社会の中の一個人の立場として考えても、この流れに逆う勇気は私だったらないです。

なので、私はこの決議自体には賛成寄りです。

ただね、考えて欲しいのです。

この『旧門司駅遺構取り壊し事件』を100年後とかに郷土史を伝える紙芝居などにするとします。
この物語において、武内市長は拝金主義の悪役になる。人口減少問題や高齢化問題への解決策なんて部分は省略され、『稼げる街』というテーマがばっちしヒール像を作り上げてくれます。これは超不名誉なことですよ。

取り壊しでも保存でも、実質は同じようなところに落ち着くと思いますので、市長は『どのように保存するか?』に重きを置いた行動や発言に終始していたほうがよかったのでは?と私は思います。
嘘でも郷土愛をアピールするべきでした。

私も含めて、郷土史を楽しんでいる市民はおります。どのように保存するかが明確に示されていない取り壊し決定の報道には、落胆の感情しか沸きません。

そんなことを思いました。