凄い!バーティツの本! | 上条武術研究所

上条武術研究所

プロレス・サンボ・合気道を経験。
月刊秘伝読者。
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・自宅ジムを開放(不定期)
・武術系、介護系の同人誌制作

先日、書店でこんな本を発見。

『シャーロック・ホームズの護身術 バリツ 英国紳士がたしなむ幻の武術』

バーティツの技術書。

(書籍がバリツな理由は後述します…)


いや、こんなマニアックな本、誰が買うんだー!

武術好きか、シャーロック・ホームズファンくらいなんじゃないかと思ってましたが、本のジャンルが【イギリス文学】とあるので、その辺りの愛好家さんも買われるのかもしれません。



さて、バーティツとはイギリスで1899年に生まれた護身術です。創始者はバートン・ライト。

フランスのサバットと日本の古流柔術と掛け合わせた技術体系を持つと言われています。バートン・ライトが日本滞在中に柔術と柔道も学んでいたようです。

イギリスの体術と言えば、ボクシングやレスリングが有名ですが、単なるボクシング&レスリングではないところがポイント。

サバットは靴を着用しているし、ラカンなる杖術もある。日本の古流柔術は衣服を着用しており、平時の武器術は言わずもがな。

バーティツとは護身術なのです。【バートンの柔術】からの造語らしい。


補足ですが、この本ではボクシングやステッキ術も組み込まれていると書かれていました。



バーティツ誕生の背景としては、1900年頃のイギリスでは貧困層の拡大と治安の悪化が問題になっていました。また、日本の明治維新により、文化的な面では日本ブームが起きてことが挙げられるます。

そのような歴史的な背景があり、誕生しています。


このバーティツは、そこまで普及することはありませんでしたが、とあることがきっかけで脚光を浴びることになります。

後年になり、シャーロック・ホームズファン界隈でバーティツが劇話中に登場したホームズが習得している日本の武術【バリツ】ではないかという考察がされたのです。

このことから、武術マニアの間でも名の知れた武術となり、武術誌でも【バーティツがシャーロックホームズのバリツか否か】のような特集は幾度か組まれたことはありました。


しかしながら、今回のこの『バリツ』のように、技術体系の詳細をここまで記した書籍は初だと思います。



読んでみての感想。


合気道のような足さばきだなと思いました。

やる前は、ステッキ術だから棒をどう振るとかが技術の主たるところなのかな~と想像してましたが、それは違う。

棒自体は突くとか叩くとかで、メインとなるのは足さばきだ。多分。

これは入身で、
こっちは転換なのですよ。
日本の古流柔術を英国紳士版にしたような感じだ。


あと、初耳だったことは、巷によくある護身術と異なり【逃げるため】という選択肢がないこと。ここに英国紳士のプライドが伺えます。また、相手を倒した後に完膚なきまでに叩きのめすという考えもないとのこと。

バーティツの思想みたいなところまで、しっかりと触れている本が発売されたの初じゃないでしょうか。


「よくぞ、出版してくれました!」と言いたいくらいの、本当に貴重な本です。



あと、こういう教本が出ると、武術って自宅で幾らでも練習できるよね~とも思ったりします。自己満足なんですけどね。



最後に、帯にある『大槻ケンヂさん大推薦』の文字。

大槻ケンヂさんと言えば、昔、フジテレビの格闘SRS内で『格闘ビデオ道 』なるコーナーがあり、そこでマニアックな古武術のビデオをよく紹介されていました。当時の私はそこまで古流好きではありませんでしたが、格闘技よりもそちらのコーナーのほうが好きでしたね。

古流武術にはその流派の技術を現実のものとして学ぶというガチ勢としての関わり方もあるのですが、大槻ケンヂさんのように、ジャンル自体が持つ浪漫や如何わしさを、昔の『水曜スペシャル』みたいな感じで楽しむという方法もあると思います。
まあ、単なるお堅い技術書に留まってないところも注目です!