今こそ、今泉敏戦を見直そう。 | 上条武術研究所

上条武術研究所

プロレス・サンボ・合気道を経験。
月刊秘伝読者。
○現在の活動
・自宅ジムを開放(不定期)
・武術系、介護系の同人誌制作

少し前の話になりますが、鬼神ターザン後藤選手が59歳の若さで亡くなりました。

晩年は、再婚された奥様のラーメン屋さんで働いていたようです。

私は、ターザン後藤一派設立から、最終的に小さな格闘技専用のアリーナを設立した辺りの活動が好きでした。大舞台を経験した一流が、地道な活動をしている姿は憧れますね。



ターザン後藤選手の現役生活の中で、私が印象に残っている試合や場面と言えば…、


まずは帰ってきたぞ!に至るまでのエピソード。海外遠征して、ジャイアント馬場に海外で引退したものだと思われていたのは悲惨すぎる。でも、それがあっての「帰ってきたぞ!」なんですよ。


UFC参戦みたいなアングルも組まれたIWAのダン・スバーン戦。今考えれば…??ですけどね、当時は通用するんじゃないか?という説得力はありました。


メモリアル力道山2。猪木VSタッキーが組まれていたので、会場の半分くらいがジャニーズファンだったんです。そのジャニーズファンに風貌からリアルに気持ち悪がられて、結果的にその興行の中で最も印象を残したんです。悲鳴が凄かった。そんなレスラーとしての凄さ。


ナイトメアだと思うんですが、乱闘中にリアルに警察に通報され、「お前か?」と若手選手に全ての罪を擦り付けようとするyoutubeに上がってる動画のお茶目さ。


とか、色々とありますが、ここではこの試合をフューチャーしたい。



ターザン後藤VS今泉敏(柔道)


初期FMWの異種格闘技トーナメントにて、今泉敏なる柔道家相手に戦っている試合です。


こちらが、今泉敏選手。

この方ですが、実はサンボ浅子の高校時代の柔道部の後輩で、この時、すでにただのラーメン屋の店長だったらしいのですが、頼まれて出場しただけと言われています。奇しくも、晩年のターザン後藤さんと同じ職業ですね。

インターハイ出場・国体出場くらいの経歴で、何とかチャンピオンが並ぶ格闘技のトーナメントに参戦していました。

でも、実は充分に凄い経歴なんですよね。柔道のインターハイ・国体出場って。マジで。


で、この試合というのは、プロレスの立ち振舞い方を知らない今泉敏選手が、ターザン後藤にボコボコにされるだけの試合なんです。

でも、たまに出る投げ技がちゃんとした鋭い投げで、もっとこの人の試合を見たかったなと思っています。

多分、この1試合しかしてないと思います。



ちょっと技術を見ていきましょう。

主武器は、左の背負いなんですよね。これが普通に鋭いんですよ。

横四方。
このシーンは会場のヤジが凄くて…。

「押さえ込み一本!」→「有効!」→「効果!」→「サンボ見せろ!」
と、最初は、異種格闘技戦で無意味な押さえ込みをする今泉選手に向けたヤジが飛ぶのですが…、

「サンボキッド!」→「帰ってきたぞ!」
と、サンボヤジから、そのワードから連想された関係ないヤジが矢継ぎに飛ぶので、まあまあ面白いです。

でも、初期FMWって、こんな酷い客の前で試合をしていたんですね。
当時の選手に対して頭が下がる思いです。これがあったから、今のインディプロレスがあるんだなと感じました。

あと、やはりプロレスに対応できない素人(仮にどんなに柔道が強くても、ショーレスリング的には素人となる)だと、このように攻めあぐねるんですよね。
これは気持ちがわかります。


最後にターザン後藤の凄い技術。
払い腰を受け止めて、

軸足を刈る投げ。

柔道サンボをやっていた自分としては、払い腰なんで受け止められる余裕があるなら、単に引き手を切ってば、軽く押せば相手を前に倒せるんですよ。

でも、プロレスですからね、それではおそらくダメなんです。【前に倒す】という行為を明確に見せないといけないんですよ。
軸足を刈ることで、一つの技として見せれて、試合の主導権が完全にターザン後藤に移る。

私はこのシーンをそう読み取りました。
プロレスラーの凄さはここだなと。


今回は以上です。



次に機会があれば語りたいこと。

私、大日本プロレス時代に、ターザン後藤一派の方々の練習を見たことがあるんです。
その時にターザン後藤さんが若手に教えていたプロレス技術を覚えてますので、どこかのタイミングでそれを書いてみたいと思います。
当時、習っていたロックアップやロープワークとは技術が違っていて、私は盗み見をしていただけですが、昔の全日本系のレスリングって、こんな感じなんだろうなと非常に勉強になりました。