Halloween Kills(2021 アメリカ)

監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン

脚本:デヴィッド・ゴードン・グリーン、ダニー・マクブライド、スコット・ティームズ

原作:ジョン・カーペンター、デブラ・ヒル

製作:ジェイソン・ブラム、ビル・ブロック

製作総指揮:ジョン・カーペンター、ジェイミー・リー・カーティス、デヴィッド・ゴードン・グリーン

撮影:マイケル・シモンズ

音楽:ジョン・カーペンター、コーディ・カーペンター、ダニエル・デイヴィス

出演:ジェイミー・リー・カーティス、ジュディ・グリア、アンディ・マティチャック、ウィル・パットン、トーマス・マン、アンソニー・マイケル・ホール、ニック・キャッスル

①過去作観てることが前提!

既にあっちこっちで何回も書いてますが、「ハロウィン KILLS」は「ハロウィン」(1978)「ハロウィン」(2018)に続く3本目の続編です。

前作の直後から始まるので、前作を観ていないとかなり分かりにくいと思います。

また、前作は1978年版「ハロウィン」の40年後を描く続編なので、できれば1978年版も観ている方が分かり良いと思います。

 

興行的なことを考えて…なのだと思いますが、続編であることは、あまり事前には宣伝されない傾向があります。

しかし本作に関しては、予備知識なしに観ちゃうとかなり戸惑うんじゃないのかな。

本当なら、テレビの地上波で1978年版と2018年版を放送してくれたりすると完璧だと思うのですけどね。

せめて2018年版だけでも。深夜枠でもいいので。

今のご時世じゃ無理だろうなあ…。

 

正直、本作はかなりマニア向けの作品だと思います。

1978年版と2018年版を両方観ていることは当然の前提として。

1978年版と同じタイトルバックとか、カーペンター・フォントとか音楽とか、粗い画質とか多数の同窓会的ゲストキャラクターとかにニヤリとできる人たち向け。

その点では、2018年版より更にマニア向け度は深まってる。

まあ、僕はマニアの方なので、十分に楽しんだのですが。

人に勧める上では、ちょっと迷ってしまう作品ではありますね。

 

②40年ぶりの同窓会開催!

1978年10月31日、警官のフランク・ホーキンス(トーマス・マン)は、マイヤース家にマイク・マイヤーズを追い詰めますが、誤射で同僚を死なせてしまいます。

2018年10月31日、ベテラン警官のフランク・ホーキンス(ウィル・パットン)が血まみれで倒れているのが発見されます。

酒場では、トミー(アンソニー・マイケル・ホール)リンジー(カイル・リチャーズ)ら1978年の事件の関係者らが集って、マイケル・マイヤーズの恐怖について語り合っていました。

その頃、ローリー・ストロード(ジェイミー・リー・カーティス)の家は炎上していました。40年ぶりに襲って来たマイケルとの死闘の末、ローリーと娘のカレン(ジュディ・グリア)、孫娘のアリソン(アンディ・マティチャック)はマイケルを家に閉じ込め火をつけたのでした。しかし、消防隊がローリーの家に向かっていました…。

 

…と、導入部のあらすじを書くだけで一苦労

1978年の事件についてと2018年の事件について、ざっと説明しないといけないので、やけに忙しい導入部になってます。

 

1978年のパートは、「ハロウィン」(1978)直後

ローリーを襲って、間一髪でルーミス医師(ドナルド・サザーランド)に撃たれたマイケルが二階から落ちて、庭から姿を消したラストシーンのその後を描くものになっています。

というのは、1978年版ではマイケルが姿を消したところで終わっているのに、2018年版ではマイケルは40年間精神病院に収容されていたことになっていた。

2以降をなかったことにして第1作と直接つなげた結果、矛盾が生じていたんですね。

今回のこの導入部は、その矛盾を解消するものと言えます。ローリーの家から逃げ出したマイケルが追い詰められ、逮捕されるまでを描いているわけです。

 

フランク・ホーキンスという警官は、1978年にマイケルを逮捕する場に居合わせた男という設定で2018年版に登場していました。

過去作では、1978年版でもその次の「ハロウィンII」でもマイケルは逮捕されていないので、彼は登場していません。

 

2018年のホーキンスが負傷して倒れているのは、2018年版での出来事を受けたものです。

ややこしいことに、ホーキンスを刺したのはマイケルではなく、マイケルの主治医サルテイン医師です。

ていうか僕は2018年版観てるけど、見返してはないのでこの辺すっかり忘れてましたね。

 

酒場のシーンには、1978年版の関係者が集合しています。ていうか、何しろ40年も経ってるので、見ただけでは誰が誰やら分からないのですが。

 

トミーは、1978年版でローリーがベビーシッターをしていた少年です。役者は別の人です。

 

リンジーはトミーの友達で、1978年版で殺されたアニーがベビーシッターしていた少女です。

リンジーは、オリジナルで演じていたカイル・リチャーズがそのまま演じています。

当時9歳、現在52歳だからもう面影なんて全然ないわけですが。すごいですね。

 

マリオン・チェンバースは、1978年版に登場したルーミス医師の助手の看護婦です。

彼女もリンジー同様、本人ナンシー・スティーヴンスの再演です。

ナンシー・スティーヴンスは、「ハロウィンII」(1981)、「ハロウィンH20」(1998)でもマリオンを演じています。

 

酒場にいるもう1人、キャメロンの父であるロニー・エラム(ロバート・ロングストリート)は、1978年版でトミーをいじめていた子供だそうです。役者は別の人。

と言われても…って感じですが。

 

更に、後で病院の警備員として登場するリー・ブラケットは1978年版に登場していた警官で、同じくチャールズ・サイファースが演じています。

 

…という具合で、まさに同窓会

と言っても何しろ40年なんでね。みんな説明されないと誰だか分からないわけで。

というかホラー映画の脇役なんて印象に残ってないよ!というのが正直なところです。

③舞台を街に広げた群像劇

「ハロウィン KILLS」は、前作の直後からスタートして、そのまま連続した時間として描かれていきます。

全体が、前作と同じ一晩の出来事。非常にミニマムな話なんですね。

 

その分、話は横へ横へと広がっていきます。

オリジナルや前作が限定された家の中での攻防になっていたのに対して、本作はハドンフィールドの街全域がマイケルの活動範囲になっています。

それに対する側も、主人公が1人に集約されない。大勢の人々がグループで行動し、街に広がってマイケルを狩りに出かけていく。

街全体を舞台にした、群像劇の様相を呈してきます。

 

密室の限定状況で展開した前作からの続きで、広く、大勢へと拡散していく。続編としては、理にかなった展開と言えます。

いろんな人がいろんな場所でマイケルに殺される面白みは広がっています。

その分、直線的な牽引力は薄れていて、やや散漫になっているとも言えます。

 

ローリーと同様、マイケルも満身創痍のはずですが、まだまだ元気。

今回は群像劇になった結果、モブな感じの生贄がたくさんいるのでね。タフで豪快な殺しっぷりを見せてくれます。

炎の中から現れて、消火に来た消防士たちを皆殺しにするシーンが白眉でした。

夜の公園でマリオンやリンジーの同窓会組を追い詰めていくのも落とし前って感じでイイですね。

④恐怖に駆られた人々の暴走…

中盤、群像劇が暴走を始めて、病院での集団ヒステリーの暴動が描かれていきます。

トニーがみんなを扇動して「マイケルを殺そう!」と煽っていたところ、マイケルと同時に脱走したらしい精神病患者が病院に現れて、みんながマイケルだと思い込み、暴徒と化して追い詰めていく…という展開。

 

これ、マイケルとまったく関係のない展開なのでね。散漫さが極みに達しちゃう感があります。

集団ヒステリーの恐怖というテーマも、あまりに手垢がつき過ぎていて。既視感、今更感がデカいですね。

 

恐怖によって分断や暴動が起こっていくのは、現代の世情を絡めたものかと思いますが。

どうも無理矢理感は否めないんですよね。マイケル・マイヤーズは現実的な脅威だし、それに警戒して対抗することは別に間違ってないし、病院でのケースは単なる稚拙な人違いでしかないので。

 

「ハロウィン」のストーリーと、ここでの古典的な教訓が上手く噛み合わない。

どうするのかなあ…と思っていたら、マイケルの方の物語も、何だか無理のある方向に向かっていくのでした。

⑤マイケル、晴れてブギーマンに…

オリジナルのハロウィンは、シンプルに「気狂いに刃物」の怖さを描いたものでした。

あくまでも人間なんだけど、正気を失っているので、一切の人間性がない

対話も通じず、仮面をかぶっているので表情さえも読み取れない。

だから、最後にはそれはもはや人間じゃない怪物…ブギーマンなのではないか?という次元に辿り着く。1978年版は、そういう地点で終わっていました。

 

オリジナルでは、ハロウィンの夜のドサクサで、油断した若者たちを殺していったわけですが。

続編となると、そうもいかない。警戒されるし、マイケルの側も殺しのスケールをアップさせていくことを求められるので。

なので続編が続けば続くほど、マイケルは人間離れした怪物と化し、殺しても死なない不死身の存在になっていくわけです。

 

2018年版は、1回リセットされたのでね。マイケルも1回人間に戻されたわけですが。

今回のように、街中の人々がマイケル1人を包囲して追い詰める話になってくると、もはや人間では対抗できない

本作ラストでは遂に堂々と、ローリーが「あいつは人間じゃない」と言い切ることになります。

 

ここで前段の暴徒のシーンを踏まえて、「あいつは暴力では殺せない」なんてことを言い出すのが、あれれ…という感じでしたね。

「ハロウィン」で、ここへ来て今さら暴力を否定されてもなあ…という場違い感。

 

今回のシリーズは、2018年版からの3部作構想ということになっていて、本作は「ハロウィン Ends」へと続くことが既に予告されています。

しかし、暴力では殺せないとなったら…愛で対抗するとか、そういうことになっちゃうんですかね。なんか嫌な予感がするなあ…。

 

ホラー映画のシリーズ化はどうしても、だんだんと無理が生じてきて、それが限界に達したところでリセット!なかったこと!ってなるんですが。

もう既に何回もそれを繰り返してる「ハロウィン」ですけどね。既に、その感じが濃厚になってる気がします。

 

でもまあ、今回は真打のローリー・ストロードがお休みだったので!

次回はローリー対マイケルの最後の戦いが、盛り上がってくれることを期待したいですね。それにしても、何回めだ!って感じですけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上は2018年版。

 

こちらは1978年版。