レポート試験 | 65歳の芸大生

65歳の芸大生

定年退職後、新しいことにチャレンジしたいと考えて、今まで縁がなかった芸術について学ぼうと思い、京都芸術大学通信教育部芸術教養学科に編入学しました。このブログが日々の学習内容の記録として活用しています。

テキストを通読し、近現代の芸術文化の展開において最も重要と考える芸術動向を一つ選び、その理由を説明しなさい。なお、課題の「芸術動向」とは、「ある程度まとまった方向性のある芸術の動き」と捉えてください。

 

キュビズムを観る視点について
 キュビズムは20世紀初頭に誕生した芸術様式で、パブロ・ピカソが描いた「アヴィニョンの娘たち」からスタートしたと言われている。 この芸術様式は、従来の絵画の三次元を二次元に表現する方法とは異なり、対象を一度分解して複数の視点から再構築することで新しい三次元表現を実現した。ジョルジュ・ブラックの「レスタックの家」がキューブの集まりに見えたことから「キュビズム」と名付けられた。(1)キュビズムの、物体や人物を幾何学的な形に分解して描くスタイルは、具体的には、物体や人物を直方体や三角錐、球体などの幾何学的な形に分解して描き、複数の角度から同時に見たような作品を作り出すことが特徴である。つまり、従来の絵画では一点透視法による絵の構造によって写実的に描かれていたが、キュビズムはこの本物らしさの追求を捨て、対象物を幾何学的に変化させて抽象的に表現している(2)。
  キュビズム以前には、印象派やポスト印象派などの前衛芸術運動があったが、これらの運動は、伝統的な視覚表現に挑戦し、新しい表現方法を模索しており、キュビズムが登場する土壌を形成した。また、キュビズムの創始者たちは、アフリカやオセアニアの芸術に深い関心を持っており、これらの文化の彫刻や工芸品からインスピレーションを受け、従来の西洋美術にはない形や構造を取り入れたとされる。(3)
 キュビズムの意義は、前述のとおり写実主義から抽象主義への転換であるが、これは、作り手だけではなく、鑑賞者にも大きな転換を求めることになった点である。キュビズム以前の絵画は、現実を忠実に再現しようとする傾向にあり、鑑賞者は作品を通じて作者が表現しようとした現実の景色や人物の姿を理解しようとする。また、透視法を用いて空間の深みを表現し、立体感を出すことが一般的で、鑑賞者はこの空間的な深みを感じ取り、絵画の世界に没入することができる。
 これに対してキュビズムの作品は、前述のとおり、対象を複数の視点から同時に描写し、物体を異なる角度から見た時の姿を一つの平面上で表現している。まず、これらの視点を理解し、作品を通して対象の全体像を捉えることが重要である。また、対象を幾何学的な形に分解しそれを再構築しているが、この過程を通して、対象の本質的な構造や形を捉えなければならなくなる。したがって作品を鑑賞する際は、どのようにして、作り手が対象の理解を試みているかを考える必要がある。キュビズムの作品は、高度に抽象化されているため、色や形の組み合わせ、構図のバランスなど、抽象的な要素から作品の意味を解釈することが求められるが、この講義を受講する前は、どうピカソの絵画を理解すべきか分からなかった。多角的な視点から作品を鑑賞し、理解する柔軟性が必要であると考えるが、すぐにできるものではない。今後多くのキュビズムの作品に触れることで理解を深めていきたい。

(1)https://art-ey.com/cubism 

(2)https://www.artpedia.asia/cubism/ 

(3)https://artnewsjapan.com/article/876