15章グローバル化するアート-地域・市場・国際展 | 65歳の芸大生

65歳の芸大生

定年退職後、新しいことにチャレンジしたいと考えて、今まで縁がなかった芸術について学ぼうと思い、京都芸術大学通信教育部芸術教養学科に編入学しました。このブログが日々の学習内容の記録として活用しています。

この章の要点

21世紀に入り、ますます加速するグローバル化のなかで、芸術を取り巻く環境は大きな変化に直面しています。アート・マーケットの拡大は作品の「商品」としての性格を強め、具体的なアクションに結び付いたアーティストたちの活動は、実際の政治や経済をはじめとする分野でしばしば大きな存在感を示しています。この章では、多様化を続ける今日の芸術表現に見られる、いくつかの顕著な傾向を紹介していくことにしましょう。 Movie1・・・ヤング・ブリティッシュ・アーティスト Movie2・・・日常性の詩学 Movie3・・・東アジア出身の作家たちの活躍 Movie4・・・「政治的芸術」の新たな姿 Movie5・・・新たな「自然」の表現へ向けて

 

20世紀末から21世紀初頭にかけてのアート・マーケットを牽引したのは、YBAsと呼ばれるイギリスの若手アーティストたちです。その代表格であるダミアン・ハーストは動物をホルマリン漬けにしたショッキングな作品で知られていますが、他方で、シトロエンの車を切断・溶接したガブリエル・オロスコのように、身の回りのものを用いてユーモラスな作品を発表したアーティストの活躍も見逃せません。また、自身の展覧会を食事や社交の場へと作り変えるリクリット・ティラヴァーニャ、国際展の来場者に貧富の差や国籍の違いについての問いを突きつけるサンティアゴ・シエラのように、それまでにない新たなタイプの政治的作品も生まれています。また、多様化とグローバル化の一途をたどるアート・マーケットの中で、ジェームズ・タレルやオラファー・エリアソンのように、「自然」に独自のまなざしを注ぐ作家の躍進もまた顕著になっています。