この章の要点
紀元前334年にアレクサンドロス大王が東方大遠征に出発した時期から、前31年にアクティウムの海戦においてプトレマイオス王朝エジプトがローマ帝国に敗れるまで、ギリシア文化が、東地中海全域から中近東にまで広範囲に波及した時期を、ヘレニズム時代といいます。本章では、この古代ギリシア史最後の約300年の美術と、イタリアにおける古代美術に目を向けます。 Movie1・・・ヘレニズム・バロック -ダイナミックな様式- Movie2・・・古典主義的伝統の復興 -折衷主義様式- Movie3・・・モザイク技法の革新 -古画の翻案- Movie4・・・エトルリアの絵画 -墓室壁画にみるエトルリアの死生観- Movie5・・・エトルリアの彫刻 -イオニア様式の影響-
ヘレニズム時代には、王侯貴族だけでなく富裕市民層にまで芸術趣味が拡大し、美術は大量生産により大衆化します。建築ではオーダーの規則を遵守せず、コリント式が好まれました。彫刻では、古典的規範を逸脱したダイナミックなヘレニズム・バロック様式と、古典主義復興という傾向がみられます。絵画では空気遠近法が究められ、ジャンルも大幅に多様化しました。古代イタリア文化は多民族性を特徴としますが、なかでもエトルリアでは、ギリシアや東方から影響を受けつつも、独自の文化を伝える葬祭美術を展開しました。