この章の要点
ペルシア戦争に勝利したギリシアは、政治家ペリクレスのもと、都市国家に基づく民主政治を確立し、海洋帝国アテネを中心に最盛期を迎え、クラシック美術を開花させます。本章では、初期の厳格様式から、フェイディアスやポリュクレイトスの普遍的な人間像や崇高なパルテノン神殿に極まる盛期クラシック、そしてペロポネソス戦争以後の社会的混乱のなかで生まれた豊麗様式を経て、後期クラシックへと至る美術の流れを見ていきます。
Movie1・・・古典様式の萌芽 -ポリュグノートスの大絵画と厳格様式の陶器画-
Movie2・・・盛期クラシックの均衡と調和 -理想的人体の探求-
Movie3・・・古典的規範の完成 -パルテノン神殿にみるポリスの理想-
Movie4・・・豊麗様式と個人主義 -ペロポネソス戦争以後の美術-
Movie5・・・後期クラシック美術 -個人主義とプラクシテレスの「優美様式」-
クラシック初期には厳格様式がみられましたが、盛期には、ポリスを中心とする民主政の象徴たるパルテノン神殿に精髄が結集します。その特徴は、洗練技法と二つのオーダーの混用にありました。神殿再建を総監督したフェイディアスと並ぶ彫刻家ポリュクレイトスは、男性像のカノンを完成させました。しかしペロポネソス戦争が勃発し、ポリス体制の矛盾が顕わになると、美術は豊麗様式へと向かい、後期には、優美様式のプラクシテレスや情念を表出したスコパスなど、多様な個性による展開がみられました。