Paul Chambers『1st Bassman』 | ハシケンブログ

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Paul Chambers『1st Bassman』

主役はチェンバース。
立役者はユセフ・ラティーフ。
名実共に"1st Bassman"なチェンバース、最後のリーダー作。

1950年代中盤~後半にかけてとんでもない量のライブとレコーディングをこなしていたチェンバースだったが、60年代前半頃には急速にペースが落ちてくる。
そもそも1969年に33歳の若さで亡くなったチェンバースなので、実際の活動期間は10年余りと非常に短いのだが。

60年代に差し掛かるとオーネット・コールマンやエリック・ドルフィー、新主流派と呼ばれるモードジャズの台頭によりビバップが過去のものになりつつあった。
時代の流れもあり、チェンバースのトレードマークであるムチムチとしたランニングベースがだんだんと不必要になってきたのだろう。
このアルバムはそんな60年代の新しい風を民族音楽に長けているマルチ奏者、ラティーフが演出している。

楽曲の大半はラティーフのペンによって書かれたもので、独特なホーンアンサンブルも彼の監督によるもの。
トランペット・テナーサックス・トロンボーンと、まさにハードバップな3管が揃っているのにそうなっていないのはラティーフの思惑。
ダイナミクスではなくハーモニーの為に揃えられた3管ということが分かる。
楽曲自体もマイナー調が多い中で、少しヒネたコード進行になっていて安直に聴かせないあたり、やや辛口。

全体の出来としては実にB級盤らしい出来で、釈然としないトミー・タレンタインの残念っぷり、マニアックなスケールで小技の効かせたラティーフに安定のフラー、といまひとつ地味。
ピアノもウィントン・ケリーなはずなのに精彩に欠ける。
とはいえ、主役であるチェンバースの出番はかなり多く、積極的にテーマを弾いてることもあってベーシストのお手本となることは間違いなし。

アルバムの最後に何故かキャノンボール・アダレイを擁したカルテット演奏が1曲だけ収録されている。
イキの良いアダレイは流石に聴き応えがあるものの、アルバムコンセプトとまるっきり関係なく、ちょっと蛇足。
そんなところがB級レーベル「Vee Jay」の親しみやすさでもあるけれど。


1960,5,12 (Vee Jay)

Paul Chambers (ba)
Tommy Turrentine (tp)
Curtis Fuller (tb) 
Cannonball Addaley (as) #6
Yusef Lateef (ts)
Wynton Kelly (pf)
Lex Humphries (ds)

1.Melody
2.Bass Region
3.Retrogress
4.Mopp Shoe Blues
5.Blessed
6.Who's Blues