メセニーの"メセニーらしさ"がちゃんと詰まっているアルバムってありそうでなかなかない。
デビュー作の『Bright Size Life』以降、すぐにPat Metheny Group(以下、PMG)での活動がスタートしたこともあり、ライル・メイズのフュージョン志向な音楽性が混在した作品が多かった。
PMGでの活動も安定して、メセニーが自身の音楽性を改めて顧みることになったアルバムが『80/81』だと思う。
メセニーが目指すジャズのエッセンスは、大きく捉えると「フォーク・カントリー音楽」と「オーネット・コールマン」の2つだということが非常に良く分かる作りになっている。
この路線はデビューから2017年現在に至るまで一貫している。
フォーク・カントリー部門における彼のキャリアの中で1つのピークが、このアルバムの一曲目を飾る「Two Folk Song」だろう。
歯切れの良いアコギのストロークが疾走感を生み出している前半部。
マイケル・ブレッカー渾身の咆哮(としか表現できない)によるソロは彼のこれまでのイメージを覆すほど衝撃的だっただろう。
好きかどうかは別として、だけどね。(ちなみに僕はどちらでもない)
そしてチャーリー・ヘイデン作曲によるフォーキーな後半部。
ヘイデンの深く沈みこむようなベース、メセニーの良く歌う素朴なギター。
どんな音楽にでも対応するヘイデンではあるが、ここまでハートフルなフォーク音楽を引き出したのはメセニーが初めてだろう。
ここでのレコーディングが後にHaden & Metheny『Beyond TheMissouri Sky』に続いていくのは想像に難くない。
そしてオーネット要素が色濃く出ている「80/81」や「Open」、そもそもオーネット作の「Turnaround」など風変わりなメロディー感覚とリズムのハメかた、フリージャズへの接近は意識せずとも体に染み込んでいるかのよう。
ひたひたと不気味なランニングベースにオーネット譲りの呑気さでブローするデューイ・レッドマンのフガフガとしたテナーが加われば、そこはもうオーネットの世界。
意外にもデューイに似たトーンのブレッカーがバリバリと超絶技巧でソロを吹き倒しても、ディジョネットがドタバタと喧嘩腰のドラミングを叩き続けても何故かオーネットの世界になってしまうのは不思議。
余談ですが、このレコーディングに際して、元々2テナーで呼びたかった第一候補がロリンズとボブ・バーグと言うのが面白い。
豪快親父のロリンズとフュージョニックなバーグが来れなかった代わりに、もっと凄い奴らが揃っちゃたみたいな(笑)
もう二度と実現しない重鎮達によって深堀りされたメセニー音楽はいかがでしょう。
1980,5,26-29 (ECM)
Pat Metheny (gt)
Michael Brecker (ts) #1,3,5,6,7
Dewey Redman (ts)2,3,5,6
Charlie Haden (ba)
Jack DeJohnette (ds)
Disc1
1.Two Folk Song
1st
2nd
2.80/81
3.The Bat
4.Turnaround
Disc2
5.Open
6.Pretty Scattered
7.Every Day (I Thank You)
8.Goin' Ahead
Michael Brecker (ts) #1,3,5,6,7
Dewey Redman (ts)2,3,5,6
Charlie Haden (ba)
Jack DeJohnette (ds)
1.Two Folk Song
1st
2nd
2.80/81
3.The Bat
4.Turnaround
5.Open
6.Pretty Scattered
7.Every Day (I Thank You)
8.Goin' Ahead