先だって、空間プロデューサーの松井雅美さんからお誘い
いただき「ゆたか 銀座」にご一緒しました。
京都・祇園に本店のあるステーキ店です。全国的にも
とても有名な店舗です。松井さんに経営が変わり東京店は
八重洲から銀座に移転したのです。
カウンター12席、個室6席のとても落ち着いた雰囲気の
同店は銀座バーニーズニューヨークの隣にあります。場所柄、
ディナー(特選ステーキコース)は25,000円と31,500円の2種類。
なかなかいいお値段です。昨今、フレンチでもここまでの値段の
コースはあまりお目にかかりません。ちょっと高いなぁ・・・と
いう気がしないでもない感じです。が、そんな思いも料理が出て
きたとたん、なくなりました。
前菜メニューはお肉にお造り、アワビ・魚介類などの盛り合わせ
です。キャビアも付いています。
“う~~ん美味!”
スープは冷製のとうもろこし・・・提供温度もちょうど良い冷え具合です。
ここまでで既に良い素材を使用しているのがよく解ります。
お肉は冷製スープの頂いている頃にカウンターで焼き始められる
のですがまずはこんな会話から。
シェフ「お肉のグラムはどうなさりますか?」
毛利「普通の大人の男性はどのくらい食べますか?」
シェフ「そうですねぇ、150グラムから200グラムくらい食べれ
ますね」
毛利「では、200グラムお願いします」
お肉のグラム数が決まった所で塊肉が出てきます。肉をトリミ
ングするのです。さすが、名店!肉の扱いは丁寧です。
分厚く肉がカットされていきます。
毛利「これはどこ産のお肉ですか?」
シェフ「本日は宮崎牛です」
毛利「毎日違うお肉を使うのですか?」
シェフ「はい、その日一番状態の良い肉を提供しております」
“ほ~~いいぞ”
その言葉を聞いて期待感が増していきます。
因みにお肉の焼き方はゆたかオリジナルです。他店のように
焼き加減などは聞かれません。鉄板に大量のにんにくを敷き、
その上にお肉を乗せます。そこにふたをして蒸し焼きにします。
約20分くらいかな?焼き上がりはジューシーで、分厚いお肉の
中はピンク色。そして口の中でとろけます。
はっきりいいましょう!幸せです!!!
お肉が終わると最後のデザートが供されます。ホールケーキの
ようなプリンです。これがまたまた本当に美味いのです。今まで
食べたプリンの中で一番美味しいといっても過言ではありません。
ここまでお読みいただいて毛利がどれだけこの日の食事を満喫したか、
お解かりいただけましたでしょうか?本当に至福のひと時を過ごさせて
いただいたのです。
が!
同店には何かひとつ、パンチが足りない感じがしてました。
決定的なことではなく、ちょっとずつ何かが足りないという感じなのです。
例えばカウンター内で働くスタッフの笑顔が足りない…なぁ~、もっと、
メニューの説明を笑顔でしてくれたら100倍は楽しいのになぁ~、せっかく
良い食材も良い料理の腕を持ってるのになぁ~。食べるものにはひとつも
文句がないのに、要所要所「なぁ~」とひとつすっきりしない物足りなさを
感じてしまうのです。
そこでプリンについて聞いてみました。
毛利「このプリン、メチャクチャ美味しいですけど、特別な卵を
使っているんですか?」
シェフ「いいえ、卵は普通なのですが、生クリームをちょっと。
実は祇園で提供しているプリンを同じ味を出したくて色々な生クリームを
試したのですが、なかなか良いものが無くて。東京中で探した結果、
やっと祇園と同じ味が出せる生クリームを探しだしまして。今その
生クリームを使ってます」
これだ・・・私はそのストーリーを聞きたかったのです。
このストーリーを聞いただけでただでさえ美味しいプリンを私は1000倍
美味しく感じることが出来ました。
今回、「ゆたか」さんが本当にいいお店だからこそ、敢えて
このことを云わせていただきます。
お肉にしてもそうです。日々一番よい肉を吟味した上で選んだものを提供
してくれているのであれば何を持ってその肉を選んだのか?とかどういった
飼育背景があってその肉が美味しいのか?とかお客がその肉を口にする
までの間にそれらの話をしてくれることで美味しさは2乗にも3乗にも膨らむ
はずです。期待感というものも外食においては味を決める大切な調味料だと
私は思うのです。
メニューにはすべてストーリーが有るはずです。特に「ゆたか」のように
よい食材を使っている店舗ほどそのストーリーはそのお店の魅力だけでなく
誠意を伝えるエッセンスになると思います。
そしてそのエッセンスを料理と共に味わえば、価格に対する印象にも
付加価値が更に生まれると。
そしてそれをさせる一つがストーリーではないかと思うのです。
「ゆたか」さん、ぜひ笑顔と愛を持ってお客さまにストーリーを伝えてください。
そして他のお店のみなさんもぜひそれぞれが持つ素敵なストーリーを語って
ください。それがあることによりあなたのお店はいまよりもっと素敵なお店に
なると毛利はここに断言します。
ゆたか 銀座 祇園