この物語はチャット仲間の須賀ハジメさんの投稿です。
「まだかなぁ・・・」
ボクは駅前の広場で幼馴染の「いずみ」と待ち合わせしていた。
夕方の時間帯という事もあり、広場には人が溢れかえしている。
「スーパーウーマンでも時間に遅れることあるんだなぁ」
いずみは仕事をしながら、スーパーウーマンとして全世界、いや全宇宙の平和を守っているのだ。
「まあ、最近忙しそうだし・・・」
そう思い、ボクが時計を確認したその時だった。
パン!パン!
夕暮れ時の平和な広場に、銃声が鳴り響いた。
突然、銃を持った男が広場に現れる。
「オラオラ!ぶっ殺すぞー!!」
男の目は血走り、どうやら正気ではないようだ。
そこら中で悲鳴が上がり、広場が大混乱に陥った。
「きゃっ!」
逃げ惑う人々に弾かれ、OLらしきスーツ姿の女性が地面に倒れこんだ。
「へへへ、お前から殺してやる!」
男が女性の頭に銃口を向ける。
「ひっ、た、助けてー!」
その時だった。
「止めなさい!!」
凛とした女性の声が響き渡った。
声のほうに周囲の視線が集まる。そこにいたのは・・・
(い、いずみ!?)
声の主はスーパーウーマン・・・ではなく私服姿のいずみだった。
「銃を降ろして、彼女を放しなさい」
いずみは力強くそう言い放つと、銃を持った犯人と対面する。
「うるさい!お前からぶっ殺すぞ!」
「もう一度言うわ、銃を降ろして、彼女を放しなさい」
いずみは臆する事無く、一歩前に踏み出した。
男は慌てて銃口をいずみへ向ける。
「そ、それ以上近付くんじゃねぇ!」
パン!と乾いた音がして、銃弾がいずみの足元のアスファルトをえぐる。
「脅しじゃないぞ!それ以上近づいたら撃つぞ!」
「あら、今のはわざと外してくれたんでしょ?」
全く怯える様子のない、いずみに男が再度銃を構える。
「つ、次は本当に当てるぞ!!」
「ふふ、手が震えてるわよ」
いずみは男に微笑みかけると、ゆっくりと足を進める。
「くるな!くるなぁ!!」
男がいずみに向かって引き金を引く。だが、彼女の身体に狙いを付けて放ったはずの銃弾は、またしても外れてしまう。
「ななな!なんで当たらないんだ!?」
「さあ?銃を撃つのが下手なんじゃない?」
混乱した男が何度も引き金を引く。辺りに乾いた音が何度も響くが、目の前の女にはなぜか当たらない。
「あなた、犯罪は向いてないわね」
悠々と進んだいずみが男の目の前に立つ。
いずみは優しく微笑むと銃弾の尽きた銃をソッと手から抜き取った。
「大人しく自首しなさい・・・ね?」
銃を奪われた男は力なく地面に崩れ落ちた。
周囲から大きな拍手と歓声が沸き起こる。
程なくして、駆けつけた警察官に男は取り押さえられた。
事件から十分後。
騒ぎが収まった広場は、いつもの日常を取り戻していた。
「いずみはどこにいるんだ・・・お、いたいた」
広場の片隅で警察官に事情を説明しているいずみを見つけた。
「おーい!いずみ!」
「あ、おにぃ!」
ボクが声をかけると、いずみはこちらに駆け寄った。
「おにぃ、怖かった~!」
「も、もしかして、怪我でもしたのか!?」
「怪我はしてないけど・・・」
そう言ってボクの手を握るいずみ。その時に何かを握らせてきた。
ボクが手を開くとポロポロと何かが落ちた。
「わぁ!?」
そこには先程撃たれた銃弾が握らされていた。
いずみは超人的な動体視力と運動神経で、飛んでくる銃弾を全てキャッチしていたのだ。
「何だ・・・心配して損したよ・・・」
「何よ~、私だって普通の『女』なんだからね~」
ホッと胸をなでおろすボクに対して、いずみは頬を膨らませた。
「何言ってんだ、普通の『スーパーウーマン』だろ? あ、最強のスーパーウーマンに対して『普通』は無いか^^」
「テヘ、そうだったかな~^^」
そう言って悪戯っぽく舌を出すスーパーウーマンいずみだった。