僕には、憧れの女の子がいる。同級生の美穂さん。彼女はクラスで一番のいや、学校で一番の美少女である。それだけではない。成績も学年でいつもトップ。スポーツも万能で、足も学年で一番である。どの男でも彼女の足の速さにはかなわないのである。それにひきかえ、自分はクラスで後ろから数えた方が早いぐらいの成績。彼女にはなにをもってしても歯が立たないのだ。そんな彼女に憧れを抱いている。きっと彼女はどこかの星からやってきたスーパーガールなのであると、信じている。
僕の悪友にミツヨシがいる。ヤツは美穂さんと同じ中学から進学してきた。彼女の中学時代のエピソードもずいぶん聞かされた。
ミツヨシは中学からサッカーをやっていた。部活のとき、彼女の方にボールが飛んで行った。彼女がボールを蹴って返したとき、ボールは目に見えなくなるほどの速さで帰ってきた。サッカー部の連中は恐ろしくなりボールをよけると、彼女が蹴ったボールは校舎の壁にノメリ込んでしまった。そのボールを壁から取り出すと、真っ黒に焦げ、パンクしていたそうである。恐るべき脚力である。
そんな彼女だから走るのもメッチャ速かった。陸上部の最速のやつがタイムトライアルをしているとき、彼女はその横をすり抜けて行った。陸上部の彼のそのときのタイムは10秒6だったらしい。その彼をゴールで出迎え息一つ切らせず、美穂は「その調子なら、だいじょうぶよ。がんばってね。」と激励したが、素人のしかも普通の女の子にアッという間に抜き去られた彼は戦意を喪失したそうだ。
クラスの誰かが彼女がジムでアルバイトをしているのを見たらしい。そのときの彼女は、マシーンを使ったトレーニングのアシスタントをしていた。100kgぐらいのバーベルを持ち上げているオッサンが急に咳き込み、バーベルを落としてしまった。それを見ていた彼女は、オッサンに「きょうは、ここまでにしましょう」といい、片手で軽々と、まるで鞄を持つようにしてサッサと片付けてしまったそうである。
そんな彼女がいつも頭から離れなくなってしまい、受験を控えたある秋の日の夕方、僕は、思いきって彼女に思いを伝えた。
「美穂さん、僕はあなたと違って、なにをやってもダメだけど、美穂さんへの思いは誰にも負けないつもりです。全知全能の女神さまのような、美穂さんが好きです。僕とお付き合いしてください」
すると、彼女は「ナベちゃん、ありがとう。あなたの気持はよくわかったわ。だけど、あなたとはどうしても付き合うことはできないの…いままで、誰にも言わなかったけど、私、この地球を守るために銀河中央警備隊から派遣されたスーパーガールなの」
美穂はそう言うと制服とブラウスのボタンをはずした。
「どう、これで、わかったでしょ
」胸をはだけると、そこには「S」のマークが…
「やっぱり、そうだったんだね。どおりでどんな男よりも速く走るし、見た目からは想像もつかない怪力少女だと思ったよ。これじゃあ、なにをやっても美穂には、かないっこないわけだよなあ。じゃあ、いままでどおりのクラスメイトでいてくれるの?」
「それが、もうすぐ地球を去らなければいけないの。もう、あなたに私の秘密を教えてしまった以上、この星にはいることができないの。でも、一つだけこの地球にいられる方法があるわ」
「それって、おれが他の人に絶対しゃべらなければいいんだろ?」
「いいえ、そんなものアテにならないわ。私が地球に残れる方法。それはね、あなたの子供を産み育てることよ。」
「それって、結婚しろってこと?」
「そうね。この星ではそう言っているわ。でも、もし生まれた子が女の子だったら、私のこの能力をそっくり受け継ぐのよ。それが私達の星の特徴よ。」
「でも、おれ、まだ高校生だし、いますぐ結婚しろ。と言われても、できないよ。」
「そうね。そうしたら、私がこの地球から出て行くか、あなたから私の記憶の全てを消すしかないわね。それでも、いいの?」
「え?そんなのいやだよ。」
「じゃあ、しょうがないわね。でも、だいじょうぶよ。ナベちゃんは学校に行って。もう、学校では私の正体がバレそうになってるし、いずれ、こんなことが起きるとは思っていたの。私が学校をやめて働くわ。こう見えても、力は人間の100万倍はあるし、新幹線や飛行機よりも速く走ったり飛んだりできるわ。それに、頭脳だって地球人の数万倍の知能を持っているわ。家庭教師だってできるわ」
「そうだね。おれは、大学に進学するよ。そうだ、オヤジの会社で働かないか?うちのオヤジ、解体屋をやってるから、美穂みたいな怪力は歓迎されると思うよ」
「でも、私みたいな怪力女だと、怪しまれない?」
「だいじょうぶだよ。じつはね、美穂ちゃんの他にもスーパーウーマンがいるんだ。いま、事務をやっている、あそこの女性、リンさんていう中国の人なんだけど、彼女ものすごい頭がいいんだ。それに彼女も怪力の持ち主で、このまえオヤジと現場にいったとき、車が4tトラックが踏切で脱輪しちゃって、それを彼女が持ちあげて脱出したんだ。そんな力があるなんて思えないだろ。あんな細い身体で…」
ひろしが話している横で美穂はもの思いにふけっているようなそぶりだった。
「美穂ちゃん、おれの話聞いてる?」
「あ、ごめんね。いまリンさんとテレパシーで交信してたの。彼女も私と同じ惑星から来たんだって。」
「へ~、美穂ちゃんって、テレパシーも使えるんだ。すごいなあ。」
「でも、私なんかより、リンさんのほうがパワーが強いかも。」
「えっ、そうなの?スーパーガールの美穂ちゃんを超えたスーパースーパーレディーなんだ。リンさんって。あ、そうだ。あと、きょうは現場に出てるけど、フィリピンから来ている、マルシアっていう女の人がいて、彼女も怪力レディーなんだ。彼女は現場に行くと、職人さん5人分の材料をいっぺんに運ぶんだ。電柱なんか一人でかついだりするし、僕も彼女の怪力を初めて見たときはビックリしたんだ。でも、彼女は普段はカワイイ女性だよ。小さい頃から日本にいたから、日本語も上手だし、僕が言ってる冗談もつうじるしね。」
「ねえ、マルシアにどんな冗談を言ったの?」
「たとえば、この空き缶を渡して、マルシアに、この空き缶、ペチャンコに潰してよ、あとで捨てるの楽だしね。って言ったら、マルシアが、なんで私の秘密知っているんですか?って。それで、彼女にマルシアの秘密ってなんなの?って聞いたら、私、この空き缶ぐらいアッと言う間に潰せますって。そういいながら彼女は簡単に空き缶をペチャンコにしちゃったんだ。そういえば、社員旅行で熱海の温泉に行ったとき、マイクロバスが故障したんだ。そのときは、リンさんと、マルシアが故障したバスを山の中腹にあるスタンドまで押したんだ。最初は男が10人がかりで押してもビクともしなかったんだけどね。」
「ねえ、この会社の女性ってもしかして全員がスーパーウーマンなの?」
「じつは、そうなんだ。経理の金沢さんは、毎日車よりも速く走って通勤しているし。このまえ、うちの会社に強盗が入ったときは、経理の畑さんが犯人のライフル銃をグニャグニャにして最後にはそのライフルを犯人に巻き付けて警察に引き渡したんだ。」
「ここの女性の人ってすごいのね。ところで、金沢さんって、どこから通っているの?」
「彼女は、福島の須賀川だったかな?新幹線で行っても1時間半はかかるって言っていたよ。彼女は国道を走って30分もあれば行くって言っていた。」
「ふ~ん、私だったら空を飛んで10分かも…でも、ほんとにこの会社の女性ってスゴイ人ばかりね。」
「でも、美穂ちゃんだって、彼女達に負けないぐらいの能力持っているし、それにイチバンかわいいよ。」
「もう、ひろしくんったら。ありがとう」
「そうだ、オヤジが帰ってきたら、ジムに行って美穂ちゃんのパワーを測定したいんだ。」
「いいわよ。でも、普通のマシンだったら、私のパワーは計れないわ。」
「だいじょうぶ。うちには、リンさんや金沢さんみたいなスーパーウーマンがいるから、普通のマシンよりも1000倍のパワーにも耐えられるように強化してあるんだ。」
「1000倍ねえ。だいじょうぶかしら、本気だして。マシンが壊れても知らないわよ。」
「だいじょうぶさ。さすがにいままでジムのマシンを壊した人は、いないよ。でも、美穂ちゃんだったら、マシンを破壊するスーパーガールぶりを見てみたい気もするけどね。」
ひろしは、オヤジさんが帰ってくると、美穂の秘密を話した。この会社にはリンさんを始め何人ものスーパーウーマンに出会っているオヤジさんは、あわてることもなく、快く承諾をしてくれた。いつもだったら、オヤジさんが着いてくるのだが、わけを知っているオヤジさんは、ひろしが付き合えばいいと言ってくれた。ふたりはジムに着いた。
「あ、いけね。鍵忘れてきちゃった。ちょっと待ってね。オヤジに聞いてみる。… あ、おれ。ジムの鍵、忘れちゃったんだけど…」
「ねえ、お父さん、なんて言ってた?」
「美穂ちゃん、オヤジから許可が出たよ。美穂チャンの怪力でドアを開けていいって。そのかわり、ドアノブを壊すだけにしてくれって言ってた」
美穂はその言葉を聞いてドアノブに手をかけた。グググッ!バキッ!美穂にとっては軽く握って引き抜いたつもりだったが、ドアノブが壊れただけでなく扉も外れてしまった。
「美穂ちゃん、力入れすぎじゃない?ドアごと外れちゃったよ」
ひろしは、そういうと美穂が握ったドアノブに目をやった。
「あ、ドアノブに握った跡がついてる~!なんて握力だ!!」
「あれ、そんなに力を入れたつもりは、ないんだけど…」
二人はジムの中に入る。
「美穂ちゃん、まずは握力から測ってみようか。ちなみにこのマシンの記録は、マルシアの982kgだよ」
美穂が握力計を握るとデジタルの表示がグングンあがっていく。75kg、150kg、390kg、ついに1000kgを超えた。まだまだ表示があがっていく。
「こんな、かんじかな?」
美穂がそういうと、デジタルは3290kgを表示していた。
「す、すごい!ここでの新記録だよ」
「これでも、随分手加減したのよ。全力の5分の1も出していないのに…。」
プルルルル…オレの携帯が鳴った。
「もしもし、あ、オヤジ?え、なんだって!わかった。じゃあ、美穂も一緒に連れて行くよ。大川鉱業の現場だね。わかった。じゃあ、またあとで。」
「どうしたの?」
「うん、大変な事になったんだ。大川鉱業の現場で落盤があって、みんなそっちに行ってるんだ。事務所のリンさんや、畑さんも手伝いに行っているんだ。美穂、わるいけど、そっちに行って彼女たちを手伝ってくれないか?消防は山の中だから、救出に来るのに1時間以上かかるみたいなんだ。一刻を争う事故だ。たのむ
」「わかったわ。私の出番がきたようね」
「よし、急ごう!早くおれの車に」
「まって、それだったら、自分で走った方が速いわ。ひろしくんは、後からついてきて
」そういうと美穂は着ていたジャージを脱ぎ捨てスーパーガールに変身した。
「ひろしくん、先に行っているわね
」そういうと美穂は空へ舞い上がって行った。航空自衛隊のスクランブルを見ているような迫力だった。
「美穂って、すごい着痩せしていたんだな。変身したら身体がふたまわりもデカクなったような気がする…」
美穂は大川鉱業の現場に着いた。えらいことになっている。美穂を見付けたリンさんは、テレパシーで交信をした。
…「美穂さん、着てくれたのね。落盤をした岩が入り口を塞いでいるの。マルシアや畑さんも手伝っているけど、全然、ビクともしないわ。あなたの力があれば、この岩を砕くことができるわ」…
リンのテレパシーを受けた美穂は右腕に全神経を集中させた。
「みんな、危ないから、ここから離れて。さあ、行くわよ!」
すると、美穂の右の拳が赤く発熱しているようになっていた。そして、腕は電柱のように太くなっていった。
「やあーーー!」
美穂は懇親の力を込めて岩にパンチを入れた。
バーーーン!
岩が見事に砕け散った。
「美穂さん、すっごーい!」
「な、な、なんてパワーだ!」
この光景を見ていた人々は口々に驚きと驚嘆の言葉をいった。しかし、こんな言葉では言い現せないほど、ものすごい光景だったのだ。
「さあ、だいじょうぶよ。中に人はいるの?早く助けてあげて!」
美穂にせかされると、リンやマルシアが中に入っていった。ひろしは、渋滞に巻き込まれいまごろ到着した。
「美穂、遅くなってごめん!」
「もう、遅いわよ。一仕事、終わったんだからね」
すると、ひろしのオヤジさんがかけよってきた。
「美穂さん、いやスーパーガール、ありがとう。これで、なんとかなりそうだ。ひろし、あそこの大きな岩を彼女が砕いてくれて、いま、リンとマルシアが救出にいっているところだ。それよりも、美穂ちゃんの力は本当にすごいなあ、うちの会社には何人ものスーパーウーマンがいるけど、美穂ちゃんのパワーにはみんな敵わないどろうね」
数日後、ヒロシの家で、オヤジさんとの会話。
「どうだい、オヤジ、おれの眼力は?」
「ああ、大したもんだよ。これで横田さんの跡継ぎができたよ」
「お父さん、それってどういう意味ですか?」
「あ、美穂さんには言っていなかったかな?うちの会社は表向きは解体屋だけど、そのウラでは、マルシアやリンのようなスーパーウーマンを派遣して事件を解決しているんだよ。きょうは、こういう事故だったけど、銀行強盗を退治したり、繁華街での酔っ払いの仲裁に入ったりすることもあるんだ。横田さんは今度結婚するから引退する予定なんだ。まあ、これだけのキレイな女性が巨大な岩を破壊したり、銀行強盗が持っているライフルをグニャグニャに曲げてしまうから、みんなビックリするよ。」
プルルルル…オヤジさんの携帯が鳴った。
「もしもし、おれだ。なに?わかった。美穂ちゃんを行かせるよ」
オヤジさんは携帯を切ると美穂に言った。
「美穂ちゃん、大川端の信用金庫で強盗だ。スグに行ってくれ。人質がいるんだ」
「わかりました。スーパー美穂。出動します
」「ひろし、いいのか?あんな強いカミさんもらって。頭が上がらなくなるぞ?」
「だいじょうぶさ。おやじだって、ジャンボジェットを片手で持ち上げる、あんなにすごいスーパーかあちゃんがいるじゃんか」
「それも、そうだな。ハハハ…」
おしまい…
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