あるカップルが伊豆海岸をドライブしていた。車はランドクルーザーである。
「のり。おまえずいぶん運転がうまいなぁ。とても免許取りたてとは思えないよ」
「私、これでも運動神経と反射神経は抜群だって言われてるんですからね。見損なわないでよ」
「そいうえば、そうだな。中学のころから、学年で一番足が速かったし、スポーツも万能。あ、そういえば、3年のときの体力測定で、器械を壊しまくっていたっけ。最後は握力は測定不能だったもんなぁ。勉強をやっても学年でトップクラスだったし。あのころの、のりはスーパーガールに見えたよ。」
「もう、また、その話?私はスーパーガールなんかじゃないからね。いつも最後はその話になるんだから」
ハンドルを握っているのは女の子の方であった。
狭い海岸沿いの道路を走っていると対向車線をはみ出し大型トラックが走ってきた。どうやらブレーキが故障し暴走をしていたようである。
「あっ!あぶない!」
女の子は急ハンドルを切りトラックをよけたが、横転、海岸に落ちてしまう。
助手席の彼氏は気を失っていたが、女の子は無事であった。
「どうやら、卓也は気を失っているだけみたいね。それより、さっきのトラックを止めないと…」
女の子は精神を集中させると、身体中が光に包まれた。彼女はスーパーウーマンに変身をしていた。スーパーウーマンに変身した、のりはドアを開け外へ出ようとしたが、ドアは歪んでしまい開けることができなかった。
「う~ん、どうやら、転落してドアが歪んだみたいね。卓也ごめんね」
ドン!
シートベルトを外し、歪んだドアを蹴破ると車の外へ飛び出した。
「トォォーッ!」
スーパーウーマンは崖の上の道路へジャンプし、暴走を続けているトラックを目指して飛んでいった。
「あ、あそこね。さっきのトラックは…。たいへん、反対から車が来るわ!急がなくっちゃ!」
空を飛んでいるのりはトラックの姿を見つけると、さらに加速をした。
トラックの運転手はなんとかハンドルだけで海岸沿いの道路を走っていた。対向車がこないのを確かめると崖に車体を擦りスピードを殺していた。急カーブをなんとか切り抜けたとき、対向から車が走ってきた。
「あかん!もうだめだ!」
バーン!
そう思った瞬間、目の前に人影が現れトラックに衝撃が走り止まった。
スーパーウーマンが現れ間一髪でトラックを止めたのだ。
「よかった。間にあったわ。もう、だいじょうぶですよ」
運転手が窓から顔を出すと、スーパーウーマンは間一髪でトラックと乗用車の間に入り、両方を止めていたのであった。
トラックの運転手が
「あ、さっき、ここへ来る途中でランドクルーザーとぶつかりそうになって、ランクルが崖下に落ちた!」
と言った。
「あ、大変!すぐ戻らないと…。エイッ!」
スーパーウーマンは事故現場の方へ飛んでいった。
ランクルが崖下に落ちた事故現場では、黒山の人ダカリができていた。
「おい、車の中に人がいるぞ!助手席だ!男ダゾ!」
「運転手はいないのか?」
崖の上では、野次馬で大騒ぎになっていた。
「おい、なにかがこっちへ飛んでくるゾ!」
「なんだ、あれは?スーパーマンか?」
「いや、女だぞ!スーパーウーマンだ!」
スーパーウーマンは、崖の上の人だかりを横目に崖下のランクルへ飛んでいった。
「おい、スーパーウーマンが、ランクルの方へ飛んでいったぞ!」
スーパーウーマンは、ランクルの横へ降りた。
ゴロン!
彼女は横転をしたランクルを元に戻した。
その衝撃でスーパーウーマンの彼氏、卓也が目を醒ました。
「ん?こ、ここは…。あ、そういえば、トラックと衝突しそうになって、崖下に落ちたんだ…。あ、のりがいない…」
そのときである。「スーパーウーマンのり」が車の中をのぞきこんだ。
「あ、のり!お、おまえ…。その服は…?」
「シイー!ごめん。もう少し、静かにしていて。」
彼女は卓也の腹にパンチを入れた。
ドン!
卓也は再び気を失ってしまった。
「ごめんなさい。いま、脱出するから我慢していてね。」
のりはそういうとランクルを持ち上げた。
「エイ!」
のりはランクルを持ち上げ、崖の上へ飛んで行った。
崖の上では、野次馬たちがその様子を一部始終を見ていた。
「おい、スーパーウーマンがランクルを持ち上げてこっちへ飛んでくるゾ!」
スーパーウーマンのりは野次馬の頭上を飛び越え、小高い山の公園に降りた。
ドッスン!
ランクルを地上におろした。
スーパーウーマンのりは、いつのまにか元の普通の女の子の姿に戻っていた。
卓也は、地上に降りた衝撃で目を醒ました。
「あ、の、のり!おまえ…」
「卓也、どうしたの?目をシロクロさせて?」
「おまえ、さっき…」
「もう、寝ぼけていないで、早く行こうよ」
のりが車に乗り込みハンドルを握ろうとしたとき、スーパーウーマンの姿を追い掛けてきた野次馬が卓也のランクルを見つけた。
「おい!あそこに止まっているぞ!」
「あれ?女の子が運転席にいるぞ?」
野次馬たちはランクルを囲んだ。
のりの顔を見た野次馬が
「あ、きみ、さっきのスーパーガール?」
と、叫んだ。
「ちょっと、おじさんたち。スーパーガールってなんですか?」
と、のりはとぼけた。
「のり、おまえ!やっぱり…」
卓也はのりの顔を見つめた。
「ちょっと、いいかげんに目をさましてよ!また、車、ぶつけちゃうよ!」
「あ、その車のキズ!さっき、この車海岸の崖下に落ちたでしょ?」
野次馬の言葉を聞いて卓也は叫んだ!
「あ、思い出した!そうだ、トラックとすれ違うとき、崖から落ちて気がついたら、のり!おまえ、スーパーガールになって、この車をここへ…?」
「もう、卓也いいかげんに目を覚ましてよ!この車のキズはあんたが、居眠りをしてガードレールにこすった跡なの!だから、私が運転を交代して、ここで休んでいたのよ!もう、また居眠りしちゃうといけないから、私が運転するわね!」
そういうと、のりはランクルを走らせた。
卓也は、のりの顔、腕、胸のふくらみを見つめていた。
卓也の元気のない顔を見て、のりがつぶやいた。
「卓也、元気ないよ。どうしたの?しょうがないわね。ほんとうのこと教えてあげるね。さっき、崖の下で見た私の姿って、夢じゃないんだよ。でも、このことは絶対にナイショだよ。だって、私の正体がわかってしまったら、卓也とこうやって、デートできなくなっちゃうじゃん。あ~あ、渋滞しちゃってる…」
のりは、ハンドルを切り、わき道へ入った。
「卓也、遅くなっちゃうから、急いで帰ろう。」
そういうと、のりはランクルを空き地に停め、降りた。
のりが、フロントに回ったとき、いつのまにか彼女はスーパーウーマンに変身していた。
「さあ、帰ろうよ。ヨイショ!」
のりはランクルを持ち上げた。
卓也は、ビックリして窓から顔を出し、下を覗き込んでいた。
のりは、卓也の顔を見てウィンクをした。
「さあ、いくわよ!」
ビュン!
のりは卓也の乗ったランクルを持ち上げ、空高く舞い上がっていった。
-おしまい-
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