ニシノユキヒコの恋と冒険
久しぶりに小説を1冊読みきった。川上弘美著「ニシノユキヒコの恋と冒険」ニシノくん、幸彦、西野君、ユキヒコ……。姿よしセックスよし。女には一も二もなく優しく、懲りることを知らない。だけど最後には必ず去られてしまう。とめどないこの世に真実の愛を探してさまよった、男一匹ニシノユキヒコの恋とかなしみの道行きを、交情あった十人の女が思い語る。はてしなくしょうもないニシノの生きようが、切なく胸にせまる、傑作連作集。http://www.shinchosha.co.jp/book/129234/中学生から50代で死去する「ニシノユキヒコ」と関わった女性がそれぞれに彼について語るという構成。冒頭の「パフェー」は、この物語の一番重要な伏線が張られている。夫と7歳の娘を持つ夏美がひとまわり年上のニシノさんに恋をする。彼は、夫がいると承知の上で家に電話をかけ、「きみをいますぐ抱きたい」などと言う男。7歳の娘のみなみを連れて来て欲しいと、ニシノさんは請う。みなみと会うときはいつも小さな贈り物を渡す。「女の子がいいな、子供は」などとよく言う。会うたびに決まって「みなみちゃんにはパフェーね」と頼む。実はみなみはパフェが好きではなかった。夏美がニシノさんと別れて15年。みなみが25歳になったとき、家の庭にニシノさんは突如現れる。みとられるために。ニシノさんはどこかで死んだのだ。「金魚の墓みたいのでいいから」と、庭に自分の墓を作ってと請う。なぜニシノさんは、みなみを愛でたのか。なぜ最後に夏美とみなみに会いにきたのか。残りの9編でそのわけが解る。「はてしなくしょうもない」ニシノユキヒコの生き様は、情けなく、哀れで、可笑しく、切ない。晩年のニシノさんに石田純一をイメージしました(笑)川上さんのさらりとした文章は読みやすく、退屈しません。疲れてるときでもスルスル読める小説です。お薦めですよ。