ウニオ・ミュスティカ 71

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<或る日の日記>

 

いつもここに書くことは同じようなことばかりのように感じるが、今回もそんな話だ。これまで幾度も「中抜き」の話をしてきたが、今回はその最新版になるのだろう。これまで何度も中抜きを実行してきた。つい先日も、とある古本屋を探索していると、何百冊もある本の中で、ひときわ題名が気になる本があった。特に意識していたわけではないが、なぜかその本だけが印象に残った。そんなことを思いながらも、中身をちょっと読んでみたが、どうやらサスペンスものの小説らしいということが分かった。値段は500円する。ちょっと高いし、別段前々から読みたかった本でもないので、一種の気の迷いだと思って本棚に戻した。そうこうしながら、別のコーナーに移ると、そこの特価コーナーでも、同じ現象に見舞われた。何百冊もある本の中で、ひときわ題名が気になる本があった。よくよく読んでみたら、既視感ともいうべきだろうか以前に読んだことがある本だった。値段は150円。もう一度読んでもいいかと思ったのだが、そこで例の声に耳を傾けてしまった。「この本とあの本の表紙を入れ替えて、買ってしまえ!」という囁きだった。値段張り替えをするのではなく、表紙と中身を入れ替える。これまでやってきた中抜きよりも高度な技術が要求される。これまでは何らかの方法で中身を抜き去ればそれでよかった。だが今回は抜き去った商品を別の商品に戻さなければならない。しかしもう頭の中ではシミュレーションができていた。ちょっと荒っぽい方法だが、やってみることにした。断っておくが、別に自己の技術向上に趣を置いているわけではない。ただ心の声?に従っているだけだ。まず150円の本を手に取り、さきほど気になった500円の本棚に戻る。二つの本を重ね、すばやく入れ替える。…成功した。正直そのときのドキドキ感で満足してしまった。別に欲しいという訳ではなく、ただスリルを求めていただけだ。その日は各々の本棚に商品を戻して、店を後にした。数日後、次の予定まで時間があったので、その後の経過がどうなっているのかが気になったので、古本屋に立ち寄ることにした。まず150円の棚に行くと、まだそのままの状態だった。だが、そこで致命的なミスに気付いた。表紙と中の本に若干のズレが生じていたのだ、たぶん2ミリくらい中の本が大きいので、背表紙からその分はみ出していた。他に並んでいる本と比べてみても一目瞭然だった。だが、誰に気づかれることなく数日間その状態を保ち続けていた。さらに本の配置が微妙に変わっていた。これは他の誰かに気づかれるのも時間の問題だと思い、証拠隠滅のためその本を素知らぬ顔でレジに持って行くことにした。若干のズレが生じていたので、店員に気づかれるのでないかとすごく緊張したが、何ごともなくいつも通り会計が済んだ。一安心だ。家に帰ってその本を流し読みしていると、おどろくべきことが分かった。本の内容は探偵と知能犯の心理戦が主なのだが、その本で知能犯が使ったトリックが本の中身と表紙を入れ替えるというものだったのだ。はて?つい最近どこかで体験したような気がする。そう、自分自身知らず知らずのうちにその知能犯と同じことをこの実世界で行っていたのだ、そのことに驚愕して、本の世界の物語のはずなのに、こちらも知能犯と同化してしまい敗北感を感じてしまった。正確にはうまく店員を騙すことができて、本を購入することができたのだが、偶然の一致に驚いてしまった。さらに別の日には、とあるおもちゃ屋での話になる。何とはなしにその店を訪れてみたのだが、そこで頭部、胴体、腰から足、左腕、マントとバラバラにされたフィギュアがあった。いたずらごころを出して、頭部を他の場所に隠してみた。それから数時間が経過して、店に戻ってみるとまだバラバラのままそこに残留されていた。それから数日後、店を訪れると、店員が組み立てたのか他の客が組み立てたのか定かではないがそのフィギュアのマントと頭部がない状態で組み立てられていた。マントはかろうじてすぐ横に置いてあったが、当然頭部はないままの状態だ。試しに頭部を隠したところにいってみると、そこにまだ頭部はあった。頭部のないフィギュアも一興だと思い、その頭部を回収して、店をでた。それから数日経過したが、その店ではまだ頭部がある状態のままの値段で販売されていた。店側はどこかに頭部があるという希望的観測を持って販売しているのだろうか。今後が少し楽しみである。

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