日本からはほぼ地球の裏側にあたる出張先のアパートの窓の外には遊歩道が続いており、毎朝、大型犬と散歩している方々を見かける。
なお、アパートという表現は日本人の私目線であって正確ではない。私が部屋のオーナーから定期契約で部屋を借り上げているだけで、一般的にはマンションのような集合住宅で、部屋によってはオーナーが自ら滞在しているケースもあり得る。建物の1階にはペットショップと動物病院がテナントとして入っており、付近にペットと暮らしている方が多いことも想像がつく。
因みに、私の部屋はオーナーとの契約にてペットと暮らすのは禁止されている。そもそも私は留守がちでなので犬猫を迎えられる訳もなく、自宅の愛猫たちの姿をペットカメラ越しや奥さんからのLine通話越しに見て癒されている次第。
きっと私と同じように猫好きだけど自室で一緒に暮らせない境遇の方がいるのだと思う。ある日、アパートの近くで地域猫たちにご飯を与えているご夫妻を見つけた。わざわざ車で近所まで来ている模様。アパートから少し離れた駐車場の奥に餌場があるみたい。ご夫妻がそちらに向かうと、成猫が3匹わらわらと集まっていく。
私はご夫妻と猫の姿を遠目に見るだけ。ご夫婦の愛情に応えて猫から湧き出る癒しオーラを横取りしてはいけないし、近くに猫嫌いの住民が居た場合にご夫婦に向けられているであろう怪訝な視線を私が浴びるのはご近所トラブルの面から得策ではない。もちろん、猫さんからスリスリと近づいてくるようであれば拒む理由はないけど、私から積極的に手をだして撫でることはしない。出張先で猫に噛まれて狂犬病に掛かりましたというのは会社に報告し難い。
猫も人間も平和であればそれでいい。
ある日、ちょっとした好奇心から餌場を覗いてみた。ごはん用のトレイが幾つか無造作に置かれていた。給餌しているのはあのご夫婦だけではないのかも知れない。周囲には独特の匂いが立ち込めていて、それは食べ残したご飯が発している匂いだけではなく、猫さんたちのおトイレの事情を伺わせた。駐車場利用者のうち猫に関心のない向きには迷惑なんだろうな。きっと。
時折、夕暮れに駐車場の車の下に寝そべって夕涼みを興じている猫さんたちを見かける。
元気そうでなにより。地域猫さんたちの暮らし、引き続きこっそり覗かせてもらいます。